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「日本生まれの子がいれば退去強制されない」という誤解|国籍と在留の実際

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「日本生まれの子がいれば退去強制されない」という誤解|国籍と在留の実際

「日本生まれの子がいれば退去強制されない」という誤解|国籍と在留の実際

2026/08/25

本記事の要点

  • 日本は出生地によって国籍を与える制度を採っておらず、日本で生まれただけで子が日本国籍を得ることはありません。
  • 子が日本で生まれた事実は手続を止める事情ではなく、最終段階の裁量判断で評価される事情のひとつです。
  • 入管法50条5項は考慮要素を法定化しており、監護・養育や就学の状況は正面から主張できます。
  • 薬物関係は入管法24条4号チにより有罪判決のみで該当し、罰金でも執行猶予でも該当します。
  • 子の生活を守る最短の道は、起訴前に不起訴処分を得て、有罪判決という前提を作らないことです。

子が日本で生まれ、保育園や小学校に通い、日本語しか話せない。だから家族が日本を離れることはない。そう考えておられる方は少なくありません。この考えには正しい核があります。子の利益は在留の判断で軽く扱われないからです。しかし、それが手続の進行を止める力を持つかというと、答えは違います。

本記事は、日本で子を育てながら在留資格に不安を抱えている方に向けて書いています。

どこまでが正しく、どこから誤りか

まず前提です。日本の国籍法は、父または母が日本国民であることを基本とする血統主義を採っており、領域内で生まれた事実だけで国籍を与える制度ではありません。したがって中国籍の両親から日本で生まれた子は、原則として中国籍のままです。子自身も在留資格を必要とし、出生後の一定期間内に取得手続をとらなければ不法残留の状態に陥ります。これを知らないまま数年が経過し、親子ともに在留資格を失っている事案は珍しくありません。

正しいのは、子が日本で生まれ育ち、日本語で教育を受け、日本社会に根づいている事情が実質的に重視される点です。入管法50条5項が考慮要素を法定化し、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦における生活の状況が評価対象になります。就学状況、日本語能力、国籍国での生活経験の有無、医療上の必要性は、この枠組みで主張すべき事実です。

誤りは、これを自動的に働く保護と考える点です。子の存在は違反調査、違反審査、口頭審理という手続の進行を止めません。親に退去強制事由があれば、子に在留資格があっても親の手続は独立して進みます。どの段階で何を主張するかを、あらかじめ設計する必要があります。

想定される刑事手続の流れ

逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか判断します。この72時間が最初の分岐点で、この間に会えるのは弁護人だけです。勾留が決定されると原則10日、延長でさらに10日の身柄拘束が続き、その終わりに起訴・不起訴が判断されます。

監護すべき子がいるという事実は、勾留の必要性を争う場面でも、起訴猶予を求める場面でも、最終的な在留判断の場面でも繰り返し使います。だからこそ、最初の段階で客観的な資料の形にしておくことが重要です。

外国人事件特有のリスク

退去強制事由は入管法24条に号ごとに定められ、号の区別を曖昧にしたまま見通しは立てられません。

  • 24条4号リ:ニからチまでに掲げる者のほか、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者。但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外され、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除外されます。
  • 24条4号チ:薬物関係の有罪。有罪判決のみで足り、罰金でも、刑の全部の執行を猶予されても、刑を免除されても該当します。在留資格の別表を問わず、柱書で4号リから除かれた別枠です。
  • 24条4号の2:一定の重大犯罪の列挙。危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)や盗難特定金属製物品処分防止法22条の罪も加えられています。
  • 24条3号の4:不法就労助長。行為があれば該当し、刑事処罰を要しません。24条4号ロ:不法残留。子の在留資格取得手続を怠れば子自身がこの号に直面します。4号イ:資格外活動の専従。4号ヘ:資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた者。

在留期間の更新(入管法21条)は権利ではなく、素行や在留状況が審査されます。在留資格の取消し(同22条の4)も、活動の実体を欠く場合や虚偽の申告があれば問題となります。さらに、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないという実務が長く維持されてきました。当事務所は、この実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争っています。

不起訴処分の重要性

子の生活を守る目的から逆算すると、優先順位は明確です。24条4号リも4号チも有罪判決の存在を前提としますから、不起訴処分を得ればこれらの号の議論は生じません。他方、執行猶予判決を得ても薬物事犯であれば4号チに該当します。

起訴前の具体的活動は、検察官との面談による事案の説明、被害者がいる事件での示談交渉、子の監護状況や就学状況を裏づける資料を添えた意見書の提出です。在籍を示す資料、医療記録、家計の状況、親族の陳述書は、その後の在留手続でも中心的な証拠になります。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。黙秘を理由に不利益な取扱いを受けることはありません。家族構成や生活状況の話は一見有利に見えますが、断片的に記録されると就労や居住の実態について不正確な前提が固定されます。

第二に、早期の弁護人選任です。国選弁護人は勾留決定後に付き、72時間に接見して生活基盤の維持に手を打てるのは私選弁護人だけです。

第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査手続を進めるために呼ばれ、依頼者の利益のために補足したり誤解を指摘したりする立場にはありません。依頼者本人のために動く通訳は、弁護人と一体となって本人の意図を伝えます。

当事務所のご案内と解決事例

  • 観光目的で来日後に在留資格を失い不法滞在で起訴された事案。日本人女性との間の子について婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど無い状況下で有利な証拠を積み上げ、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
  • 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案。取調べ対応と主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。身柄拘束の長期化から家庭の生活基盤を守ることも同時に課題となった事案です。

当事務所では、松村大介弁護士が初動接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は提携行政書士のサポートによりワンストップで対応できます。

結語

日本で生まれ育った子の利益は、在留の判断で確かに重い意味を持ちます。しかしそれは放っておいても働く盾ではなく、資料と主張によって初めて形になる事実です。動ける時間は、思われているより短いのが実情です。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介/第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録/舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟です。最終更新:2026年8月。

舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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