入管法24条の構造を号ごとに読む|退去強制事由の全体像
2026/08/25
本記事の要点
- 入管法24条の退去強制事由は号ごとに要件が異なり、まとめて「有罪なら退去強制」と考えることはできません。
- 刑事処罰を前提とする号(4号リ、4号ヘなど)と、行為があれば足りる号(3号の4の不法就労助長)は性質が異なります。
- 24条4号リには但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。
- 24条4号チ(薬物関係)は有罪判決のみで足り、罰金でも刑の全部の執行を猶予された場合でも該当します。
- どの号に当たるかによって、出国命令の可否や在留特別許可の枠組みまで変わります。
退去強制について調べると、「有罪判決を受ければ日本にいられなくなる」という説明に行き当たります。しかし入管法24条は一本の規定ではありません。号ごとに要件が異なり、猶予の扱いも、その後の手続の選択肢も違います。
本記事では、入管法24条の構造を号ごとに読み解きます。自分の事案がどの号の問題なのかを見定めるための地図としてお使いください。
24条の構造を号ごとに読む
24条の各号は、大きく三つの性質に分けて理解すると見通しがよくなります。
第一に、在留の適法性そのものを欠く類型です。24条4号ロの不法残留がその中心で、在留期間を経過して残留している状態が事由になります。24条4号イの資格外活動の専従も、許可された活動を離れて別の活動に専ら従事している状態を捉えます。刑事処罰の有無は要件ではありません。
第二に、行為そのものが事由となる類型です。24条3号の4の不法就労助長がこれにあたり、行為があれば該当し、刑事処罰を受けたことを要しません。立件されず、あるいは不起訴となっても入管法上は別途評価される点で、実務上とくに注意を要します。なお24条4号ヌは売春関係の規定であり、不法就労助長ではありません。24条4号ハの人身取引等も、行為の性質に着目した規定です。
第三に、刑事処罰を前提とする類型です。24条4号リは「ニからチまでに掲げる者のほか」無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下であれば除外されます。24条4号ヘは資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた者を対象とします。これに対し24条4号チは薬物関係の有罪を対象とし、有罪判決のみで足ります。罰金でも、刑の全部の執行を猶予された場合でも、刑を免除された場合でも該当し、在留資格の別表を問いません。柱書で4号リから除かれた別枠の規定です。24条4号の2は一定の重大犯罪を列挙し、危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)や盗難特定金属製物品処分防止法22条の罪も加えられています。
想定される刑事手続の流れ
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか判断します。この72時間が最初の分岐点で、この間に会えるのは弁護人だけです。勾留決定後は原則10日、延長でさらに10日の身柄拘束が続き、その終わりに起訴・不起訴が判断されます。
この期間に何が記録されるかで、後の号の当てはめが変わります。就労の態様に関する供述は資格外活動の専従の判断に直結し、雇用に関与した経緯の供述は不法就労助長の評価に影響します。入管手続でどう読まれるかを意識した対応が必要です。
外国人事件特有のリスク
号の違いは、その後の手続の選択肢に直結します。入管法24条の3の出国命令は、要件のひとつとして「4号ハからヨまでのいずれにも該当しないこと」を求めます。したがって薬物関係で4号チに該当する方は出国命令を使えません。また入管法50条1項但書は、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者等について加重要件を定めますが、4号チはそこに列挙されていません。同条2項は収容令書により収容されている者と監理措置決定を受けた者に申請権を認め、3項により退去強制令書の発付後は申請ができません。5項で考慮要素が法定化され、10項により不許可には理由を付した書面が交付されます。
並行して、在留期間の更新(入管法21条)と在留資格の取消し(同22条の4)も問題になります。更新は権利ではなく、素行や在留状況が審査されます。さらに、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないという実務が長く維持されてきました。当事務所は、この実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。行為があれば足りる号が存在する以上、この論点は重い意味を持ちます。
不起訴処分の重要性
号の構造を踏まえると、不起訴処分の意味がはっきりします。4号リ、4号ヘ、4号チはいずれも有罪判決の存在を前提とします。不起訴処分を得れば、これらの号の当てはめ自体が生じません。他方、執行猶予判決を得ても薬物事犯であれば4号チに該当し、退去強制の対象となります。判決の形だけを見て安心することはできません。
起訴前の活動としては、検察官との面談による処分意見の提示、被害者がいる事件での示談交渉、生活状況や家族関係を裏づける資料を添えた意見書の提出が中心になります。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。黙秘を理由に不利益な取扱いを受けることはありません。号の当てはめを左右する事実ほど、初期の供述で固定されやすいという性質があります。
第二に、早期の弁護人選任です。国選弁護人は勾留決定後に付き、72時間に動けるのは私選弁護人だけです。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査手続を進めるために呼ばれ、依頼者の利益のために補足したり誤解を指摘したりする立場にありません。依頼者本人のために動く通訳は、弁護人と一体となって本人の意図を伝えます。
当事務所のご案内と解決事例
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。薬物関係は有罪判決のみで退去強制事由に該当するため、事実そのものを争う意味が大きい類型です。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案。取調べ対応と主張立証を重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。
当事務所では、松村大介弁護士が初動接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は提携行政書士のサポートによりワンストップで対応できます。
結語
入管法24条は、性質の異なる規定が並んだ条文です。どの号の問題かを特定できれば、次に何を争い、何を準備すべきかが見えてきます。早い段階で、条文の当てはめを含めた見通しを立ててください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介/第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録/舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟です。最終更新:2026年8月。
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