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通訳は裁判所が用意するから心配ないという理解|捜査段階と弁護活動の通訳は別

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通訳は裁判所が用意するから心配ないという理解|捜査段階と弁護活動の通訳は別

通訳は裁判所が用意するから心配ないという理解|捜査段階と弁護活動の通訳は別

2026/08/25

本記事の要点

  • 公判の法廷通訳は裁判所が手配する。この点についての理解は正しい。
  • しかし捜査段階の通訳は捜査機関が手配するものであり、依頼者のために動く立場ではない。
  • 弁護人との接見・打合せ・示談交渉の通訳は、弁護人の側で確保しなければならない。
  • 誤訳が供述調書に定着すると、公判でその信用性を争うことは容易ではない。
  • 供述の訳し方は適用される罪名を左右し、罪名は入管法24条のどの号に当たるかを決める。

よくある理解と、その正確な射程

日本語での手続に不安を感じている方から、「裁判では通訳が付くと聞いたので大丈夫」というお話を伺うことがあります。実際、公判で被告人が理解できない言語で手続が進むことは想定されておらず、法廷通訳は裁判所が手配します。その限りで、この理解は正確です。

問題は、刑事手続で言語が問題になる場面が法廷だけではないことです。本記事では、通訳が置かれる場面ごとに、誰のために置かれた通訳なのかを整理します。

通訳が置かれる場面と、その立場の違い

第一の場面は、警察や検察の取調べです。ここで通訳するのは捜査機関が手配した通訳人です。中立に訳すことが期待されていても、その通訳人は捜査のために置かれています。取調べの流れを止めてまで、依頼者に概念の説明を尽くす立場ではありません。

第二の場面は、弁護人との接見や打合せです。ここには裁判所も捜査機関も関与しません。弁護人が自ら通訳を確保しなければ、依頼者は自分の弁護人と十分に話せないままになります。示談交渉や検察官面談の準備も同じです。

第三の場面が公判です。ここでは裁判所が通訳人を付けます。ただし法廷通訳は、証人尋問のやり取りを要約的に訳すこともあり、微妙な言い回しが落ちる場面があります。訳に疑問があれば、その場で指摘して記録に残すことが必要です。

加えて、日本語と中国語のあいだには一対一で対応しない法律概念が数多くあります。不起訴処分、起訴猶予、勾留、宥恕、略式手続などが典型です。訳語の選び方ひとつで、供述の意味も、手続の理解も変わります。

想定される刑事手続の流れと、最初の72時間

逮捕されると、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを決めます。この72時間に取調べが集中し、供述調書の骨格が作られます。会えるのは弁護人だけです。

この段階で誤訳が入り込むと、その内容は書面として残ります。読み聞かせの際に違和感があれば、署名押印を拒むことができます。しかし、違和感に気付くには、そもそも訳された内容を確認できる状態が必要です。

外国人事件に特有のリスク|訳語が在留を左右する

供述の訳し方は、適用される罪名を左右します。たとえば報酬の趣旨、指示者との関係、就労の内容といった点は、訳の精度によって意味が変わりやすい領域です。そして罪名が決まれば、入管法24条のどの号に当たるかも決まります。

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除かれます。薬物事犯を対象とする24条4号チは、罰金でも、執行猶予でも、刑が免除されても該当します。

24条3号の4の不法就労助長は、行為があれば足り刑事処罰を要しません。就労の実態をどう述べたかが、そのまま行政手続の判断材料になります。24条4号ロの不法残留、4号イの資格外活動への専従も、刑事手続とは別に進行します。

在留期間の更新(入管法21条)は相当の理由があるときに許可され、在留資格の取消し(入管法22条の4)も別の類型を定めています。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする運用に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。

不起訴処分の重要性

執行猶予付きの判決でも退去強制に至りうる類型がある以上、起訴前に不起訴を取ることが決定的です。そして起訴前の交渉は、すべて言語を介して行われます。検察官に伝えるべき事情を、正確な日本語の書面に落とし込む作業が必要になります。

具体的には、検察官面談による処分方針の確認、示談交渉と宥恕文言の獲得、生活基盤や家族関係に関する資料の翻訳と意見書の提出、身元引受人の確保です。中国語の資料をそのまま提出しても伝わりません。何を訳し、どう説明するかが結果を左右します。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。訳された内容を確認できない状態で供述を重ねるのは危険です。理解できないまま署名するくらいなら、いったん留保する方が安全です。

第二に、早期の弁護人選任です。国選弁護人は勾留された後に付されるため、逮捕直後の72時間を埋められるのは当番弁護士か私選弁護人だけです。通訳を伴う接見を早期に実現できるかが分かれ目になります。

第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳と、依頼者本人のために動く通訳とは、役割が根本的に違います。前者は手続を進めるために置かれ、後者は依頼者が理解し判断するために置かれます。両者が同席する状態を作ることが、誤訳への最も現実的な備えです。

当事務所のご案内と解決事例

冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

当事務所は、裁判員裁判対象事件や世界的に報道された重大事件を含む国際刑事事件への対応実績を有し、中国籍の方の重大事件にも多数対応してきました。言語をまたぐ事件では、証拠の翻訳と尋問の設計が特に重要になります。

特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、各事件ごとの取調べ対応と主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。取調べのたびに通訳を介する状況で、供述の一貫性を保つ作業が結果を支えました。

当事務所では、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行はありません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、接見にも打合せにも同席します。提携行政書士による在留資格サポートで、刑事手続後もワンストップで対応できます。

結語

法廷に通訳が付くことは事実です。しかし刑事手続で言語が問題になるのは、法廷に立つよりずっと前の段階です。取調べ、接見、示談交渉、意見書。そのすべてに言語が介在します。誰のための通訳がそこにいるのかを確認することから始めてください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

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本記事の中国語版(简体字)はこちら

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