舟渡国際法律事務所

売春防止法違反と入管法24条4号ヌ|刑事処分がなくても退去強制事由となる類型

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売春防止法違反と入管法24条4号ヌ|刑事処分がなくても退去強制事由となる類型

売春防止法違反と入管法24条4号ヌ|刑事処分がなくても退去強制事由となる類型

2026/08/19

本記事の要点

  • 売春防止法は売春行為そのものに罰則を置かず、処罰されるのは勧誘、周旋、場所の提供、管理売春などの周辺行為である。
  • 管理売春(業として売春をさせる行為)は10年以下の拘禁刑及び30万円以下の罰金と重い。
  • 入管法24条4号ヌは、売春に直接関係のある業務に従事する者を退去強制事由とする。刑事処罰も有罪判決も要件ではない。
  • したがって、不起訴処分を得ても入管手続は別に進行する。刑事と入管を同時に見なければ判断を誤る。
  • 出国命令(入管法24条の3)は4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことが要件であり、4号ヌに当たれば使えない。

知人に紹介された仕事が、実際には性的なサービスを伴うものだった。店の受付や送迎を手伝っていただけだと考えていた。この分野の相談は、本人の認識と法律上の評価が大きくずれたまま進みがちです。そして外国籍の方の場合、刑事処分がどうなるかとは別に、在留資格が失われる筋道が用意されています。

この記事は、売春防止法違反として捜査を受けている方、あるいはご家族が摘発されたと聞いて不安を抱えている方に向けて、制度の構造を整理するものです。個別の事件について刑事責任を断定するものではありません。

売春防止法は何を処罰しているのか

売春防止法は売春を禁止していますが、売春をした本人に対する罰則は置かれていません。処罰の対象となるのは、公衆の目に触れる方法での勧誘、相手方の周旋、困惑させて売春をさせる行為、対償の収受、契約、場所の提供、そして業として売春をさせる行為です。中でも管理売春は10年以下の拘禁刑及び30万円以下の罰金と重く、店舗の運営に関与していた者が広く対象になります。

実務では、送迎、シフト管理、集金といった補助的な業務がどこまで周旋や管理に当たるかが争われます。本人が「事務の手伝いだった」と考えていても、業務の全体像から評価されれば結論は変わります。整理しないまま取調べに応じれば、断片的な供述が組み合わされて役割が確定します。

想定される刑事手続の流れ

摘発は、店舗への立入りや、客からの情報提供、決済記録の解析を端緒として始まります。逮捕されれば、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを判断します。この72時間で身柄の見通しが決まります。組織的な運営が疑われる事案では、別件による再逮捕で身体拘束が長期化することもあります。

並行して、入管による調査が始まることがあります。順番は決まっていません。身体拘束が解かれた直後に収容令書が執行される場面も現実に存在します。

外国人事件特有のリスク

この分野で最も重要なのが、入管法24条4号ヌです。同号は、売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事する者を退去強制事由と定めています。ここで求められているのは「従事する者」という事実であり、刑事処罰も有罪判決も要件ではありません。つまり、不起訴処分を得ても、この号による退去強制の可能性は残ります。

加えて、出国命令の制度も使えません。入管法24条の3は、出国命令の要件のひとつとして、24条4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことを挙げています。4号ヌに該当すると判断されれば、自ら出頭して短期間で帰国するという選択肢が閉ざされ、退去強制手続によることになります。退去強制を受ければ原則5年、過去に退去強制歴があれば10年の上陸拒否期間が生じます。

もっとも、争う余地がないわけではありません。「業務に従事する者」という評価そのものを、雇用の形態、業務内容、期間、報酬の性質から争えます。退去強制事由の該当性判断について、実務は長く故意・過失を要しないという前提をとってきましたが、当事務所はこれに対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し上訴審まで争ってきました。また、在留期間の更新(入管法21条)は裁量による許可であり素行が問われ、活動を3か月以上行わなくなれば在留資格の取消し(入管法22条の4)も問題となります。なお在留を求める場合には、家族関係や在留の経緯を丁寧に立証し、在留特別許可の判断を求めていくことになります。

不起訴処分の重要性

刑事の側では、不起訴処分を得ることがなお決定的です。不起訴なら前科は生じず、入管法24条4号リが定める拘禁刑に処せられた者にも当たりません。同号には但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。他方、薬物事犯のように有罪判決そのもので退去強制事由となる類型(入管法24条4号チ)もあり、罰金や執行猶予でも該当します。号ごとに構造が違います。

不起訴を目指す活動としては、業務内容の客観的な裏づけの収集、指示関係と報酬の流れの整理、脅迫的な状況や困窮につけ込まれた事情の主張、そして検察官との面談と意見書の提出が挙げられます。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。この類型では、供述が刑事処分だけでなく、入管手続における「従事」の認定にも直結します。

第二に、早期の弁護人選任です。逮捕直後の72時間は国選弁護人が付かない時間帯であり、入管手続まで見通した方針を立てられるかが分かれ目です。

第三に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳人は捜査を進めるために配置された存在で、依頼者本人のために動く通訳とは立場が異なります。業務内容を説明する言葉は、訳し方で役割の重さが変わります。当事務所は中国語専属通訳を弁護活動の内側に置いています。

当事務所のご案内と解決事例

  • 観光目的で来日し日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、有利な証拠を集めて1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
  • 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者につき、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。
  • ストーカー規制法4条1項の文書警告をめぐる控訴事件(令和6年6月26日大阪高裁判決)を担当し、警告の処分性という論点は、その後、学術誌で多数言及・検討されています。

ご依頼をお受けした事件は、舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)の弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は、提携行政書士と連携してワンストップで対応します。

おわりに

この分野は、刑事処分が軽く済んでも安心につながらない、数少ない類型です。刑事の入口の段階から、入管手続でどう主張するかを見据えて資料を集めておく必要があります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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