上陸特別許可(入管法12条1項)という最後の道|上陸拒否事由に該当してしまった方へ
2026/08/25
本記事の要点
- 上陸拒否事由に該当する方でも、法務大臣の上陸特別許可(入管法12条1項)により上陸が認められる余地は残されています。
- 薬物関係の上陸拒否事由(入管法5条1項5号)には期間の定めがなく、年数の経過では解消しません。この類型で正面から入る道は事実上これに限られます。
- 上陸特別許可は空港等での口頭審理を経た裁決の中で判断されます。到着してから説明を始めても、裏付け資料がなければ評価されようがありません。
- そもそも上陸拒否事由を生じさせないこと、すなわち刑事手続の段階で不起訴処分を得ることが、将来の再来日の可否まで左右します。
- 松村大介弁護士が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当します。
以前に日本で刑事事件に問われた、一度は退去強制となった、あるいは本国で薬物により処罰を受けたことがある。こうした事情を抱えた方から、もう二度と日本には入れないのでしょうかというご相談を数多くいただきます。日本で待つご家族や、日本で事業を続けるご親族からのお問い合わせも少なくありません。
上陸拒否事由に該当することと、上陸が永久に不可能であることは同じではありません。ただしそれは自動的に与えられるものではなく、準備の質で結果が変わる、きわめて裁量的な判断です。
上陸拒否事由には消えるものと消えないものがある
日本に上陸しようとする外国人は、入管法5条1項各号のいずれにも該当しないことが求められます。見落とされがちなのは、各号の構造が同じではない点です。
退去強制を受けたことを理由とする類型には、退去強制された日から起算する上陸拒否期間が定められ、期間が経過すればその事由は解消します。これに対し薬物関係の5条1項5号には期間の定めがありません。日本の法令違反か外国の法令違反かを問わず、刑が罰金であっても該当し、何年経っても消えません。もう何年も経ったから大丈夫だろうと航空券を取り、空港で足止めとなる方が後を絶ちません。
上陸特別許可はどの段階で判断されるのか
上陸の審査は入国審査官が行い、上陸拒否事由該当の疑いがあれば特別審理官の口頭審理に回されます。ここでも適合しないと認定されたときは法務大臣に異議を申し出ることができ、その裁決の中で特別に上陸を許可すべき事情があると認められれば上陸が許可されます。
実務上決定的なのは、この流れが原則として空港等の限られた時間で進む点です。その場で初めて口頭の説明をしても、裏付け資料がなければ判断材料になりません。日本側の受入れ体制、家族関係、渡航目的の具体性、処罰に至った経緯と現在までの生活状況を、あらかじめ書面と証拠に整えて携行する必要があります。なお在外公館の査証審査と上陸時の審査は別の手続です。どの段階のどの事由が障害なのかを切り分けることが最初の作業になります。
その前段階としての刑事手続の流れ
上陸拒否事由の多くは日本での刑事処分を出発点とします。逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ身柄を送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。この合計72時間で、その後の枠組みが決まります。勾留は原則10日、延長で最大20日です。
この72時間のうちに弁護人が接見し、事案の見立てと身元引受けの体制を裁判官に伝えられるかどうかで、勾留の可否そのものが変わることがあります。
外国人事件に特有の入管上のリスク
- 入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者です。但書により刑の全部の執行を猶予された方は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。
- 24条4号チは薬物関係の有罪です。罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、柱書により4号リとは別枠に置かれています。
- 24条4号の2は危険運転致死傷などの列挙です。24条3号の4の不法就労助長は行為のみで該当し、刑事処罰を要しません。
- 24条4号ロは不法残留、4号イは資格外活動の専従、4号ヘは資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合です。
退去強制に至らない場合も、入管法21条による在留期間更新の不許可、入管法22条の4による在留資格の取消しがあります。当事務所は、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を上訴審まで争ってきました。
不起訴処分を取ることの意味
上陸拒否事由も退去強制事由も、多くは刑に処せられたことを出発点とします。不起訴処分で終われば、その入口に立ちません。執行猶予判決を得ても、薬物関係のように有罪であること自体で該当する類型では救いになりません。
勝負は起訴前です。検察官面談で有利な事情を伝え、被害者のいる事件では早期に示談を進め、争点のある事案では証拠構造の弱点を整理した意見書を出し、身元引受けを客観資料で示す。これらを勾留期間の中で積み上げます。
初動対応の3つのポイント
第一に黙秘権の行使です。初期に述べた言葉は撤回しても調書に残ります。話す範囲を弁護人と決めてから臨んでください。
第二に早期の弁護人選任です。勾留決定までの72時間に動けるかどうかで選択肢の幅が変わります。ご家族が中国本土にいても、遠隔で委任を進めることは可能です。
第三に通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査の場のために訳し、依頼者の利益のために動く立場にはありません。弁護人が同行させる通訳は、微妙な言い回しや文化的背景まで含めて依頼者本人のために伝えます。
当事務所のご案内と解決事例
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。薬物事件は有罪であること自体が在留と再来日を長く縛ります。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、従来の実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
- 国際的な刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があります。中国籍の方が当事者となる重大事件も数多く取り扱ってきました。
松村大介弁護士が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、接見にも同行します。提携行政書士による在留資格サポートにより、刑事手続の後の在留の問題までワンストップで対応します。
結語
上陸特別許可は、扉が閉じた後に別の鍵を探す手続です。いま刑事手続の只中にいる方は、扉を閉じさせないための初動に力を注いでください。すでに閉じてしまった方も、どの事由が障害になっているのかを正確に特定するところから始めるべきです。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟です。最終更新:2026年8月。
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