国籍法3条による日本国籍の取得|認知された子の届出の要件と手続を弁護士が解説
2026/08/31
日本人の父と中国籍の母との間に生まれ、出生後に父から認知を受けた子について、日本国籍を取得できるのかというご相談を多くいただきます。父母が婚姻していない、既に別れてしまった、子は母と中国で暮らしているなど、事情はさまざまですが、検討の出発点はいずれも国籍法3条の届出です。
この記事では、国籍法3条による国籍取得の要件、かつて必要とされた準正(父母の婚姻)の要件が最高裁の違憲判断を経て削除された経緯、届出先と必要書類、年齢の制限を過ぎてしまった場合の考え方、そして中国国籍との関係までを順に整理します。
国籍法3条による国籍取得とはどのような制度ですか
日本人である父または母から認知された子が、法務大臣に届け出ることによって日本国籍を取得できる制度です。帰化のように法務大臣の許可を得る手続ではなく、法律の定める要件を満たしていることを示して届け出れば国籍を取得できる点に、大きな違いがあります。
帰化は、居住歴・生計・素行など多くの事情を総合して許否が判断されますが、国籍法3条の届出は、日本人の子であるという身分関係を根拠とするものです。したがって、要件を満たしているかどうかを丁寧に立証することが、手続の中心になります。
父母が結婚していないと日本国籍は取得できないのですか
現在は、父母が婚姻していなくても届出ができます。かつての国籍法3条は、認知に加えて父母の婚姻(準正)があることを要件としていましたが、最高裁判所大法廷は平成20年6月4日の判決で、この区別が憲法14条1項に違反すると判断しました。これを受けた同年の法改正により、婚姻の要件は削除されています。
そのため、父が母と結婚していない、父が別の家庭を持っている、認知の後に父母が別居しているといった事情があっても、それだけで届出が否定されることはありません。
国籍法3条で届出をするための要件は何ですか
主な要件は次のとおりです。
- 父または母から認知されていること
- 認知した父または母が、子の出生の時に日本国民であったこと
- その父または母が、届出の時に現に日本国民であること(既に亡くなっている場合は、死亡の時に日本国民であったこと)
- 子が18歳未満であること(かつては20歳未満でしたが、成年年齢の引下げに伴い改められました)
- 子が、かつて日本国民であった者でないこと
加えて、届出の前提となる認知が、血縁上の父子関係を伴う真実のものであることが求められます。実体を欠く認知に基づく届出は受理されず、事案によっては刑事責任が問題となることもあります。
出生前に認知された場合と出生後に認知された場合で何が違いますか
結論から申し上げると、出生前に認知(胎児認知)がされていれば、子は出生によって日本国籍を取得し、国籍法3条の届出は不要です。母の妊娠中に父が市区町村へ胎児認知の届出をしていれば、出生の時点で父が日本国民であることになるためです。
これに対し、出生後に認知がされた場合は、認知の効力が出生の時にさかのぼるとしても、それだけでは日本国籍を取得できないというのが確立した扱いです。だからこそ、国籍法3条という別の道が用意されています。母子の状況によっては、胎児認知を検討できる段階で相談されることが望ましいといえます。
届出はどこに、どのような書類を提出しますか
届出先は、住所地を管轄する法務局または地方法務局(日本国外に居住している場合は日本の大使館・領事館)です。届出は子本人が行いますが、子が15歳未満のときは親権者などの法定代理人が代わって行います。
一般に、次のような書類が必要になります。
- 国籍取得届
- 認知に関する届書の記載事項証明書
- 認知した父(母)の戸籍謄本
- 子の出生を証する書面とその日本語訳
- 母の身分関係を示す書面(婚姻歴を含む)とその日本語訳
- 子および父母の居住関係を示す資料
- 父子関係の実体を示す資料(同居や交流の記録、送金の記録、写真など)
事案によっては、面接や追加の説明を求められ、父子関係についてDNA鑑定の結果を提出するよう促されることもあります。受理されると戸籍が編製され、旅券の取得や住民票の手続へと進みます。
子が18歳になってしまった場合はもう国籍を取得できませんか
国籍法3条の届出はできなくなりますが、道が完全に閉ざされるわけではありません。日本国民の子については、居住要件などが緩和された簡易帰化の定めがあり、帰化の申請を検討することになります。日本人の父の実子であることや、日本で育ち日本語で生活してきたことは、帰化の審査で有利に働く事情です。
もっとも、帰化は許可の手続であり、届出よりも審査は広く深くなります。18歳の誕生日が近いお子さんについては、届出の要件を満たすうちに手続を進められないかを、早い段階で確認してください。
日本国籍を取得すると中国国籍はどうなりますか
中国は重国籍を認めない立場をとっていますので、日本国籍の取得によって中国側の国籍や戸籍(户口)の取扱いがどうなるかは、中国の在外公館や戸籍の所在地の担当機関に確認する必要があります。日本の手続だけで中国側の登録が自動的に整理されるわけではありません。
また、日本の法律上も、日本と外国の国籍を併せ持つ状態になった場合には、一定の期限までにいずれかを選ぶことが求められます。実際の取扱いは個別の事情によって異なりますので、届出の前に、両国の手続を並べて見通しを立てておくことをお勧めします。
届出が受理されるまでの間、子の在留資格はどうなりますか
国籍を取得するまでの子は外国人として扱われますので、日本に在留するには在留資格が必要です。日本で生まれた子については、出生の日から30日以内に在留資格取得の申請をしなければなりません。この期限を過ぎると在留資格のない状態となり、後の手続が一気に難しくなります。
日本人から認知された子については、日本人の配偶者等の在留資格が認められる場合があり、その子を養育する外国人の母について定住者の在留資格が検討されることもあります。国籍取得の届出と在留資格の手続は別の制度ですので、どちらの期限も落とさないよう、並行して準備を進めてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
国籍法3条の届出は、要件を満たしていれば認められる制度である一方、父子関係の立証、外国語の書類の収集と翻訳、18歳という年齢の制限、在留資格の手続との並行など、実務上つまずきやすい点が重なっています。父と連絡が取れない、認知をしてもらえていない、子が中国で暮らしているといった事情があると、準備にはさらに時間がかかります。お子さんの将来に直結する手続ですので、迷われている段階でご相談ください。当事務所では中国語での対応が可能で、認知の交渉から国籍取得の届出、並行する在留手続までを見通したうえで方針をご提案しています。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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