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関税法違反|輸入禁制品と虚偽申告、そして「知らなかった」という主張

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関税法違反|輸入禁制品と虚偽申告、そして「知らなかった」という主張

関税法違反|輸入禁制品と虚偽申告、そして「知らなかった」という主張

2026/08/19

本記事の要点

  • 輸入してはならない貨物を輸入する行為には重い罰則が定められており、未遂も処罰の対象となります。
  • 偽りその他不正の行為により関税を免れる行為、無許可での輸入、申告内容の虚偽も、それぞれ独立して処罰されます。
  • 禁制品が薬物であった場合、入管法24条4号チにより有罪判決のみで退去強制事由に該当し、罰金や執行猶予でも同じです。
  • 薬物以外の禁制品では、入管法24条4号リの無期又は1年を超える拘禁刑という枠組みで判断され、刑の全部の執行を猶予された者は但書により除外されます。
  • 薬物関係では入管法5条1項5号により年限の定めのない上陸拒否となり、出国命令の制度も利用できません。

空港で荷物を開けられ、そのまま別室に案内された。頼まれてスーツケースを運んだだけなのに、なぜこうなるのか。中身は聞かされていなかった、報酬は運賃の名目だった。こうした説明から始まる相談は、決して少なくありません。国境をまたぐ物の移動は、税関という行政の手続でありながら、同時に刑事手続の入口でもあります。

この記事は、税関で身柄を確保された方のご家族、そして輸入の実務に関わる立場で疑いを向けられた方に向けたものです。関税法違反がどのように立件され、それが在留資格にどう跳ね返るのかを、条文に即して整理します。

想定される刑事手続の流れ

税関検査で禁制品が発見された場合、その場で告発され、警察や麻薬取締官による逮捕へと移行します。逮捕後は、警察が48時間以内に検察官へ送致し、検察官が24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求するかを判断します。この72時間は、荷物の受け取り方、依頼者との関係、報酬の性質について、本人が単独で説明を求められる時間です。

この類型の最大の争点は、中身についての認識です。捜査機関は、渡航の経路、滞在期間の短さ、渡航費用を誰が負担したか、荷物の外観と重量の不自然さ、通信履歴といった事情から、認識を推認しようとします。「知らなかった」という主張は、それ自体としては通りにくく、依頼を受けた経緯や生活状況を含む具体的な事実の積み重ねによってはじめて説得力を持ちます。

法定刑については、輸入してはならない貨物の輸入や、不正の行為による関税の免脱について重い刑が定められており、無許可の輸入や虚偽の申告についても罰則があります。取り扱った物の種類と数量によって、量刑の幅は大きく変わります。

外国人事件特有のリスク

禁制品の中身によって、在留への帰結は根本的に変わります。薬物であった場合、入管法24条4号チにより、薬物取締法令に違反して有罪の判決を受けたこと自体が退去強制事由となります。実刑である必要はなく、罰金でも、刑の全部の執行を猶予された場合でも、刑の免除であっても該当します。在留資格の種類も問いません。さらに入管法5条1項5号により、薬物関係の上陸拒否には年限の定めがなく、再入国の道は上陸特別許可に限られます。加えて、出国命令の制度は薬物に該当する方が利用できない仕組みです。

他方、偽ブランド品やわいせつ物のように薬物以外の禁制品である場合には、入管法24条4号リの枠組み、すなわち無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者という基準で判断されます。同号には但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は除外され、一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。この違いを理解しないまま方針を立てることはできません。

また、在留期間の更新は入管法21条により、在留資格の取消しは同法22条の4により、刑事処分とは別に判断されます。そして、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を担当し、上訴審まで争ってきました。中身を知らされずに運搬を依頼された事案において、この論点は刑事と行政の双方で意味を持ちます。

不起訴処分の重要性

薬物が関わる事案では、有罪判決そのものが退去強制事由となるため、目標は明確に不起訴処分となります。執行猶予を得ても在留は守れません。この構造を最初に理解しておくことが、方針決定の出発点です。

起訴前の活動としては、依頼を受けた経緯の徹底的な解明が中心になります。誰から、いつ、どのような説明を受けたのか。渡航費用と報酬は誰が負担し、いくらだったのか。断ろうとした事実はあるか。生活の困窮や債務の存在といった背景はどうか。これらを通信履歴や送金記録と突き合わせ、認識がなかったこと、あるいは認識の程度が限定的であったことを裏づけます。加えて、生活状況と在留への影響を意見書にまとめ、検察官面談を求めて説明します。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。荷物の中身を知らなかったという主張と矛盾しかねない断片的な供述は、認識を推認する材料になります。方針が固まるまで話さないという選択は、正当な権利の行使です。

第二に、早期の弁護人選任です。税関での身柄確保から逮捕、勾留までの流れは速く、初回接見の時期がその後の主張の幅を決めます。ご家族が連絡を受けた段階で、すぐにご相談ください。

第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査の進行のために置かれた存在です。「預かった」「運んだ」「渡された」といった表現の差は、認識の認定に直結します。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために働きます。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所の関連する解決事例をご紹介します。

  • 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得しました。認識の推認をめぐる攻防に正面から取り組んだ事案です。
  • 国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象となる事件、世界的に報道された重大事件についても対応実績があり、中国籍の方の重大事件にも多数関与してきました。
  • 観光目的で来日した後に在留資格を失い、不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど得られない状況で有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。

当事務所では、弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートで刑事手続後もワンストップで対応します。

結語

荷物は物として押収され、鑑定されます。しかし、それを運んだ人が何を聞かされ、どのような立場で頼まれたのかは、押収品からは出てきません。運んだ経緯を証拠に即して語れる状態を作ることが、この類型の弁護の中心です。空港からの連絡を受けた段階でご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

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