みなし再入国と出国後の不許可|事件を抱えたまま出国する危険
2026/08/24
本記事の要点
- みなし再入国は、有効な旅券と在留カードを持つ方が、出国後1年以内の再入国を予定して出国する場合の簡易な仕組みである。
- 在留期間の満了日が出国から1年以内に来る場合は、その満了日までに戻らなければならない。
- みなし再入国で出国した場合、国外からその期間を延長することはできない。
- 再入国の際には上陸審査を受ける。上陸拒否事由に該当すると判断されれば、日本に戻れないことがある。
- 捜査中や処分未了の状態での出国は、戻れなくなる危険を伴う。出国前に見通しを立てるべきである。
一時帰国のたびに再入国許可を取りに行かなくてよくなったことで、日本と中国を往復する生活はかなり楽になりました。しかし、その手軽さのために、出国してから戻れなくなるという事態が起きています。とくに刑事事件に関係している方の場合、出国そのものが取り返しのつかない選択になりかねません。
この記事では、みなし再入国の枠組みを確認したうえで、刑事事件が絡む場面で出国を検討する際に何を確認すべきかを整理します。すでに出国してしまい、戻れるかどうか不安な方にも読んでいただきたい内容です。
みなし再入国の仕組み
有効な旅券と在留カードを所持する方が、出国後1年以内に再入国して従前の活動を続ける意図で出国する場合には、再入国許可を受けたものとみなされます。出国時に、再入国の意思を示す欄のあるカードで意思表示をする必要があります。この意思表示を忘れると、通常の出国として扱われ、在留資格を失います。
期間には注意が必要です。在留期間の満了日が出国から1年以内に到来する場合は、その満了日までに再入国しなければなりません。1年あると思い込んで予定を組み、在留期限を過ぎてしまう例があります。そして、みなし再入国で出国した場合、国外からこの期間を延長する手段はありません。長期の滞在が見込まれるのであれば、出国前に通常の再入国許可を検討すべきです。
特別永住者の方については、これより長い期間が定められています。ご自身がどの扱いになるかを、出国前に確認してください。
戻ってくるときに何が審査されるか
みなし再入国には、出国前に許可を受ける手続がありません。そのため、実質的な審査は帰国時の上陸審査で行われます。ここで上陸拒否事由に該当すると判断されれば、在留カードを持っていても日本に入れないことがあります。
刑事事件との関係で重要なのは、薬物関係の上陸拒否事由です。これには年限の定めがなく、期間の定めのない上陸拒否となります。罰金であっても、外国の法令による違反であっても足ります。この場合、日本に戻る道は上陸特別許可という例外的な手続に限られます。
また、捜査が進行中の状態で出国すれば、出国したこと自体が逃亡と評価されることがあります。逮捕状が出ている場合、再入国の時点で身柄を確保されることも当然にありえます。事件が終わっていないうちに出国するという判断は、慎重に検討しなければなりません。
刑事手続の流れと、出国という選択
逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。この72時間で勾留の枠組みが定まり、勾留されれば原則10日、延長でさらに最大10日が加わります。身柄が拘束されていれば、そもそも出国はできません。
問題になるのは、在宅で捜査を受けている場面です。呼出しを受けているうちに帰国の予定が来る、家族の事情で急に帰らなければならない、といった状況で、出国してよいかという相談が寄せられます。処分の見通し、旅券の任意提出の有無、捜査機関との調整の可否を確認したうえで判断する必要があります。弁護人を通じて捜査機関と連絡を取り、出国と帰国の予定を明らかにしておくことで、無用な誤解を避けられる場合があります。
退去強制事由と不起訴処分の意味
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。24条4号チは薬物関係法令違反の有罪であれば足り、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。薬物該当者は出国命令の制度も使えません。
執行猶予でも在留を失いうる類型がある以上、狙うべきは起訴前の不起訴処分です。示談交渉と宥恕文言の取得、故意や共謀の有無に関する意見書の提出、検察官との面談を通じて、処分が決まる前に働きかけます。不起訴を得られれば、出国も再入国も、通常の生活の一部に戻ります。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。
初動対応の3つのポイント
黙秘権の行使。渡航歴や出国の目的について曖昧に答えると、逃亡の意図があったかのような記録が残ります。確認してから話すべきです。
早期の弁護人選任。国選弁護人は勾留決定後です。在宅の段階では国選の対象になりません。出国の可否を判断できるのは、事件の見通しを把握している私選弁護人だけです。
通訳の質。捜査機関が手配する通訳人は、依頼者本人のために動く立場ではありません。帰国の予定や親族の事情の訳し方によって、逃亡のおそれの評価が変わります。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために正確に訳します。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しています。刑事手続後の在留資格については、提携行政書士と連携してワンストップで対応します。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠を徹底的に分析し、被告人質問と反対尋問で争点を組み立てた結果、無罪判決を獲得しました。
- 観光目的で来日した後に在留資格を失い不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど得られない状況で有利な証拠を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案で、取調べへの対応方針を固め、主張と立証を積み重ねて全件について不起訴処分を獲得しました。
おわりに
空港のカウンターで在留カードを見せれば出国できてしまうことと、戻ってこられることとは別の話です。事件を抱えたまま国境を越える判断は、一度きりで、やり直しがききません。飛行機に乗る前に、確認できることは確認しておいてください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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