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通訳を介した取調べで、供述のニュアンスが調書から消える

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通訳を介した取調べで、供述のニュアンスが調書から消える

通訳を介した取調べで、供述のニュアンスが調書から消える

2026/08/31

外国人の刑事事件で、後になって最も深刻な影響を及ぼすのが、取調べの調書です。中国語で話した内容が日本語に訳され、それを捜査官がまとめて文章にする。この二重の変換の過程で、本人が伝えたかった微妙な言い方、条件付きの説明、ためらいの表現が抜け落ちていきます。そして公判では、抜け落ちた後の日本語の文章が証拠になります。この記事では、なぜそれが起きるのか、どの段階で何を確認しておけば公判で争えるのかを、報道された事件を手がかりに整理します。

報道されている事件

山陽新聞の2022年2月22日報道によれば、中国籍の男性(38)が、銀行協会の職員を装ってキャッシュカード3枚をだまし取り、50万円を引き出したとして、詐欺と窃盗の疑いで逮捕されました。報道では、本人が「悪いことだとは思っていなかった」と供述したとされています。逮捕は岡山県、被害は高知県で発生したとされています。これは逮捕の疑いで報じられた段階のものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。

この短い供述は、後の裁判で決定的な意味を持ち得ます。それが故意を否定する趣旨なのか、それとも規範意識の欠如を示すものとして読まれるのか。それを決めるのは、本人が実際にどのような文脈で述べたかであり、その文脈こそが、調書から最も落ちやすい部分なのです。

なぜニュアンスが消えるのか

日本の取調べで作られる供述調書は、質問と答えをそのまま書き取ったものではありません。捜査官が聞き取った内容を、一人称の物語として整理し直した文章です。この段階で、話の順序は整理され、あいまいな部分は補われ、断定的でなかった表現は断定に近づきます。ここに通訳が入ると、変換はもう一段増えます。

中国語には、日本語に一対一で対応しない表現があります。断定を避ける言い方、責任の所在をぼかす言い方、条件を前提にした言い方。これらは、日本語に訳された時点で角が取れるか、逆に強い断定になることがあります。「たぶんそうだったと思う」が「そうでした」になり、「そう言われた気がする」が「そう言われました」になる。一文字の違いに見えて、故意の認定を左右します。

録音録画があるかどうかを、最初に確認する

取調べの録音録画は、すべての事件で法律上義務づけられているわけではありません。一部の重大な事件などに限られており、詐欺や窃盗の事件では、実施されるかどうかが運用に委ねられています。したがって、弁護人が最初にすることの一つは、本件で録音録画が行われているかを確認することです。記録が存在すれば、後に調書の内容と実際のやりとりを突き合わせることができます。存在しなければ、それに代わる記録を自分たちで作らなければなりません。

通訳人の適性をどう確認するか

刑事訴訟法175条は、国語に通じない者に陳述をさせる場合に通訳人に通訳をさせなければならないと定めています。憲法31条の適正手続の要請、そして国際人権規約B規約14条3項が定める、理解できる言語で告知を受ける権利と無料で通訳の援助を受ける権利も、その根拠です。もっとも、条文が保障するのは通訳が付くことであって、通訳の質そのものではありません。

確認すべきなのは、通訳人がどの言語を担当しているか、方言への対応が可能か、法律用語をどう訳しているかです。とくに、黙秘権、共謀、未必の故意といった概念は、日常の中国語に対応する語がなく、訳し方によって本人の理解がまったく変わります。弁護人としては、接見の際に、本人が取調べでどの言葉をどう理解したかを確認し、記録に残していきます。

調書に署名する前にできること

調書は、読み聞かせを受けたうえで署名押印して初めて完成します。本人は、内容に誤りがあると考えるときは増減変更を申し立てることができ、納得できなければ署名押印を拒否することもできます。これは対立的な行為ではなく、法律上認められた権利です。とくに、自分が話していない言い回しが入っている場合、「だいたい合っているから」と署名してしまうと、後から争うことが著しく困難になります。取調べを受ける前に、この点を中国語で正確に理解しておくことが必要です。

公判で争うための、初動の記録化

任意性や特信性を公判で争うためには、調書が作られた当時の状況を再現できる材料が要ります。接見のたびに、その日に何を聞かれ、どう答え、通訳がどう訳したと感じたか、調書の読み聞かせがどのように行われたかを、日付とともに記録していく。この地味な作業の積み重ねが、公判で調書の信用性を争う際の土台になります。逮捕から起訴までの限られた期間に、これを行えるかどうかが結果を分けます。

在留資格への影響

調書の内容は、量刑を通じて在留に跳ね返ります。入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としており、全部執行猶予がついた場合は但書により除かれます。調書に組織への深い関与を認める記載が残れば、量刑はその方向に引かれます。取調べ段階の一言が、数年後の在留の可否につながるということです。

中文版:经翻译进行的讯问中,供述的细微语气会从笔录里消失

中国語対応の刑事弁護のご相談

舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。

お問い合わせ:舟渡国際法律事務所(東京)/微信ID matsumura1119

この記事を書いた弁護士

松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。

本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。

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