転売・リユースと古物営業法|無許可営業に問われないための線引き
2026/08/19
本記事の要点
- 古物を買い取って売ることを反復継続すれば古物営業に当たり、公安委員会の許可が必要となる。無許可営業は3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。
- 自分が使っていた物を売るだけなら許可は不要だが、仕入れて売る形態になった時点で線を越える。
- 許可を得ても、取引相手の本人確認、帳簿への記録、不正品の疑いがあるときの申告という義務が続く。
- 盗品と知って買い受ければ盗品等有償譲受け罪となり、10年以下の拘禁刑と、無許可営業よりはるかに重い。
- 在留資格との関係では、資格外活動(入管法24条4号イ・ヘ)と、従業員を使う側の不法就労助長(同法24条3号の4)が問題となる。
フリマアプリや越境ECの普及で、日本で仕入れた品物を転売する働き方が身近になりました。本人には副業や小遣い稼ぎの感覚でも、日本の法律は、その反復継続を「古物営業」と評価します。
この記事は、転売やリユースに関わっている方、あるいは無許可営業で取調べを受けている方に向けて、線引きと在留への影響を整理します。
どこからが古物営業なのか
古物営業法にいう古物とは、一度使用された物品、使用のために取引されたが未使用の物品、これらに幾分の手入れをした物品を指します。新品を仕入れて売るだけなら古物営業ではありませんが、個人や店から買い取った中古品を売る場合は該当します。自分が使っていた物を処分するだけであれば許可は不要です。分かれ目は、転売目的の買取りが反復継続しているかどうかです。
営業所の所在地を管轄する公安委員会の許可を受けずに営業すれば、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象となります。他人に名義を貸す行為も同様に処罰されます。許可後も、取引相手の本人確認、帳簿への記録と保存、不正品の疑いがあるときの警察への申告といった義務が課されます。盗品であると知りながら買い受ければ、盗品等有償譲受け罪として10年以下の拘禁刑という重い評価を受けます。
想定される刑事手続の流れ
この類型は盗品の流通を追う捜査の過程で浮上することが多く、ある日突然、自宅や倉庫の捜索を受け、在庫と帳簿、スマートフォンが押収されます。逮捕されれば、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを判断します。この72時間で身柄の見通しが決まります。
72時間の間に弁護人が動けば、営業実態を示す資料、居住と就労の安定を示す資料、身元引受人を揃えて勾留の回避を求めることができます。この時期を空白にすると、在庫の管理も取引先への説明もできません。
外国人事件特有のリスク
まず在留資格そのものの問題があります。「技術・人文知識・国際業務」「留学」「家族滞在」などの在留資格で転売業を営めば、資格外活動です。資格外活動を専ら行っていると評価されれば入管法24条4号イに、資格外活動の罪により拘禁刑に処せられれば同号ヘに当たります。留学生の資格外活動許可には週28時間という上限があり、それを超えた稼働は許可の範囲外です。事業として続けるのであれば「経営・管理」への変更を検討すべきです。
次に、雇う側の問題です。無許可の在留資格の者を働かせれば、不法就労助長として入管法24条3号の4の退去強制事由に当たります。この号は行為があれば足り、刑事処罰を受けたかどうかを問いません。立件されなかったから安心だ、という理解は成り立ちません。
刑罰との関係では、入管法24条4号リが無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。他方で、在留期間の更新(入管法21条)は裁量による許可であり、素行の善良性が問われます。身体拘束や事業の停止により在留資格に対応する活動を3か月以上行わなくなれば、在留資格の取消し(入管法22条の4)も問題となりえます。なお実務は長く、退去強制事由の該当性に故意・過失を要しないという前提をとってきました。当事務所はこれに対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
この類型で目指すべきは不起訴処分です。不起訴なら前科は生じず、拘禁刑に処せられた者にも当たりません。他方、薬物事犯のように有罪判決そのものが退去強制事由となる類型(入管法24条4号チ)があり、罰金でも執行猶予でも該当します。処分の軽さがそのまま在留の安全を意味するわけではありません。
具体的な活動としては、取引の全体像を整理して営業性の評価を争うこと、仕入れ先の身元確認の記録を提出して盗品性の認識を否定すること、直ちに許可申請に着手して是正を示すこと、被害品がある場合の返還と弁償、そして検察官との面談と意見書の提出が挙げられます。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。「いつから」「何件くらい」という質問に感覚で答えると、その数字が営業性と犯行期間の認定に使われます。
第二に、早期の弁護人選任です。逮捕直後の72時間は国選弁護人が付かない時間帯であり、押収を免れた資料の保全も、この時期にしかできません。
第三に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳人は捜査を進めるために配置された存在で、依頼者本人のために動く通訳とは立場が異なります。「仕入れる」「預かる」といった商取引の言葉は、訳し方で関与の性質が変わります。当事務所は中国語専属通訳を弁護活動の内側に置いています。
当事務所のご案内と解決事例
- 取り込み詐欺の被害に遭った卸業の依頼者につき、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。物品の流通と決済の記録を読み解く経験があります。
- 特殊詐欺の出し子(現金自動預払機から金銭を引き出す役割を指す用語)に関わったとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。
- 観光目的で来日し日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、1回の申請で在留特別許可を得ました。
ご依頼をお受けした事件は、舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)の弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は、提携行政書士と連携してワンストップで対応します。
おわりに
転売自体は悪い行為ではありません。問題は、許可という手続を踏まないまま規模が大きくなり、気づいたときには刑事事件になっているという進み方にあります。呼出しを受けた段階でも、まだできることは残っています。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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