中国の律師と日本の弁護士|役割分担と連携の実際
2026/08/25
本記事の要点
- 日本の刑事手続で弁護人となれるのは、日本の弁護士資格を持つ者に限られます。中国の律師が日本の刑事事件で弁護人として接見や弁論を行うことはできません。
- 身柄が拘束されている方に確実に会えるのは弁護人です。接見禁止決定が付されると、ご家族であっても面会できない期間が生じます。
- 中国の律師が力を発揮するのは、本国での書類収集、公証などの手続、本国側の法的問題への対応、そしてご家族への説明です。
- 資格を持たない仲介者が法律事務を取り扱うことには制度上の問題があります。誰が何の資格でどの範囲を担当するのかを確認してください。
- 日本側で必要になる資料は、原本の確保、正確な翻訳、必要な認証という三段階を経てはじめて機能します。
日本にいるご家族が逮捕された、あるいは在留資格を失いそうだという連絡が中国本土に届いたとき、多くの方はまず身近な律師に相談されます。ただ、そこから先の進め方を誤ると、時間だけが過ぎてしまいます。
以下、日本側の弁護士の立場から、中国の律師とどう役割を分けて連携すれば限られた時間を最も有効に使えるのかを整理します。中国側の手続の細部については、確認すべき事項として位置づけて述べます。
日本の刑事手続で誰が何をできるのか
日本の刑事手続において弁護人となれるのは、日本の弁護士資格を持つ者です。中国の律師が、日本の警察署や拘置所で弁護人として接見し、取調べへの対応方針を協議し、検察官に意見を述べ、法廷で弁論を行うことはできません。外国法事務弁護士という制度もありますが、これは原資格国の法に関する助言等を行う仕組みであり、日本の刑事弁護を担うものではありません。
実務上決定的なのが接見の問題です。共犯者がいる事件などで接見禁止の決定が付されると、ご家族であっても面会や手紙のやり取りができない期間が生じます。日本の弁護人を早期に選任することが、ご家族にとっても情報を得る唯一の経路になります。
中国の律師に担っていただきたい領域
- 本国での書類収集です。身分関係の証明、婚姻に関する証明、出生に関する証明、在職や収入に関する証明、居住に関する資料など。
- 公証などの手続です。どの書類にどの認証が必要かは提出先や手続の種類によって異なります。
- 本国側で並行して生じる法的問題への対応です。本国での財産、事業、家族の身分関係に関する問題は中国の律師の領域です。
- ご家族への説明と、必要書面の作成支援です。内容の具体性が結果を左右します。
資格と範囲を確認することの重要性
日本で刑事事件や在留の問題に直面したご家族に対し、さまざまな立場の方が支援を申し出ることがあります。そのとき確認していただきたいのは、その方がどの資格に基づき、どの範囲の業務を行うのかという点です。誰が弁護人として選任されるのか、誰が入管への申請を取り次ぐのか、誰が翻訳を担うのか。契約の前に書面で確認してください。
日本の刑事手続の時間軸を共有する
逮捕されると、警察は48時間以内に検察官へ身柄を送致し、検察官は24時間以内に勾留請求の可否を決めます。この合計72時間で枠組みが決まります。勾留は原則10日、延長で最大20日で、その終わりに起訴か不起訴かが判断されます。
最初の接見の後、直ちに必要資料の一覧を確定し、中国の律師とご家族に共有することが実務上の第一歩になります。
外国人事件に特有の入管上のリスク
入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者ですが、但書により刑の全部の執行を猶予された方は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。24条4号チは薬物関係の有罪で、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、4号リとは別枠に置かれています。24条4号の2は危険運転致死傷などの列挙、24条3号の4の不法就労助長は行為のみで該当し刑事処罰を要しません。24条4号ロは不法残留、4号イは資格外活動の専従、4号ヘは資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合、4号ハは人身取引等です。
あわせて、入管法21条による在留期間更新の不許可、入管法22条の4による在留資格の取消しがあります。当事務所は、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を上訴審まで争ってきました。本国から取り寄せた資料は、こうした主張や在留特別許可の申請を支える土台になります。
不起訴処分の重要性
連携の目的は、突き詰めれば不起訴処分を得ることにあります。不起訴で終われば、有罪を要件とする退去強制事由の入口に立たず、その後の在留手続で説明すべき事柄も大きく減ります。執行猶予判決を得たとしても、薬物関係のように有罪であること自体で該当する類型では在留の救いになりません。
検察官面談で事案の見立てと有利な事情を伝えること、被害者のいる事件では早期に示談を成立させること、証拠構造の弱点を整理した意見書を提出すること、身元引受けと生活の受け皿を客観資料で示すことが柱です。
初動対応の3つのポイント
第一に黙秘権の行使です。ご家族や本国の関係者から届いた助言が、日本の制度を前提としていないことがあります。話す範囲は必ず日本の弁護人と決めてください。
第二に早期の弁護人選任です。勾留決定までの72時間で動けるかどうかが分岐点になります。ご家族が中国本土にいらっしゃる場合でも、遠隔で委任の手続を進めることは可能です。
第三に通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査の場のために訳しますが、依頼者本人のために動く通訳は、制度の違いを踏まえて必要な作業の内容まで正確に橋渡しします。
当事務所のご案内と解決事例
- 取り込み詐欺の被害に遭った卸業の依頼者について、刑事告訴を端緒に相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。
- 外資系企業の支配権をめぐる紛争において勝訴した実績があります。国境をまたぐ当事者が関わる紛争の実務経験を有しています。
- インターネット上の誹謗中傷の被害について、解決金5,000万円を獲得した事案があります。
松村大介弁護士が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、本国のご家族や関係者との連絡にも対応します。提携行政書士による在留資格サポートにより、刑事手続の後の在留手続までワンストップで対応します。
結語
連携がうまくいく事案には共通点があります。最初の段階で、誰が何を担うのかが明確になっていることです。日本の手続は日本の弁護人が担い、本国での作業は中国の律師とご家族が担う。まずは、いま日本側で何が起きているのかを正確に把握するところから始めてください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟です。最終更新:2026年8月。
舟渡国际法律事务所
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