舟渡国際法律事務所

犯罪収益移転防止法違反|銀行口座の譲渡・売買と外国籍の方の在留への影響

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犯罪収益移転防止法違反|銀行口座の譲渡・売買と外国籍の方の在留への影響

犯罪収益移転防止法違反|銀行口座の譲渡・売買と外国籍の方の在留への影響

2026/08/19

本記事の要点

  • 自分名義の預貯金通帳やキャッシュカードを他人に譲り渡す行為は、それ自体が犯罪収益移転防止法違反として処罰されます。
  • 譲渡目的を隠して口座を開設した場合には、金融機関に対する詐欺として別途立件されることがあります。
  • 入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、刑の全部の執行を猶予された者は但書により除外されます。
  • 退去強制事由に該当しない場合でも、在留期間更新(入管法21条)や在留資格の取消し(同法22条の4)で在留を失う経路が残ります。
  • 起訴前に不起訴処分を得ることが、在留を維持するための最も現実的な目標です。

「日本を離れるので、使わなくなる口座を買い取りたい」。「アルバイトの給料を振り込むために、名義を貸してほしい」。留学生や技能実習の在留資格をもつ方、あるいは帰国を控えた方に対して、こうした申し出がなされることがあります。口座は自分のものだから、どう扱っても自由ではないか。そう考えるのも自然ですが、日本の法律の立場は明確に異なります。

口座は、金融機関との間の本人確認を前提に開設される仕組みであり、その名義の一致こそが制度の根幹です。名義を移す行為は、単なる私的な貸し借りではなく、犯罪収益の移転を防ぐ制度そのものを損なう行為として、法律が正面から禁じています。この記事では、口座をめぐる事件の展開と、在留資格への波及を整理します。

想定される刑事手続の流れ

多くの場合、端緒はその口座が別の事件で使われたことです。特殊詐欺の被害金の入金先として口座が浮上し、名義人が捜査線上に現れます。名義人としては事件を知らないまま、ある日突然の呼び出しや逮捕という形で事態を知ることになります。

逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官に送致し、検察官は24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留を請求するかを判断します。この72時間のうちに、どこまで知っていたのか、報酬はいくらだったのか、相手は誰かという核心が問われます。ここで一人で答えることの危険は大きく、方針を定める前の供述が後の共犯認定の根拠になり得ます。

口座の譲渡等については近年、罰則の在り方が見直されており、罰金にとどまらず拘禁刑が選択される事案が現実に存在します。加えて、譲渡した口座が特殊詐欺に使われた場合には、詐欺の幇助あるいは共同正犯としての立件が検討され、この場合の法定刑は格段に重くなります。名義を渡しただけという認識と、法律上の評価との間には、大きな隔たりがあります。

外国人事件特有のリスク

まず入管法24条4号リです。同号は無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同じです。口座譲渡単独の事案で1年を超える実刑に至る例は多くありませんが、特殊詐欺の共犯として起訴された場合には状況が変わります。

次に、退去強制を免れても在留が続くとは限らないという点です。在留期間の更新は入管法21条により審査され、素行の善良性が正面から評価されます。留学の在留資格をもつ方が学業を行わず口座の売買に関わっていたと評価されれば、在留資格の取消し(同法22条の4)の検討対象にもなります。刑事処分が軽くても、在留の側では重い結論が出ることがあるということです。

また、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする実務が長く続いてきました。当事務所は、この実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を担当し、上訴審まで争ってきました。名義を渡した経緯に強い圧力があった事案、内容を知らされていなかった事案では、この視点が具体的な主張になります。

不起訴処分の重要性

この類型では、起訴前の弁護活動が処分を大きく動かします。まず、口座を渡した経緯の解明です。どのような関係の相手から、どのような言葉で持ちかけられたか。報酬の有無と金額。帰国予定や生活困窮といった背景。断ろうとした事実。これらを時系列で整理して提出することで、単なる利得目的の売却とは異なる評価が可能になります。

次に、被害回復です。譲渡した口座が特殊詐欺に使われた場合、被害者は現に存在します。可能な範囲で被害弁償や示談を進めることは、共犯性の判断にも量刑にも影響します。さらに、金融機関に対する説明と口座の凍結解除の手続、再発防止の体制についても、資料として整理できます。これらを意見書にまとめ、検察官面談を求めて口頭でも説明します。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。「軽い話だから正直に言えばすぐ帰れる」と思って話した内容が、そのまま共犯性を基礎づける材料になることがあります。方針が固まるまで話さないという判断は、正当な権利行使です。

第二に、早期の弁護人選任です。口座の凍結、家族への連絡、勤務先や学校への対応など、身柄拘束と同時に生活面の問題が一斉に生じます。弁護人が入ることで、これらを並行して処理できます。

第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査の進行のために置かれた存在です。「売った」「貸した」「預けた」という日本語の違いは、中国語からの訳出の過程で容易に混同され、その一語が認識の認定を左右します。弁護人が同行させる通訳は、依頼者本人のために働きます。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所の関連する解決事例をご紹介します。

  • 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を具体的に主張し、不起訴処分を獲得しました。外形的な行為だけを見れば不利な事案でした。
  • 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べ対応を一貫して管理し、主張立証を積み重ねて全件について不起訴処分を獲得しました。
  • 観光目的で来日した後に在留資格を失い、不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど得られない状況で有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。

当事務所では、弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートにより、刑事手続の後の在留手続までワンストップで対応します。

結語

口座を渡した理由は人それぞれです。生活に困っていた、相手を信用していた、断れる関係ではなかった。そうした事情は、記録に残さなければ存在しなかったことになります。警察から連絡が来ている段階でも、できることは残っています。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

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本記事の中国語版(简体字)はこちら

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