銃刀法・火薬類取締法違反と外国人事件|護身用の所持がもたらす結果
2026/08/19
本記事の要点
- けん銃等の所持には1年以上10年以下の拘禁刑という重い法定刑が定められており、実刑となる可能性が高い類型です。
- 刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を正当な理由なく携帯する行為は、それだけで銃刀法違反となります。
- 職務質問をきっかけに所持が発覚する例が多く、任意の提示に応じるかどうかの判断が結果を分けます。
- 実刑が1年を超えれば入管法24条4号リに該当しますが、刑の全部の執行を猶予された者は但書により除外されます。
- 罰金にとどまる事案でも、在留期間更新(入管法21条)の審査では素行の面で不利な事情として扱われます。
母国では護身のために携帯していた、仕事で使う道具をそのまま車に積んでいた、料理に使う包丁を買って帰る途中だった。日本で銃刀法違反に問われる方の多くは、攻撃の意図をもって刃物を持っていたわけではありません。それでも、法律は正当な理由のない携帯そのものを禁じており、意図の有無だけでは説明がつきません。
この記事は、職務質問をきっかけに所持を指摘された方、そして家族が突然逮捕されたと知らされたご家族に向けたものです。刑事責任の重さの見取り図と、在留資格に及ぶ帰結を整理します。
想定される刑事手続の流れ
この類型の端緒は、圧倒的に職務質問です。所持品検査の適法性、任意性の限界が争点になることもありますが、実際には提示に応じた後で発覚するという経過をたどることが少なくありません。発覚すれば、その場で現行犯逮捕となる例が多く見られます。
逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求するかを判断します。この72時間で、なぜ持っていたのか、どこで手に入れたのか、他にも所持していないかという点が集中的に問われます。所持の目的についての説明は、その後の処分に直接影響するため、慎重な整理が必要です。
法定刑は、けん銃等の所持については1年以上10年以下の拘禁刑と定められており、刀剣類の所持や、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物の正当な理由のない携帯についても、それぞれ罰則があります。火薬類取締法は、花火を含む火薬類の所持や譲受けについて許可等の仕組みを設けており、大量の花火を保管していた事案が立件されることもあります。
外国人事件特有のリスク
けん銃等が関わる事案は法定刑が重く、実刑となれば入管法24条4号リの問題に直面します。同号は無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外され、一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。したがって、量刑をどこまで軽くできるかが在留に直結します。
他方、刃物の携帯にとどまる事案では罰金で終わることも多く、退去強制事由には直ちに結びつきません。しかし、在留期間の更新は入管法21条により審査され、素行の善良性が正面から問われます。前科の存在は更新の場面で不利な事情として扱われ、家族滞在や留学など、更新を重ねて生活する在留資格をもつ方にとっては、実際的な打撃となります。届け出た活動を行っていなかったと評価される場合には、在留資格の取消し(同法22条の4)の検討対象にもなります。
加えて、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとしてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を担当し、上訴審まで争ってきました。人から預かった荷物に含まれていた、車を借りたときから積まれていたといった事案では、この視点が具体的な主張につながります。
不起訴処分の重要性
刃物の携帯の事案では、正当な理由の有無が処分を分けます。購入した直後であったこと、業務で用いる必要があったこと、運搬の態様が適切であったことなどを、レシート、勤務先の書面、車内の状況の記録といった客観資料で裏づけることができれば、不起訴処分を求める余地は十分にあります。反対に、説明が後から変われば、正当な理由の主張は説得力を失います。
けん銃等が関わる事案では、入手の経緯、所持の目的、他者との関係の解明が中心になります。組織との結びつきが疑われる場合には、その否定を客観資料で示すことが不可欠です。いずれの場合も、生活状況、家族の状況、在留資格への影響を意見書にまとめ、検察官面談を求めて口頭でも説明します。執行猶予でよいと考えず、不起訴処分を目標に据えてください。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。所持の目的について、その場の思いつきで説明した内容は撤回が難しく、正当な理由の主張を自ら封じることになりかねません。方針が固まるまで話さないという選択は正当です。
第二に、早期の弁護人選任です。購入の記録や勤務先の証明といった有利な資料は、時間が経つほど収集が難しくなります。逮捕当日に動けるかどうかが分岐点です。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査の進行のために置かれています。「護身のため」という一語は、母国での生活習慣を背景とする説明であっても、日本語では攻撃的な目的を示唆する表現として受け取られかねません。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために働きます。
当事務所のご案内と解決事例
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当事務所では、弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートで刑事手続後もワンストップで対応します。
結語
持っていた物は、押収されればそのまま証拠になります。変えられるのは、なぜ持っていたのかを、どれだけ正確に、資料とともに示せるかという点だけです。その作業は、記憶が新しく資料が残っている初期のうちにしかできません。逮捕の連絡を受けた段階でご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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