医薬品医療機器等法違反|無許可の輸入・販売と、薬物法令との決定的な違い
2026/08/19
本記事の要点
- 医薬品を販売する業には許可が必要であり、無許可での販売や、承認を受けていない医薬品の販売・授与・広告は処罰の対象になります。
- 個人使用目的の輸入と、販売目的の輸入とでは扱いが全く異なり、数量や広告の有無から販売目的が推認されます。
- 薬機法違反は、入管法24条4号チが定める薬物取締法令の列挙には含まれず、退去強制の可否は主に24条4号リの枠組みで判断されます。
- ただし成分が麻薬等に該当すれば麻薬及び向精神薬取締法違反となり、4号チにより有罪判決のみで退去強制事由に該当します。罰金や執行猶予でも同じです。
- 薬物法令に触れた場合、入管法5条1項5号により期間の定めのない上陸拒否となり、出国命令の制度も使えません。
中国から化粧品や健康食品を取り寄せて知人に分ける。痩身や育毛をうたう錠剤を微信のグループで紹介し、代金を受け取る。医薬品の個人輸入を代行する。こうした行為は、生活の延長として始まることが多く、違法性の意識をもたないまま規模が大きくなりがちです。しかし日本では、医薬品の流通は許可と承認の制度によって厳格に管理されており、その外側での販売は刑事事件になります。
この記事では、薬機法違反として立件される場面を整理したうえで、外国籍の方にとって決定的に重要な区別、すなわち薬機法違反と薬物取締法令違反とで在留への帰結がまったく異なるという点を、条文に即して説明します。
想定される刑事手続の流れ
端緒は、税関での発見、購入者からの相談、行政指導を経た告発、あるいはインターネット上の広告の把握です。捜査機関は、仕入れの経路、販売の相手方と回数、代金の受領状況、広告の文言を確認し、業として行っていたかどうかを評価します。
逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留の請求を判断します。この72時間で、販売目的の有無や、商品の性質をどこまで認識していたかについての見立てが固まります。「効能があると言われて信じていた」「日用品だと思っていた」という説明は、早い段階で客観資料とともに提示しなければ、後から通りにくくなります。
無許可での販売業や、承認を受けていない医薬品の販売・授与・広告には、いずれも拘禁刑を含む罰則が定められています。営利目的で反復していた場合には、量刑が一段重く評価されます。
外国人事件特有のリスク
ここが本記事の核心です。入管法24条4号チは、薬物取締法令に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由としており、有罪判決のみで足ります。罰金でも、刑の全部の執行を猶予された場合でも、刑の免除であっても該当します。在留資格の種類も問いません。これに対し、薬機法違反はこの列挙に含まれておらず、退去強制の可否は主として24条4号リ、すなわち無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者という枠組みで判断されます。同号には但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。
したがって、取り扱った物の成分が何であったかによって、結論は劇的に変わります。仮に成分が麻薬に該当すれば、麻薬及び向精神薬取締法違反として4号チに直結し、さらに入管法5条1項5号により、薬物関係では年限の定めのない上陸拒否となります。この場合、再び日本に入る道は上陸特別許可に限られます。加えて、出国命令の制度は薬物関係の該当者を利用できない仕組みになっています。
あわせて、在留期間の更新は入管法21条により、在留資格の取消しは同法22条の4により、それぞれ別個に判断されます。刑事処分が軽くても在留を失う経路は残ります。そして、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を担当し、上訴審まで争ってきました。何を売っていたのかを知らされていなかった事案では、この視点が重要な意味を持ちます。
不起訴処分の重要性
成分の鑑定結果が出る前後は、弁護活動にとって最も重要な時期です。押収品の鑑定を待って対応を決めるのではなく、仕入れの経路、商品説明の内容、購入者への説明の文言を早期に整理し、認識の内容を客観資料で裏づける準備を進めます。販売の規模が小さく、利益がわずかで、購入者に健康被害が生じていない事案では、不起訴処分を求める余地は十分にあります。
具体的な活動としては、販売の中止と在庫の廃棄、購入者への返金と回収、再発防止の体制の明示、そして在留資格への影響を含む生活状況を記した意見書の提出です。検察官面談を求め、書面で伝えきれない経緯を口頭でも説明します。執行猶予でよいという発想を捨て、不起訴処分を目標に据えてください。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。仕入先や購入者について曖昧な記憶のまま答えると、販売規模が過大に認定される危険があります。方針が定まるまで話さないことは、正当な権利行使です。
第二に、早期の弁護人選任です。在庫や記録の扱い、購入者への対応は、時間が経つほど選択肢が狭まります。逮捕前の段階で相談できていれば、対応の幅は大きく広がります。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査の進行のために置かれています。中国語の商品名や効能の表現をどう日本語にするかで、薬効の標榜があったかどうかの判断が動きます。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために働きます。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所の関連する解決事例をご紹介します。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。物の性質についての認識が争点となる事件で、客観証拠から検察官の主張を崩した事案です。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
- 過去の逮捕報道や前科に関する報道について、削除に成功した事例があります。刑事手続の終了後に残る不利益への対応も継続的に取り扱っています。
当事務所では、弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートで刑事手続後もワンストップで対応します。
結語
同じように見える箱でも、中身の成分が違えば、在留への帰結はまったく別のものになります。まず何を扱っていたのかを正確に把握し、そのうえで認識の内容を証拠に即して示すこと。それが初動の中身です。連絡を受けた段階でご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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