就労資格証明書と転職|職務内容の適合性をどこで確認するか
2026/08/24
本記事の要点
- 就労資格証明書は、その方が行うことができる活動を証明する文書で、転職時に新しい職務が在留資格に適合するかを事前に確認する手段になる。
- 取得は任意である。提出しないことを理由に不利益に取り扱うことは想定されていない。
- 転職時には、所属機関に関する届出(入管法19条の16)を期限内に行う必要がある。
- 職務内容が在留資格に適合しないまま働き続ければ、資格外活動の問題となり、退去強制事由に触れうる。
- 刑事事件が絡む転職では、処分の見通しを立ててから手続の順序を決めるべきである。
転職そのものは自由です。しかし在留資格をもって日本で働く方にとって、転職は在留資格との適合性を問い直される場面でもあります。前の職場では問題なく認められていた在留資格が、新しい職務の内容によっては適合しないと判断されることがあるからです。
この記事は、転職を考えている方と、外国人材を採用する企業のご担当者に向けて書きます。就労資格証明書の位置づけ、届出義務、そして刑事事件が絡んだ場合の進め方を整理します。
就労資格証明書はどのような文書か
就労資格証明書は、その外国人が行うことができる活動を法務大臣が証明する文書です。転職先での職務内容が、現に有する在留資格の範囲に収まっているかどうかを、次回の更新を待たずに確認できるところに実務上の意味があります。
取得は任意です。所持していないことを理由に不利益な取扱いをすることは制度上想定されていません。しかし、確認しないまま働き続け、次回の在留期間更新の審査ではじめて職務内容の不適合が判明する事態は避けたいところです。とくに、職種の名称は同じでも実際の業務が単純作業に寄っている場合、更新審査で厳しく見られます。企業側にとっても、採用時に適合性を確認しておくことは、不法就労助長のリスクを避ける意味を持ちます。
転職に伴う届出も忘れてはなりません。所属機関に関する届出(入管法19条の16)は期限が定められており、これを怠っていると、更新や変更の審査で心証を損ないます。
刑事事件が起きたときの手続の流れ
逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。この72時間で勾留の枠組みが定まり、勾留されれば原則10日、延長でさらに最大10日が加わります。転職の直後や転職活動中に身柄を拘束されると、内定が取り消され、収入が途絶え、在留の基盤そのものが揺らぎます。
この段階で弁護人が行うのは、身柄解放に向けた活動と並行して、雇用関係の維持に向けた連絡経路の確保です。無断欠勤が続けば解雇の理由になります。会社側に伝えるべき事項と伝える時期を設計することが、後の在留手続にそのまま効いてきます。
資格外活動と退去強制事由
在留資格に適合しない業務に従事していると、資格外活動の問題が生じます。入管法24条4号イは、資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる場合を退去強制事由とし、24条4号ヘは資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合を対象とします。
企業側の問題として、不法就労助長があります。これは行為があれば足り、刑事処罰を受けていなくても退去強制事由となりうる点に特徴があります。外国人従業員の在留資格と実際の職務内容が一致しているかを確認しないまま就労させることは、企業にとっても外国人従業員本人にとっても危険です。
刑事処分そのものの影響も確認が必要です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。24条4号チは薬物関係法令違反の有罪であれば足り、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、上陸拒否にも年限の定めがありません。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。
不起訴処分を取ることの意味
執行猶予判決でも退去強制の対象となりうる類型がある以上、目標は起訴前の不起訴処分です。転職を控えた方にとっては、前科がないことが採用の前提になる場面も多く、不起訴の意味はいっそう大きくなります。
起訴前の活動としては、被害者との示談交渉と宥恕文言の取得、事実関係や故意の有無に関する意見書の提出、検察官との面談による意見の伝達を行います。転職先が採用の意向を維持していること、業務内容が在留資格に適合していることを客観的資料で示すことは、起訴猶予の判断にも入管審査にも効きます。
初動対応の3つのポイント
黙秘権の行使。前職での業務内容や勤務時間を曖昧に答えると、資格外活動を認めたかのような調書になりかねません。確認してから話すべきです。
早期の弁護人選任。国選弁護人は勾留決定後です。最初の72時間を担えるのは私選弁護人だけであり、雇用と在留の両方を見て動ける体制が必要です。
通訳の質。捜査機関が手配する通訳人は、依頼者本人のために動く立場ではありません。職種名や契約形態の訳し方ひとつで、在留資格との適合性の評価が変わります。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために正確に訳します。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しています。刑事手続後の在留資格については、提携行政書士と連携してワンストップで対応します。
- 取り込み詐欺の被害に遭った卸業の依頼者について、刑事告訴を端緒に相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。取引先とのトラブルは、刑事と民事の両面から組み立てる必要があります。
- 外資系企業の支配権をめぐる紛争において勝訴しました。企業側のご相談にも対応しています。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意・過失を要しないとする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
おわりに
転職は、在留資格の適合性が改めて問われる分岐点です。そこに刑事事件が重なると、確認すべき事項が一気に増えます。順序を誤ると取り返しがつきません。動き出す前に、刑事と入管の両面から見通しを立ててください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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