国選弁護人から私選弁護人への切替え|手続とタイミング
2026/08/23
本記事の要点
- 私選弁護人を選任すると、国選弁護人は解任される扱いとなり、二重に付くことはありません。
- 切替えの手続自体は複雑ではありませんが、時期によって取り得る手が大きく変わります。
- 起訴前に切り替えられれば、不起訴処分を目指す活動に時間を充てられます。
- 私選に切り替えた後、事情によっては国選に戻れないことがありますので、事前の確認が必要です。
- 外国人事件では、通訳の体制と入管手続への対応が切替えを検討する主な理由になります。
中国本土のご家族から、日本にいる家族に弁護人は付いているが、家族が選んだ弁護士に依頼したい、というご相談をいただきます。すでに国選弁護人が選任されている場合、切替えができるのか、どのような手続が必要なのか、というご質問です。
結論として、切替えは可能です。ただし、いつ切り替えるかによって、新しい弁護人が使える時間はまったく違ってきます。本記事では、手続の流れとタイミングの考え方、そして外国人事件で切替えが検討される理由を整理します。なお本記事は、特定の弁護人の対応を評価するものではなく、制度上の説明を目的とします。
想定される刑事手続の流れ
逮捕された方は48時間以内に検察官へ送致され、24時間以内に勾留請求の判断がなされます。この72時間が全体を決めます。国選弁護人が付くのは勾留された段階以降ですので、逮捕直後の最も重要な時期には、私選で依頼しない限り弁護人がいない状態が生じ得ます。
勾留されれば原則10日、延長で最大20日となり、その間に起訴か不起訴かが判断されます。したがって、切替えを考えるのであれば、この20日間のできるだけ早い時点が望ましいということになります。
外国人事件特有のリスク
刑事処分の内容は退去強制事由に直結します。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、但書により刑の全部の執行を猶予された方は除かれます。薬物事犯を定める24条4号チは有罪判決自体で足り、罰金でも執行猶予でも該当し得ます。あわせて、在留期間更新の不許可(21条)や在留資格の取消し(22条の4)もあります。
刑事手続と入管手続を通して扱える体制があるかどうかは、切替えを検討する際の実質的な判断材料です。当事務所は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟活動を行ってきました。
切替えの手続はどう進むのか
私選弁護人を選任する場合、依頼を受けた弁護士が選任に必要な手続を取り、裁判所に対して選任されたことを明らかにします。これにより、国選弁護人は解任される扱いとなります。国選と私選が同時に付き続けることはありません。
手続の流れは、おおむね次のようになります。まず、ご家族から相談を受けた弁護士が本人と接見し、本人の意思を確認します。刑事事件の当事者は本人であり、弁護人を誰にするかを決めるのは本人だからです。次に、委任契約を締結し、選任の手続を取ります。その後、それまでの記録の引継ぎや、進行中の交渉の状況の確認を行います。
注意していただきたいのは、私選に切り替えた後、事情によっては国選に戻ることができない場合があるという点です。また、示談交渉が進行中である場合や、公判期日が迫っている場合には、引継ぎに要する時間が実質的な影響を及ぼします。
外国人事件で切替えが検討される理由
実際にご相談を受ける理由として多いのは、次のような点です。第一に、通訳の体制です。接見のたびに通訳を手配できるか、母語で方針の説明を受けられるかは、依頼者の理解と納得に直結します。第二に、入管手続への対応です。刑事処分だけでなく、在留資格の期限、収容の見通し、在留特別許可の可能性まで含めて説明を受けたいというご要望です。
第三に、ご家族との連絡です。中国本土のご家族に対して、事件の進行状況を母語で継続的に伝えられる体制があるかどうかは、ご家族にとって重要な要素です。
これらはいずれも、国選弁護の制度自体の評価とは別の問題です。切替えを検討する際は、現在の状況で何が足りないと感じているのかを具体的に整理したうえで相談されることをお勧めします。
不起訴処分の重要性
切替えのタイミングを起訴前に置くべき最大の理由は、不起訴処分という選択肢がその期間にしか存在しないからです。執行猶予判決でも退去強制事由に当たり得る類型があり、薬物事犯では罰金でも該当し得ます。
不起訴を目指す活動としては、検察官との面談を重ねて事件の見え方に反論を加えること、被害者がいる事件では通訳を交えて謝罪と被害弁償の協議を進めること、犯意や関与の程度に争いがあれば客観証拠との整合を示す意見書を提出すること、身元引受体制を整えて報告することが挙げられます。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。弁護人の体制が定まらない段階で供述を重ねることは、後の選択肢を狭めます。
第二に、早期の弁護人選任です。国選弁護人が付くのは勾留された後ですので、逮捕直後の段階で相談できるかどうかが分かれ目になります。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳は捜査を進めるための存在であり、依頼者の立場から言葉を選ぶ役割は担いません。弁護人が依頼者のために用意する通訳は、本人が本当に伝えたい内容を正確に日本語にすることを任務とします。
当事務所のご案内と解決事例
- 特殊詐欺の出し子(現金を引き出す役割)に関わったとされた20代女性の事案。指示役からの欺罔や脅迫的状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。
- 特殊詐欺の受け子(現金や荷物を受け取る役割)で複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べ対応と主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。
- 観光目的で来日し在留資格を失って不法滞在で起訴された事案。婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど得られない中で有利な証拠を集め、1回の手続で在留特別許可を獲得しました。
当事務所では弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しているため、接見にも同行し、ご家族への説明も母語で行えます。提携行政書士による在留資格サポートで、刑事手続後の在留手続までワンストップで対応いたします。
結語
切替えの手続そのものは、難しいものではありません。難しいのは、いつ判断するかです。まずはご本人の意思を確認し、現在どこまで手続が進んでいるかを把握してください。そのうえで、何が足りないと感じているのかを具体的にお伝えいただければ、取り得る方針をご説明できます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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