廃棄物処理法違反|無許可の収集運搬と、スクラップをめぐる立件
2026/08/19
本記事の要点
- 許可を受けずに廃棄物の収集運搬や処分を業として行うと、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又はその併科の対象になります。
- 不法投棄も同様に重く扱われ、両罰規定により法人にも高額の罰金が科され得ます。
- 有価物として買い取ったつもりでも、性状や取引の実態から廃棄物と評価されることがあります。
- 金属くずの取扱いについては、盗難特定金属製物品の処分防止に関する法令違反が入管法24条4号の2の列挙に加えられており、注意が必要です。
- 入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、刑の全部の執行を猶予された者は但書により除外されます。
解体現場から出た金属を運んでほしいと頼まれた。使わなくなった家電を集めて業者に売った。片付けを手伝う仕事として求人に応募し、指示されたとおりに軽トラックで運搬していた。廃棄物をめぐる事件は、こうした日常の作業から始まります。作業をしている本人には、自分が許可制度の外側にいるという自覚がないことがほとんどです。
この記事は、リサイクルや解体、運搬の現場で働く方、そして外国人材を受け入れる事業者の方に向けたものです。廃棄物処理法違反がどのように立件され、それが在留資格にどう影響するのかを整理します。
想定される刑事手続の流れ
端緒は、近隣からの通報、自治体による立入検査、不法投棄の現場からの追跡、あるいは取引先の帳簿の確認です。捜査機関と行政は連携して動き、運搬経路、車両の使用状況、対価の授受、処分先の実態を確認します。現場の作業者だけでなく、指示をした者、車両を提供した者にも捜査が及びます。
逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求するかを判断します。この72時間で問われるのは、許可の有無を知っていたか、誰の指示で動いていたか、報酬はどのように支払われていたかという点です。雇い主をかばう趣旨で曖昧に答えると、かえって自らの主体性を認めたものと扱われることがあります。
無許可での収集運搬業や処分業、不法投棄については、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又はその併科が定められています。さらに、両罰規定により事業者である法人にも罰金が科され得るため、事業への影響は個人の処分にとどまりません。
外国人事件特有のリスク
まず、入管法24条4号リです。同号は無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外され、一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。無許可営業の事案で1年を超える実刑に至るのは規模の大きい事案に限られますが、反復性と利益の規模によっては現実の問題になります。
次に、金属スクラップを扱う方に特に注意していただきたい点があります。入管法24条4号の2は一定の重大犯罪を列挙する号であり、そこには盗難特定金属製物品の処分防止に関する法令違反が加えられています。金属の買取りや運搬に関わる方は、廃棄物処理法だけを見ていれば足りるわけではありません。
さらに、在留資格の側面です。在留期間の更新は入管法21条により審査され、素行の善良性が問われます。届け出た所属機関での活動を行わず、別の現場で作業をしていたと評価される場合には、在留資格の取消し(同法22条の4)も検討されます。受入れ企業にとっても、従業員の事件は所属機関としての説明責任に直結します。そして、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を担当し、上訴審まで争ってきました。指示に従って運んだだけという事案では、この視点が防御の柱になります。
不起訴処分の重要性
この類型では、役割の切り分けが処分を大きく左右します。許可の要否を判断する立場にあったのか、単に指示に従って運転していたのか。報酬は日当だったのか、売却代金の分配だったのか。これらを雇用の実態、給与の支払記録、指示の通信履歴に即して整理し、検察官に示します。
あわせて、原状回復への協力が重要です。不適正に処理された物の回収、適正な処分業者への引渡し、費用の負担への関与は、処分の判断に強く影響します。さらに、生活状況、家族の状況、在留資格への影響を意見書にまとめ、検察官面談を求めて口頭でも説明します。事業者側では、社内体制の是正と再発防止策を具体的に提示することが求められます。目標は執行猶予ではなく、不起訴処分です。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。許可制度の内容を正確に理解していない状態で「知っていた」と答えてしまうと、故意の認定に直結します。方針が固まるまで話さないという選択は、正当な権利の行使です。
第二に、早期の弁護人選任です。運搬記録や指示のやり取りは、時間が経つと失われます。弁護人が早期に入り、有利な資料を確保できるかどうかが結果を分けます。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査の進行のために置かれた存在です。「ごみ」「廃材」「資源」「買い取った物」といった区別は、廃棄物該当性の判断に直結しますが、中国語からの訳出の過程で容易に平板化します。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために働きます。
当事務所のご案内と解決事例
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当事務所では、弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートで刑事手続後もワンストップで対応します。
結語
現場で働く方にとって、目の前にあるのは荷物であり、指示された作業です。その荷物が法律上どう位置づけられるのかは、後から評価されます。だからこそ、誰の指示で、どのような条件で働いていたのかを、早い段階で記録に残す必要があります。連絡を受けた段階でご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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