接見禁止が付いた事件で、中国語の通訳をどう確保するか
2026/08/31
「面会に行ったのに、会わせてもらえませんでした」。特殊詐欺のように複数人が関与する事件では、逮捕された直後から接見等禁止の決定が付くことが少なくありません。ご家族は本人の顔を見ることも、手紙を渡すこともできなくなります。中国籍の方の事件では、ここに言葉の壁が重なります。この記事では、接見禁止で何が禁じられ、何が禁じられないのか、中国語の通訳をどう確保するのか、そしてご家族が本人に思いを届ける方法があるのかを整理します。
接見等禁止とは、何が禁じられるのか
刑事訴訟法81条は、逃亡または罪証の隠滅を疑うに足りる相当な理由があるときに、勾留されている被疑者と弁護人以外の者との接見を禁じ、書類その他の物の授受を禁ずることができると定めています。共犯者との口裏合わせや、外部を通じた証拠の隠滅を防ぐための制度です。実務上、複数人が関与する詐欺や資金洗浄の事件では、ほぼ標準的に付されます。禁止の対象からは、衣類や現金など一定の物を除外する運用が取られることがありますが、手紙のやりとりは禁止されるのが通常です。
弁護人との接見は制限されない
ここが最も重要な点です。刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被告人・被疑者が、弁護人と立会人なくして接見し、書類や物の授受をすることができると定めています。接見等禁止が付いても、この権利は制限されません。つまり、接見禁止の事件でも、弁護人は本人に会えます。ご家族が会えない期間、本人と外部をつなぐ唯一の経路が弁護人だということです。
報道されている事件
京都新聞の2023年10月18日報道によれば、中国籍の男性(26)ら計2人が、百貨店の店員を装ってキャッシュカード2枚を盗み取り、ATMで100万円を引き出したとして、窃盗の疑いで逮捕されました。これは逮捕の疑いで報じられた段階のものであり、起訴・有罪が確定したものではなく、被疑者には無罪推定が及びます。このように複数人が関与し、共犯者が別に存在する構造の事件は、接見等禁止が付く典型です。
中国語の通訳をどう確保するか
弁護人が日本語しか話せない場合、接見のたびに通訳人を同行する必要があります。ここで実務上の問題がいくつも生じます。第一に、通訳人の日程です。勾留期間は原則10日、延長でさらに10日と短く、通訳人の都合がつかなければ、接見の機会そのものを失います。第二に、通訳人の適性です。日常会話ができることと、黙秘権、共謀、未必の故意といった法律用語を正確に伝えられることは別の能力です。第三に、守秘です。弁護人の接見は立会人なしで行われますが、通訳人は接見の内容をすべて知る立場に立ちます。
したがって、逮捕の連絡を受けた段階で、中国語で直接、あるいは常駐の専属通訳とともに接見できる体制を確保できるかどうかが、初動の質を大きく左右します。方言の問題も無視できません。標準的な普通話のほかに、福建語や広東語を主として話される方の場合は、その旨を最初にお伝えください。
差し入れと、家族の思いを届ける方法
接見等禁止が付いていても、弁護人は本人と書類の授受ができます。ご家族から預かった内容を、弁護人が本人に口頭で伝えることは可能です。ただし、共犯者の名前を出したり、供述の内容に触れたりする伝言は、罪証隠滅とみなされるおそれがあり、弁護人としてお預かりできません。伝えられるのは、健康を気遣う言葉、生活面の連絡、子どもの様子といった内容です。それでも、外の世界とつながっているという感覚は、取調べに向き合う本人の支えになります。
接見禁止の一部解除を求めることができる
接見等禁止は、一度付いたら公判まで続くと決まっているわけではありません。弁護人は、裁判所に対し、家族に限って接見を認めるよう、一部解除を申し立てることができます。共犯者ではない配偶者や親、幼い子どもとの面会について解除が認められることがあります。起訴後は、罪証隠滅のおそれが減るとして解除が認められやすくなる傾向があります。あきらめずに申立てを重ねることが、実務上の意味を持ちます。
法廷通訳の統計から見えること
法務省の令和7年版犯罪白書によれば、令和6年に通訳を要した被告人の通常第一審の終局人員は4649人で、前年より20.7パーセント増えました。通訳言語は41言語に及び、最も多いのはベトナム語の1794人で全体の38.6パーセント、中国語は726人で15.6パーセントの第2位でした。中国語が最も多いという理解は誤りです。数字が示しているのは、通訳を要する裁判が年々増える一方で、対応できる人材が限られているという現実です。だからこそ、通訳の確保は運任せにせず、最初に体制として押さえておくべきものです。
中国語対応の刑事弁護のご相談
舟渡国際法律事務所では、中国語の専属通訳が常駐しており、逮捕直後からの接見、勾留に対する準抗告、被害弁償・示談交渉、不起訴を目指す弁護活動、そして刑事処分の後に続く在留資格の問題まで、一つの窓口で対応しています。刑事事件と入管手続は連続しており、刑事の段階でどのような処分を得るかが在留の帰趨を大きく左右します。初回のご相談は無料です。ご本人が身柄を拘束されている場合は、ご家族からのご連絡でも承ります。
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この記事を書いた弁護士
松村大介(まつむら・だいすけ)弁護士。第二東京弁護士会所属、登録番号59077。舟渡国際法律事務所。外国人の刑事弁護と入管事件(退去強制、在留特別許可、監理措置、在留資格の取消し)を主要な取扱分野とし、中国語圏のご依頼者からのご相談を数多く受けています。
本記事は一般的な法制度の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載は執筆時点の法令・統計に基づいています。
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