舟渡国際法律事務所

日本と中国の間に犯罪人引渡条約がないこと|帰国すれば終わるという理解の危うさ

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日本と中国の間に犯罪人引渡条約がないこと|帰国すれば終わるという理解の危うさ

日本と中国の間に犯罪人引渡条約がないこと|帰国すれば終わるという理解の危うさ

2026/08/25

本記事の要点

  • 日本が犯罪人引渡しに関する条約を締結している国はごく限られており、中国はそこに含まれていません。これは事実として確認できます。
  • 条約がない場合でも、日本国内には逃亡犯罪人の引渡しに関する法律があり、相互主義の保証を前提に引渡しを行う余地は制度上あります。もっとも条約がある場合と比べて見通しは立ちにくいのが一般論です。
  • この事実から、帰国すれば事件は終わるという理解を導くのは誤りです。日本の手続は本人が国外にいても終了しません。
  • 公訴時効は、犯人が国外にいる期間は進行を停止します(刑事訴訟法255条1項)。時間の経過で解決するという発想は成り立ちません。
  • 将来、日本に再び入ろうとした時点で、逮捕状の存在や上陸拒否事由が現実の問題として立ち現れます。

身柄が解かれた、あるいは在宅で捜査を受けている段階で、いっそ中国に帰ってしまえば追ってこないのではないか。そう考える方は少なくありません。

この問いには、条約の有無という制度的な事実と、その帰結として実務上どうなるかという一般論の二つで答える必要があります。

条約の有無という事実

犯罪人の引渡しについて、日本が二国間の条約を結んでいる相手国はごく限られており、中国はそこに含まれていません。

条約がない場合、日本国内には逃亡犯罪人の引渡しに関する法律があり、相互主義の保証を前提として引渡しを行う余地が制度上は残されています。ただし、条約に基づく手続と比べれば、要請がどう扱われるかの見通しは立ちにくく、中国側の判断や運用については、日本側から確認できる範囲に限りがあり、断定できません。

帰国は事件を終わらせない

本人が国外に出ても、日本の刑事手続は終了しません。実務上、次のことが起こります。

  • 捜査は継続します。共犯者の供述や押収された携帯電話の解析など、本人がいなくても進む証拠収集は多くあります。
  • 逮捕状が請求され、発付されることがあります。指名手配の対象となり、国際的な手配がなされる場合もあります。
  • 公訴時効は進行を停止します。刑事訴訟法255条1項により、犯人が国外にいる間、時効はその進行を停止します。何年経てば消えるという計算は成り立ちません。
  • 保釈中であった場合、保釈は取り消され、保証金は没取されうる立場になります。
  • 起訴後であれば、被告人が出頭しないまま公判が進まず、事件が宙に浮いた状態が続きます。

再入国しようとした瞬間に何が起きるか

もっとも重い帰結は、将来の再入国の場面に現れます。

まず、逮捕状が有効に存在する状態で入国しようとすれば、上陸の場面で身柄を拘束されることになります。

次に、入管法上の上陸拒否事由の問題があります。他方、薬物関係の上陸拒否事由(入管法5条1項5号)には期間の定めがなく、罰金であっても該当し、年数の経過では解消しません。この場合、正面から入る道は入管法12条1項の上陸特別許可に事実上限られます。帰国という選択は、問題を消すのではなく、将来の自分の選択肢を大きく削る行為です。

日本の刑事手続の流れと現実的な選択

逮捕されると、警察は48時間以内に検察官へ身柄を送致し、検察官は24時間以内に勾留請求の可否を決めます。この合計72時間で枠組みが決まり、勾留は原則10日、延長で最大20日です。この期間の終わりに、起訴か不起訴かが判断されます。

逃げるかどうかを悩む時間があるなら、その時間を不起訴を取るための活動に充てるべきです。

外国人事件に特有の入管上のリスク

入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者ですが、但書により刑の全部の執行を猶予された方は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。24条4号チは薬物関係の有罪で、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、4号リとは別枠に置かれています。24条4号の2は危険運転致死傷などの列挙、24条3号の4の不法就労助長は行為のみで該当し刑事処罰を要しません。24条4号ロは不法残留、4号イは資格外活動の専従、4号ヘは資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合です。

あわせて、入管法21条による在留期間更新の不許可、入管法22条の4による在留資格の取消しがあります。当事務所は、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を上訴審まで争ってきました。

不起訴処分の重要性

不起訴処分で終われば、有罪を要件とする退去強制事由や上陸拒否事由の入口には立ちません。逃亡という選択がもたらす不利益と比べれば、差は歴然としています。

検察官面談で事案の見立てと有利な事情を伝えること、被害者のいる事件では早期に示談を成立させること、証拠構造の弱点を整理した意見書を提出すること、身元引受人と生活の受け皿を客観資料で示すことが柱です。

初動対応の3つのポイント

第一に黙秘権の行使です。帰国を考えていることを取調べの場で述べれば、逃亡のおそれを基礎づける事情として記録されます。話す範囲は必ず弁護人と決めてください。

第二に早期の弁護人選任です。勾留決定までの72時間で動けるかどうかが、その後の選択肢の幅を決めます。

第三に通訳の質です。自分の置かれた状況を正確に理解できないまま、周囲の噂話をもとに帰国を決めてしまう方がいます。捜査機関が指定する通訳人は捜査の場のために訳しますが、依頼者本人のために動く通訳は、制度の内容と選択肢の意味を正確に伝えます。

当事務所のご案内と解決事例

  • 国際的な刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があります。中国籍の方が当事者となる重大事件も数多く取り扱ってきました。
  • 観光目的で来日した後に在留資格を失い、不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど得られない状況下で有利な証拠を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
  • 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。

松村大介弁護士が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。提携行政書士による在留資格サポートにより、刑事手続の後の在留手続までワンストップで対応します。

結語

条約がないという事実は、追及を受けないという意味ではありません。手続が止まらず、時効も進まず、日本との関係だけが失われていく状態が続きます。日本に大切なものを残している方であればなおさら、いま取り組むべきは、逃げる算段ではなく、不起訴と在留を正面から取りに行くことです。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟です。最終更新:2026年8月。

舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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