児童買春・児童ポルノ禁止法で捜査を受けたとき|外国籍の方の防御と在留資格
2026/08/19
本記事の要点
- 児童とは18歳未満の者を指し、対償を供与し又はその約束をして性交等をすれば児童買春となり、5年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金の対象となる。
- 児童ポルノは、自己の性的好奇心を満たす目的での所持でも1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、不特定多数への提供や公然陳列は5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金である。
- 相手が18歳未満であるという認識の有無が最大の争点となり、年齢確認の方法とやり取りの記録が結論を左右する。
- 令和5年に性的姿態等撮影等処罰法が施行され、撮影行為が独立の犯罪として整理された。児童が被写体の場合は児童ポルノ製造との関係も問題となる。
- 実刑で1年を超える拘禁刑となれば入管法24条4号リに当たりうるが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれる。
ある日、複数の捜査員が自宅を訪れ、スマートフォンとパソコンが押収された。相手は成人だと聞いていた。交流サイトで知り合っただけで、年齢を疑う理由はなかった。この分野の相談は押収の後に始まることがほとんどで、端末の解析には数か月を要します。
この記事は、この類型の捜査を受けたときに防御の柱がどこにあり、在留資格にどう波及するのかを整理します。個別の事件について刑事責任を論じるものではありません。
法律の構造と争点
児童買春・児童ポルノ禁止法は、18歳未満の者を児童とし、対償を供与し又はその供与の約束をして性交等をする行為を児童買春として処罰します。法定刑は5年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。児童ポルノについては、自己の性的好奇心を満たす目的での所持が1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金、第三者への提供が3年以下の拘禁刑、不特定多数への提供や公然陳列が5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金とされ、製造にも罰則があります。
防御の中心は、相手が18歳未満であるという認識の有無です。年齢確認をどのように行ったか、相手が示した情報は何か、外見や会話の内容はどうであったか。これらは押収された端末の記録に残っており、捜査機関が先に把握します。記憶が鮮明なうちに時系列を整理し、弁護人と共有してください。なお令和5年に性的姿態等撮影等処罰法が施行され、撮影行為が独立の犯罪として整理されました。児童が被写体である場合には、児童ポルノ製造との関係が問題となります。
想定される刑事手続の流れ
捜索差押えの後、任意の取調べが続き、解析の結果を踏まえて逮捕に至るという流れが典型です。逮捕されれば、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを判断します。この72時間で身柄の帰趨が決まり、勾留されれば延長を含めて20日程度の拘束が続きます。
この類型では、余罪の捜査により再逮捕が繰り返されます。身体拘束が長期化すれば、勤務先を失い、在留資格に対応する活動が止まります。刑事弁護と並行して生活基盤の維持を設計する必要があります。
外国人事件特有のリスク
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。この類型では執行猶予付き判決も一定数あり、直ちに退去強制となるとは限りません。もっとも、在留が安全という意味ではありません。
在留期間の更新(入管法21条)は権利ではなく裁量による許可であり、素行の善良性は重要な考慮要素です。この類型の前科は、更新、永住許可、帰化のいずれの審査でも重く扱われます。また、長期の身体拘束や解雇によって在留資格に対応する活動を継続して3か月以上行わなくなれば、在留資格の取消し(入管法22条の4)も問題となりえます。
なお、退去強制事由の該当性判断について、実務は長く故意や過失を要しないという立場を前提としてきました。当事務所はこの考え方に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。行政手続の側にも、争うべき論点は残されています。
不起訴処分の重要性
不起訴なら前科は生じず、拘禁刑に処せられた者にも当たりません。他方、薬物事犯のように有罪判決そのものが退去強制事由となる類型(入管法24条4号チ)があり、この場合は罰金でも執行猶予でも該当します。執行猶予が付けば在留が守られる、という一般化は成り立ちません。
不起訴を目指す活動としては、年齢の認識に関する客観的な裏づけの収集、やり取りの全体を通じた文脈の提示、被害者側との示談交渉、再発防止のための治療やカウンセリングの開始、そして検察官との面談と意見書の提出が挙げられます。示談は、被害者の保護者との間で行われることが多く、被害者特定事項の秘匿に配慮した進め方が必要で、本人や家族が直接行うことは適切ではありません。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。年齢の認識という主観的な要件は、本人の一言で認定されます。「若く見えるとは思った」という程度の発言が、未必の故意の根拠として扱われることがあります。
第二に、早期の弁護人選任です。押収された端末の解析が進む間に、こちらでも時系列と資料を整えておく必要があります。逮捕直後の72時間は国選弁護人が付かない時間帯です。
第三に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳人は捜査を進めるために配置された存在で、依頼者本人のために動く通訳とは立場が異なります。年齢や外見に関する微妙な表現は、訳し方で認識の程度が違って伝わります。当事務所は中国語専属通訳を弁護活動の内側に置いています。
当事務所のご案内と解決事例
- 盗撮被害者の代理人として示談金300万円を獲得した実績があり、性的な被害をめぐる示談がどのような要素で動くのかを、双方の立場から把握しています。
- 裁判員裁判対象事件や国際的な刑事事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があり、中国籍の方の重大事件にも多数対応しています。
- 過去の逮捕報道・前科報道の削除に成功した実績もあり、事件後の生活再建まで見据えて対応します。
ご依頼をお受けした事件は、舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)の弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は、提携行政書士と連携してワンストップで対応します。
おわりに
この類型は社会的な非難が強く、本人が萎縮したまま手続が進みがちです。しかし、認識の有無という争点は、記録によって初めて立証できます。押収を受けた段階で、何が端末に残っていたのかを弁護人と整理してください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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