中国の取保候審と日本の保釈はどう違うのか|起訴前に保釈がないという日本の構造
2026/08/25
本記事の要点
- 日本の保釈は、起訴された後にはじめて可能になります。起訴前の勾留の段階には保釈という制度がありません。この一点が、日中の実務感覚を大きく分けます。
- 起訴前に身柄を解く道は、勾留請求に対する意見、勾留質問での主張、勾留決定に対する準抗告、勾留の取消請求、そして処分保留や不起訴による釈放です。
- 中国の取保候審は、保証人または保証金により身柄拘束を解く仕組みで、捜査段階から用いられうるものと一般に理解されています。もっとも要件や運用は中国側の制度であり、日本側から断定できません。中国の律師にご確認ください。
- 外国籍の方は逃亡のおそれを重く見られやすく、旅券の扱い、身元引受人、制限住居の設定など具体的な条件整備が必要です。
本国で刑事事件を経験されたご家族から、保証金はいくら用意すればよいのかというご質問をいただくことがあります。日本の制度を前提にすると、この問いには、そもそも起訴前には保釈という手続がありません、とお答えすることになります。
制度の違いを知らないまま時間が過ぎると、本来なら不起訴を目指せた事案でその機会が失われます。中国側の制度については、日本側から確認できる範囲を超えて断定しません。
日本の身柄拘束の時間軸
逮捕されると、警察は48時間以内に検察官へ身柄を送致します。検察官は受け取ってから24時間以内に、裁判官に勾留を請求するかどうかを決めます。この合計72時間が最初の分岐点です。
勾留が決定されると原則10日間の身柄拘束となり、延長されれば、さらに最大10日間が加わります。合計で最大20日です。この20日余りの間、保釈という制度は使えません。
起訴前に身柄を解くための手段
- 勾留請求前の活動です。検察官に対し、勾留の必要がないことを意見として伝えます。
- 勾留質問における主張です。裁判官と直接向き合う数少ない機会であり、何をどう述べるか事前に決めておきます。
- 勾留決定に対する準抗告です。住居不定や逃亡のおそれという判断に対し、具体的な反証を積み上げます。
- そして最も本質的なのが、不起訴処分または処分保留による釈放です。
外国籍の方の場合、住居や就労の状況、家族の所在が逃亡のおそれの判断に影響します。
起訴後の保釈で問題になること
- 旅券の扱いです。弁護人が預かるなど、出国を事実上困難にする措置を具体的に示します。
- 身元引受人です。日本国内に居住し、日常的に監督できる立場の方が望ましく、その方の生活状況を示す資料も必要になります。
- 制限住居の設定です。実際に居住可能で、連絡が確実に取れる住居を確保します。
- 保証金の準備です。中国から送金する場合、手続に時間がかかることがあります。保釈の見込みが立つ前から準備を始めておくべき事項です。
中国の取保候審との対比をどう理解するか
中国の取保候審は、刑事訴訟における強制措置のひとつで、保証人を立てるか保証金を納めることにより身柄拘束を解く仕組みであり、捜査の段階から用いられうるものと一般に理解されています。この点で、起訴後にはじめて保釈が可能となる日本の制度とは枠組みが異なります。
ただし、その要件、判断の主体、実際の運用については中国側の制度に属する事柄であり、日本側から断定することはできません。事案により異なりますので、本国での手続については中国の律師にご確認ください。
外国人事件に特有の入管上のリスク
刑事手続で釈放されても、入管の手続は別に進みます。在留資格を失った状態であれば、刑事事件の終了後に入管に収容されることがあります。入管の手続には、収容令書による収容、仮放免の請求、監理措置といった枠組みがあり、刑事の保釈とは別系統です。
入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者ですが、但書により刑の全部の執行を猶予された方は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。24条4号チは薬物関係の有罪で、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、4号リとは別枠です。24条4号の2は危険運転致死傷などの列挙、24条3号の4の不法就労助長は行為のみで該当し刑事処罰を要しません。24条4号ロは不法残留、4号イは資格外活動の専従、4号ヘは資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合です。あわせて、入管法21条による在留期間更新の不許可、入管法22条の4による在留資格の取消しがあります。当事務所は、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
日本では、身柄の解放と事件の終結が不起訴処分という一点に集約されます。不起訴であれば、その時点で身柄は解かれ、有罪を要件とする退去強制事由の入口にも立ちません。執行猶予判決を得たとしても、薬物関係のように有罪であること自体で該当する類型では在留の救いになりません。
検察官面談で事案の見立てと有利な事情を伝えること、被害者のいる事件では早期に示談を成立させること、証拠構造の弱点を整理した意見書を提出すること、身元引受けと生活の受け皿を客観資料で示すことが柱になります。
初動対応の3つのポイント
第一に黙秘権の行使です。認めれば早く出られるという説明は、日本の制度上、必ずしも成り立ちません。
第二に早期の弁護人選任です。勾留決定までの72時間で動けるかどうかが身柄の行方を左右します。
第三に通訳の質です。依頼者本人のために動く通訳は、制度の違いまで踏まえて誤解のない形で伝えます。
当事務所のご案内と解決事例
- 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。
- 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べ対応と主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。
- 国際的な刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があります。中国籍の方が当事者となる重大事件も数多く取り扱ってきました。
松村大介弁護士が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、接見に同行します。提携行政書士による在留資格サポートにより、刑事手続の後の在留手続までワンストップで対応します。
結語
本国の制度を前提にした期待が、日本の手続では通用しないことがあります。日本では、逮捕から起訴までの3週間ほどが勝負です。保証金の話をする前に、まずこの時間軸をご理解ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟です。最終更新:2026年8月。
舟渡国际法律事务所
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