大学・専門学校への説明と除籍を避けるために|留学生が逮捕されたとき
2026/08/23
本記事の要点
- 除籍や退学は、留学の在留資格にとって最も重い打撃です。刑事処分そのものより先に学籍の維持を検討すべき場面があります。
- 身柄拘束による欠席は無断欠席として処理されがちですので、弁護人を窓口として早期に事情を伝える設計が必要です。
- 在留資格に応じた活動を行っていない状態が続けば、在留資格の取消し(入管法22条の4)が問題となります。
- 資格外活動許可の範囲を超えたアルバイトは、それ自体が入管法上の不利益につながります。
- 起訴前に不起訴処分を得られれば、学籍の回復も在留の維持も進めやすくなります。結果は事案により異なります。
留学中のご家族が身柄を拘束されたという知らせを受けたとき、中国本土のご家族が最も気にされるのは、学校を続けられるのかという点です。学費を工面して送り出したご家庭であればなおさらです。ところが日本の学校は、学生が突然連絡不能になった事実だけを見て、出席不良や学納金の未納を理由に手続を進めてしまうことがあります。
刑事事件の見通しがどうであれ、学籍を失えば留学の在留資格を維持する足場が消えます。ここでは、学校への説明をどう組み立てるか、除籍を避けるために何を確認すべきか、そして在留資格の側で並行して起きることを整理します。
身柄拘束の期間と、学校側の手続が進む速度
逮捕後48時間以内に事件は検察官へ送致され、検察官は逮捕時から72時間以内に勾留を請求するかを決めます。勾留が決まれば原則10日、延長で最大20日です。起訴されれば保釈が認められない限りさらに続きます。この最初の72時間で釈放の可能性を追えるかどうかが、出席日数にも学納金の納期にも直接響きます。
学校側の規程は、一定期間の連続欠席、出席率の下限、学納金の納入期限を基準に、注意、警告、除籍という段階を踏むのが一般的です。基準の内容と、現在どの段階にあるのかを確認することが最初の作業になります。
学校への説明をどう組み立てるか
実務上は、弁護人が本人の意向を確認したうえで、必要最小限の事実を、学生課や指導教員など責任のある窓口に伝えます。伝えるのは、本人の意思に反して登校できない状況にあること、見通しは未確定であること、連絡窓口は弁護人であることが中心です。
- 休学や欠席の届出について、本人以外が代理で行える手続があるか
- 学納金の納入期限と、延納や分納の申請が可能か
- 出席日数の不足を補う手段(レポート、追試、次年度への繰越し)があるか
- 報道が出ている場合に、学内でどのような取扱いがなされるのか
罪名や事件の詳細を必要以上に開示すると、後に不起訴となっても学内での評価が戻りにくくなります。何をどこまで伝えるかは、処分の見通しと合わせて判断してください。
外国人事件に特有の在留資格上のリスク
留学の在留資格は、学校に在籍して教育を受けるという活動を前提とします。除籍や退学によりその実体が失われれば、在留資格に応じた活動を行っていないことを理由とする在留資格の取消し(入管法22条の4)が問題となります。また、在留期間の更新は入管法21条に基づき審査され、出席率、成績、素行が判断材料になります。拘束中に在留期間が満了すれば更新申請ができず、不法残留として入管法24条4号ロの退去強制事由に該当し得ます。
アルバイトについても注意が必要です。資格外活動許可の範囲を超えて働いていた場合、資格外活動に専従していたと評価されれば入管法24条4号イが、資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合には入管法24条4号ヘが問題となります。刑事事件の捜査の過程でアルバイトの実態が明らかになることは珍しくありませんので、事実関係を早期に整理しておく必要があります。
刑事処分との関係では、入管法24条4号リが無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、同号の但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。他方、薬物関係の有罪は入管法24条4号チに該当し、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。なお、退去強制事由の該当性に故意・過失を要しないとされてきた運用に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
学籍を守るという観点からも、起訴前に不起訴処分を得ることの意味は大きいものです。不起訴であれば有罪判決が存在せず、退去強制事由の該当性の議論に入りません。身柄が早期に解放されれば授業に復帰でき、除籍の基準に触れる前に立て直せる可能性も高まります。他方、執行猶予付き判決を得ても、薬物事案などでは退去強制の対象となり得ます。
起訴前の弁護活動は、検察官との面談で処分の見通しと懸念点を把握すること、被害者がいる事案では被害弁償と示談を尽くすこと、学業の継続可能性と家族の支援体制を示す意見書を提出することが柱です。学校が復学を認める意向であれば、その書面は有力な資料になります。
初動対応の3つのポイント
第一に黙秘権の行使です。学校に迷惑をかけたくないという気持ちから曖昧な供述をすると、その調書が在留資格の審査でも参照されます。第二に早期の弁護人選任です。学校の規程を確認し、期限を管理し、窓口を一本化する作業は、弁護人がいて初めて動きます。第三に通訳の質です。捜査機関が指定する通訳は捜査のために働き、依頼者本人のために働く通訳とは役割が異なります。授業やアルバイトの実態は細かな事実の積み重ねであり、訳が粗いと不正確な事実が固定されます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所は、外国人の刑事弁護と入管手続を中心に扱っています。参考として次の事例をご紹介します。
- 特殊詐欺の出し子に関与したとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を具体的に主張し、不起訴処分を獲得しました。
- 過去の逮捕報道や前科報道について、削除に成功した実績があります。
当事務所では、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士に代行させることはありません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、中国本土のご家族への報告も中国語で行えます。刑事手続後の在留資格は、提携する行政書士と連携してワンストップでお引き受けします。
結語
留学生の事案では、刑事処分が決まる前に学籍を失ってしまう順序の逆転がしばしば起こります。学生証、学納金の領収書、在留カード、資格外活動許可の内容を手元にそろえ、学校へ連絡する前にご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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