留学と刑事事件|除籍・退学と資格外活動、そして在留資格の取消し
2026/08/24
本記事の要点
- 留学は学校に在籍して学ぶことを在留の理由とする資格であり、除籍や退学は、刑事事件の結論とは別に、それ自体で在留の基盤を失わせます。
- 身柄拘束による長期欠席は出席率の低下を通じて除籍につながりやすく、刑事手続と学籍の問題は同時に進行します。
- 資格外活動許可には時間の上限があり、超えて働いた場合はその活動を専ら行っていると認められるかが厳しく問われます。
- 薬物事犯は罰金でも執行猶予でも退去強制事由に該当し、学生であることは考慮されません。
- 卒業後の就労資格への変更は素行が審査対象になるため、在学中の事件は数年後の進路にまで影響します。
日本語学校や大学で学びながらアルバイトで生活を支えている留学生の方が、思いがけない形で刑事事件の当事者になる。割のよい仕事だと誘われて口座を渡した、荷物を受け取りに行っただけだった、という経緯で逮捕に至る事案は後を絶ちません。
留学という資格の特徴は、学ぶことそのものが在留の理由になっている点にあります。学籍を失えば、その時点で在留の土台が消えます。本記事では、刑事手続と学籍と在留資格という三つの線を同時にどう扱うかを説明します。
逮捕から起訴・不起訴までと、学校への影響
逮捕されると48時間以内に検察官へ送致され、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。この最大72時間の間に方向性が決まってしまいます。留学生の事案では、日本語での取調べに応じるうち、断片的な受け答えが誘導的にまとめられ、認識があったかのような調書が作られることがあります。
勾留が決まれば原則10日、延長でさらに10日です。この間、学校には無断欠席として記録されます。多くの学校は出席率を厳格に管理しており、一定水準を下回れば除籍の対象になります。弁護人を通じて学校に事情を説明し、学籍を維持する方法を協議することが、刑事弁護と同じくらい重要になる場面があります。
留学に固有のリスク
まず退去強制事由の基本です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。同条4号チの薬物関係の有罪は、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。学生であること、初犯であることは、この条文の適用を左右しません。同条4号の2は危険運転致死傷などの重大犯罪を列挙しています。
留学に固有なのが資格外活動です。留学生の就労は資格外活動許可に基づくもので、時間の上限が定められています。上限を超えて働き、その活動を専ら行っていると明らかに認められるときは退去強制事由となりえますし、資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合にも別の号が用意されています。掛け持ちで複数のアルバイトをしていた、学校を休みがちで仕事の時間のほうが長かったという状況は、この論点に直結します。
そして在留資格の取消しです。入管法22条の4は、別表第一の在留資格をもって在留する者が当該活動を継続して3か月以上行っていない場合を取消し事由の一つとしています。正当な理由がある場合は除かれますが、除籍された後、次の学校に移らないまま時間が過ぎればこの類型に近づきます。学校側にも在籍状況に関する届出の仕組みがあるため、除籍の事実は入管に伝わる前提で考えるべきです。住居地の届出に関する義務違反も取消し事由に含まれます。卒業後の在留資格変更(入管法20条)でも素行は審査されます。なお当事務所は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し上訴審まで争ってまいりました。
不起訴処分の重要性
留学生の事案で不起訴を取る意味は二重です。第一に、退去強制事由の適用を避けられること。第二に、学校との関係で除籍を回避する交渉材料になることです。公判が続けば、学校としても学籍を維持する理由を見出しにくくなります。執行猶予を目指す発想では、在留も学籍も守れません。
起訴前の活動としては、早期の示談交渉、宥恕と再発防止を明記した示談書の作成、検察官面談の申入れ、意見書の提出が中心です。意見書には、学業成績と出席状況、教員の評価、母国の家族の状況と学費の負担、事件に至った経緯における誘い込みの構造、今後の学習計画を、資料を添えて記載します。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。誘われた経緯やアルバイトの内容について軽い気持ちで説明したことが、認識や共謀の証拠として構成されることがあります。弁護人と整理するまでは供述を控える判断が合理的です。
第二に、早期の弁護人選任です。国選弁護人は原則として勾留決定後に付き、最も重要な72時間は制度上の空白になりがちです。ご家族が中国におられても、ご連絡さえいただければ初回接見に向かえます。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳は捜査手続を進めるために置かれ、依頼者のために訳の当否を争う立場にはありません。依頼者本人のために動く通訳であれば、学生同士のやりとりで使われる中国語の言い回しや、SNS上の略語の意味を弁護人に伝えられます。友人の依頼を軽い気持ちで引き受けた事情と、報酬目当てで加担したという評価との差は、こうした言葉の理解の上に成り立ちます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士が代行することはありません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しています。刑事手続後の在留資格は、提携する行政書士とともにワンストップで対応いたします。
- 特殊詐欺の受け子(中国語では代取赃款者にあたる役割)として複数回再逮捕された事案では、取調べ対応を一貫して設計し、関与の実態と認識の程度について主張立証を尽くして、全件について不起訴処分を獲得しました。再逮捕の連鎖を早期に断つことが学籍の維持にもつながります。
- 観光目的で来日し日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど無い状況下で有利な証拠を集め、1発で在留特別許可を獲得しました。
- 過去の逮捕報道・前科報道の削除に成功した事例もあります。実名で報じられると就職活動や進学に長く影響するため、報道対応も含めた検討が必要です。
おわりに
留学生の事件では、刑事手続と学籍と在留資格が、それぞれ別の時計で進みます。刑事の結論を待っていると、その間に除籍が確定し、在留の土台が消えていることがあります。逮捕の連絡を受けたその日から、学校への対応、届出の確認、刑事弁護を、同じ計画表の上で動かしてください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------