入管法24条4号リの但書と全部執行猶予|「1年を超える拘禁刑」の読み方
2026/08/25
本記事の要点
- 入管法24条4号リは「ニからチまでに掲げる者のほか」無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とする規定です。
- 同号には但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。「執行猶予でも4号リに当たる」という説明は誤りです。
- 刑の一部の執行を猶予された場合も、実刑部分が1年以下であれば除外されます。
- 4号リに当たらないことは、他の号に当たらないことを意味しません。とくに薬物関係の4号チは別枠です。
- 入管法50条1項但書は、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者等について加重要件を定めています。
刑事事件の見通しを説明する際、「実刑か執行猶予か」という区別が語られます。在留資格を持つ方にとって、この区別は量刑の問題にとどまりません。入管法24条4号リの適用を左右するからです。
本記事では、4号リの条文構造を分解して読みます。柱書、本文、但書がそれぞれ何を定めているのかを押さえることで、量刑の見通しと在留の見通しがどう連動するのかが見えてきます。
4号リの構造を分解して読む
まず柱書です。4号リは「ニからチまでに掲げる者のほか」と始まります。4号ニから4号チまでに個別に定められた類型は、4号リの守備範囲から除かれています。薬物関係を定める4号チがここに含まれる点は決定的な意味を持ちます。4号リは、個別列挙から漏れた犯罪一般を刑の重さで捉える受け皿の規定です。
次に本文です。対象は「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」です。重要なのは「超える」という文言で、1年ちょうどの拘禁刑はこれに当たりません。量刑が1年に収まるかどうかが該当性の分岐になります。罰金は含まれません。
そして但書です。刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。たとえば1年6月の拘禁刑に処せられても、その全部の執行が猶予されていれば4号リには該当しません。刑期の長さだけを見て「1年を超えたから退去強制だ」と判断するのは誤りです。さらに、刑の一部の執行を猶予された場合についても、実刑部分が1年以下であれば除外されます。ここでも判断の基準になるのは、現実に服することとなる刑の長さです。
この構造からの帰結は明確です。4号リが問題となる事案では、第一に不起訴処分、第二に刑の全部の執行猶予、第三にそれが困難でも実刑部分を1年以下に収めること。この順序で弁護活動を組み立てます。
想定される刑事手続の流れ
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか判断します。この72時間が最初の分岐点で、この間に会えるのは弁護人だけです。勾留決定後は原則10日、延長でさらに10日の身柄拘束が続き、その終わりに起訴・不起訴が判断されます。
4号リが視野に入る事案では、起訴後の量刑立証が在留の帰趨に直結します。被害弁償、示談、再犯防止のための環境調整、家族による監督の体制。これらは執行猶予を得るための主張であると同時に、入管手続でそのまま使う資料になります。
外国人事件特有のリスク
4号リに当たらないことは、退去強制事由に当たらないことを意味しません。号ごとの区別を確認してください。
- 24条4号チ:薬物関係の有罪。有罪判決のみで足り、罰金でも、刑の全部の執行を猶予されても、刑を免除されても該当します。在留資格の別表を問わず、柱書で4号リから除かれた別枠です。
- 24条4号の2:一定の重大犯罪の列挙。危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)や盗難特定金属製物品処分防止法22条の罪も加えられています。
- 24条3号の4:不法就労助長。行為があれば該当し、刑事処罰を要しません。4号ロ:不法残留。4号イ:資格外活動の専従。4号ヘ:資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた者。4号ハ:人身取引等。
さらに、入管法50条1項但書は無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者等について加重要件を定めています。同条2項は収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者に申請権を認め、3項により退去強制令書の発付後は申請ができません。在留期間の更新(同21条)や在留資格の取消し(同22条の4)も並行します。加えて、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないという実務が長く維持されてきました。当事務所は、この実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
4号リは有罪判決の存在を前提とします。不起訴処分を得れば、量刑の議論に入ることなく該当性の問題が消えます。執行猶予を目指す弁護と不起訴を目指す弁護では、動く時期も方法も異なります。前者は起訴後の公判が舞台ですが、後者は起訴前の限られた期間が勝負です。
起訴前の具体的な活動は、検察官との面談による処分意見の提示、被害者がいる事件での速やかな示談交渉、生活状況や家族関係を裏づける資料を添えた意見書の提出です。中国本土から資料を取り寄せる場合、翻訳や公証の時間も見込んで動きます。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。黙秘を理由に不利益な取扱いを受けることはありません。事実関係の全体像を確認しないまま供述すると、量刑上不利な前提が固定されます。
第二に、早期の弁護人選任です。国選弁護人は勾留決定後に付き、72時間に動けるのは私選弁護人だけです。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査手続を進めるために呼ばれ、依頼者の利益のために補足したり誤解を指摘したりする立場にありません。依頼者本人のために動く通訳は、弁護人と一体となって本人の意図を伝えます。
当事務所のご案内と解決事例
- 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性の事案。指示役からの欺罔や脅迫的状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。起訴前に決着させたことで、量刑を前提とする議論を生じさせずに済んだ事案です。
- 国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があります。中国籍の方の重大事件も多数取り扱ってきました。量刑が在留に直結する事案では、公判での立証設計が結論を左右します。
当事務所では、松村大介弁護士が初動接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は提携行政書士のサポートによりワンストップで対応できます。
結語
4号リは、柱書と本文と但書を分けて読めば、何を目指すべきかが定まる規定です。量刑の見通しと在留の見通しは連動しています。刑事弁護の方針を決める段階で、入管法上の当てはめまで含めた設計をしてください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介/第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録/舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟です。最終更新:2026年8月。
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