在留期間更新(入管法21条)の審査で見られるもの|刑事事件との関係
2026/08/24
本記事の要点
- 在留期間の更新(入管法21条)は権利ではなく、相当の理由があるときに許可される仕組みである。
- 審査では活動の実態、素行、独立生計、届出義務の履行状況が総合的に見られ、刑事事件は素行の評価に直結する。
- 不起訴処分であれば前科は生じないが、捜査を受けた事実が資料として現れることはある。
- 薬物事犯は罰金や執行猶予でも入管法24条4号チに該当し、更新以前に退去強制の問題となる。
- 更新申請の時期・添付資料・説明の組み立ては、刑事手続の見通しと合わせて設計する必要がある。
在留期間の満了が近づく時期に刑事事件が起きると、更新申請をどうすべきかという判断を迫られます。申請すれば不許可になるのではないか、申請しなければ不法残留になるのではないか、と板挟みになるご相談は少なくありません。この記事は、その局面にいる方と、雇用する企業のご担当者に向けて書いています。
在留期間の更新は、真面目に働いてきたのだから当然に認められる、というものではありません。制度の建て付けを理解したうえで、何をどう示すかを設計する必要があります。
更新審査で見られていること
在留期間の更新は、入管法21条に基づく申請です。許可は、在留を認めるに足りる相当の理由があると判断されたときに与えられます。審査では、おおむね次の点が総合的に見られます。
- 現に有する在留資格に対応する活動を実際に行っているかどうか。就労資格であれば、職務内容が資格に適合しているか、契約が継続しているか。
- 素行が善良かどうか。刑事処分の有無、内容、時期がここに現れます。
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能があるかどうか。収入の安定性や納税状況が確認されます。
- 雇用や労働に関する法令、届出義務を守っているかどうか。所属機関に関する届出(入管法19条の16)や在留カードの記載事項変更の届出を怠っていないか。
刑事事件は、このうち素行の評価に直接響きます。ただし、事件の存在だけで自動的に不許可になるわけではなく、事案の内容、処分の重さ、経過した期間、本人の生活状況が併せて考慮されます。だからこそ、処分の内容を軽くしておくこと、経緯を説明できる資料を整えておくことが意味を持ちます。
刑事手続の進み方と、更新申請のタイミング
逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留請求の可否を決めます。この72時間で勾留の枠組みが定まり、勾留されれば原則10日、延長で最大10日が加わります。捜査が長引けば、身柄拘束中に在留期間が満了することもあります。
更新申請は在留期間の満了前に行う必要がありますが、身柄拘束中は本人が窓口に出向けません。取次ぎや代理での提出について早い段階で見通しを立てておかなければ、申請できないまま期限を迎えます。期限を過ぎれば不法残留として入管法24条4号ロの問題が生じます。刑事弁護と入管手続は、同じ時間軸の上で組み立てる必要があります。
退去強制事由との関係を先に確認する
更新の可否を考える前に、そもそも退去強制事由に該当しないかを確認する必要があります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。一部執行猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば除外されます。
他方、24条4号チは薬物関係法令違反の有罪であれば足り、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。ここに当たれば、更新の議論以前に退去強制の問題です。薬物事犯は上陸拒否にも年限の定めがなく、出国命令も使えません。また、資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合の号(24条4号ヘ)や、資格外活動を専ら行っている場合の号(24条4号イ)にも注意が必要です。不法就労助長は、行為があれば足り、刑事処罰がなくても退去強制事由となりうる点が特徴です。
なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないという実務が長く続いてきました。当事務所は、これに対して責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。
不起訴処分を取ることの意味
起訴されなければ有罪判決はなく、前科も生じません。更新審査の素行評価においても、不起訴と有罪判決とでは重みが大きく異なります。執行猶予判決でも退去強制の対象となりうる類型がある以上、狙うべきは起訴前の不起訴処分です。
起訴前にできることとして、被害者との示談交渉と宥恕文言の取得、事実関係や故意の有無に関する意見書の提出、検察官との面談による意見の伝達があります。勤務先による雇用継続の意向、業務内容の是正、再発防止のための社内体制を書面で示すことは、起訴猶予の判断にも後の更新審査にも役立ちます。刑事の資料と入管の資料は、最初から両方を見据えて作るべきです。
初動対応の3つのポイント
黙秘権の行使。職務内容や契約条件について曖昧に答えると、資格外活動を認めたかのような調書になりかねません。事実関係を確認してから話すべきです。
早期の弁護人選任。国選弁護人は勾留決定後です。最初の72時間を担えるのは私選弁護人だけであり、在留期間の満了日から逆算して動けることが重要です。
通訳の質。捜査機関が手配する通訳人は、依頼者本人のために動く立場ではありません。職種名や業務内容の訳し方ひとつで、在留資格との適合性の評価が変わります。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために正確に訳します。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しています。刑事手続後の在留資格については、提携行政書士と連携してワンストップで対応します。
- 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を具体的に主張し、不起訴処分を獲得しました。前科を残さないことが、その後の在留に直結した事案です。
- 観光目的で来日した後に在留資格を失い不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど得られない状況で有利な証拠を積み上げ、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
- 過去の逮捕報道・前科報道の削除に成功した実績があります。検索結果が残り続けることは転職や更新の場面で不利益となりうるため、別に手当てが必要です。
おわりに
更新の可否は、申請書を出した瞬間ではなく、それまでの数か月に何を積み上げたかで決まります。刑事事件が起きた直後こそ、更新申請に向けた材料づくりが始まる時点です。期限が迫ってからより、いま動く方が選べる手は多くなります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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