収容令書と仮放免請求|入管に収容された家族のために今できること
2026/08/24
本記事の要点
- 入管の収容には、違反審査の前提としての収容令書による収容と、退去強制令書の発付後の収容という二つの局面があります。
- 収容令書による収容の期間には上限が定められ、必要があると認められるときに延長される仕組みです。
- 令和5年改正により監理措置制度が設けられ、収容によらない在留管理と、収容の要否を定期的に見直す仕組みが導入されました。
- 仮放免は身体の拘束を一時的に解く制度で、保証金の納付と条件の遵守が求められます。仮放免中の就労は認められません。
- 収容令書により収容されている方には、在留特別許可の申請権が定められています(入管法50条2項)。
ある日突然、家族と連絡が取れなくなり、入管の施設に収容されていることが分かる。中国本土にいるご家族にとって、これほど不安な事態はありません。面会もできず、日本語での問い合わせもままならないまま、日数だけが過ぎていきます。
この記事では、入管における収容の法的な仕組みと、仮放免請求で何を主張するのか、そしてご家族が今すぐ着手できることを整理します。
収容の二つの局面
第一の局面は、違反審査に先立つ収容です。入国警備官は、退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときに、主任審査官の発付する収容令書によって身柄を収容します。期間の上限が法定され、必要があると認められる場合に延長されます。退去強制事由の有無を審査するための手続的な措置です。
第二の局面は、退去強制令書が発付された後の収容です。送還が可能となるまで身柄を確保するための収容であり、送還が実現しない限り長期化しやすい構造的な問題を抱えてきました。令和5年の法改正は、収容に代わる監理措置を設けるとともに、収容を継続する必要性を一定期間ごとに見直す仕組みを導入しました。
仮放免請求で何を主張するのか
仮放免は、収容されている方について請求または職権により一時的に身体の拘束を解く制度です。保証金の納付、住居や行動範囲の指定、呼出しへの出頭といった条件が付され、違反すれば取り消され、保証金も没取され得ます。仮放免中の就労は認められないため、生活費をどう賄うのかを示せなければ請求の説得力は落ちます。
- 健康上の理由:持病、治療継続の必要性、施設内の医療では対応が難しい事情を診断書等で示す
- 家族と身元引受人:日本にいる配偶者や子の生活・就学状況と扶養の必要性に加え、所在を把握して出頭を確保できる身元引受人を立て、逃亡のおそれがないことを示す
想定される刑事手続の流れ
刑事事件を経て収容に至る場合、その前段階の対応が結果を左右します。逮捕されると48時間以内に検察官へ送致され、24時間以内に勾留請求の可否が判断されます。逮捕から72時間で身体拘束の枠組みが定まり、勾留は原則10日、延長で最長20日です。この間に不起訴を得られれば、該当性そのものが生じない場合があります。
外国人事件特有のリスク
収容の根拠となる退去強制事由は、入管法24条の各号のいずれかです。4号ロは在留期間を経過した不法残留、4号イは在留資格に応じた活動を行わず他の収入を伴う活動を専ら行っている場合、4号ヘは資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合です。4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれ、一部執行猶予でも実刑部分が1年以下であれば除かれます。
4号チは薬物関係の有罪判決を対象とし、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。4号リの守備範囲から外されているため、薬物事犯は独立した扱いを受け、上陸拒否事由にも期間の定めがありません。収容に至る前の段階では、在留期間更新の不許可(入管法21条)や在留資格の取消し(入管法22条の4)が引き金になることも多くあります。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
収容に至る前に打てる手のうち最も効果が大きいのが不起訴処分の獲得です。執行猶予判決を得ても、薬物事犯であれば4号チに該当して退去強制手続が始まり、他の罪でも有罪判決の事実は在留期間更新の裁量審査で重く見られます。
- 担当検察官との面談を申し入れ、事案の実態、家族関係、生活基盤を直接説明する
- 身元引受人と再犯防止体制を書面化し、釈放後の生活設計を具体的に示す
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。刑事手続における黙秘は権利であり、行使したこと自体が不利益に扱われることはありません。入管の違反調査では構造が異なりますが、記憶が不確かな事項について推測で答えないという原則は共通します。
第二に、早期の弁護人選任です。収容中の方は自ら資料を集めることも、関係先に連絡することもできません。弁護人が代わりに動くことで初めて、仮放免請求に必要な書類が揃います。手続の段階によっては期限が3日と短い場面もあり、初動の遅れが取り返しのつかない結果につながります。
第三に、通訳の質です。入管が手配する通訳人は入管の手続のために選ばれた通訳であり、依頼者のために動く立場ではありません。健康状態や家族の事情は微妙な表現の差が判断を分けます。当事務所には中国語専属通訳が常駐し、面会に同行します。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行はいたしません。中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートにより手続後までワンストップでご対応します。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案。退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後入管から在留特別許可が認められています。
- 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案について、取調べ対応と主張立証を徹底し、全件について不起訴処分を獲得しました。身柄拘束の長期化にも一貫して対応しています。
- 国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があります。中国籍の方の重大事件にも多数対応し、通訳体制を含めた総合的な弁護を行っています。
おわりに
収容は、本人にとっても、日本と中国本土で待つご家族にとっても大きな負担です。しかし収容は手続の終着点ではありません。収容令書により収容されている方には在留特別許可の申請権が定められており、仮放免や監理措置という選択肢も用意されています。どの主張をどの段階で出すかを設計できれば、状況は動きます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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