自転車の交通違反と青切符|2026年4月からの新制度と外国籍の方が注意すべき点
2026/08/19
本記事の要点
- 令和8年(2026年)4月1日から、16歳以上の自転車運転者に交通反則通告制度(いわゆる青切符)が適用されている。
- 反則金を期限内に納付すれば公訴は提起されず前科は生じないが、納付しなければ通常の刑事手続に移行する。
- 自転車の酒気帯び運転は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金で、青切符の対象外である。
- 反則金の納付は前科ではないため入管法24条4号リの退去強制事由には当たらないが、罰金前科が積み重なれば更新審査に影響する。
- 職務質問では在留カードの提示を求められ、防犯登録の名義が異なる自転車の使用は別の嫌疑を招く。
通勤や配達で自転車を使う方は多く、日本での生活に自転車は欠かせません。ところが自転車は道路交通法上の「車両」であり、歩行者と同じ感覚で運転すればそのまま違反になります。信号無視や無灯火は従来から違反でしたが、注意で済まされる場面が多く、感覚が緩みがちでした。
令和8年4月1日から、この状況は変わりました。16歳以上の自転車運転者に対し、自動車と同じような反則通告制度が適用されています。以下、新制度と在留資格との関係を整理します。
青切符とは何か、何が変わったのか
交通反則通告制度は、比較的軽微な違反について反則金を納付すれば公訴を提起しないという仕組みです。対象は16歳以上の運転者で、100を超える違反行為が列挙されています。信号無視、一時不停止、通行区分違反、二人乗り、無灯火などが典型です。反則金の額はおおむね5,000円から12,000円程度の範囲で定められています。納付しないまま期限を過ぎれば通常の刑事手続に移り、罰金となれば前科が残ります。
青切符では終わらない違反
令和6年11月1日以降、自転車についても重い罰則が整備されました。自転車の酒気帯び運転は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であり、自転車や酒類を提供した者にも罰則があります。運転中の携帯電話使用は6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金、それにより交通の危険を生じさせた場合は1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。これらは青切符の対象外で、通常の刑事手続で処理されます。
想定される刑事手続の流れ
青切符の対象となる違反であれば、その場で告知書が交付され、後日、納付書が送られます。他方、酒気帯び運転や、事故を起こして重過失致死傷が問題となる事案では現行犯逮捕もありえます。逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留請求の可否を判断します。この72時間で身柄の見通しが決まる構造は、自動車事件と変わりません。
外国人事件特有のリスク
まず、反則金の納付は前科ではありません。したがって入管法24条4号リが定める「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」には当たりません。同号には但書があり、刑の全部の執行を猶予された者も除かれます。青切符の範囲で処理される限り、退去強制事由に直結することはないと考えてよいでしょう。
問題はその先です。反則金を納付せず刑事手続に移行し、罰金前科が積み重なれば、在留期間の更新(入管法21条)の審査における素行の評価に影響します。更新は権利ではなく裁量による許可であり、永住許可や帰化の審査ではさらに厳しく見られます。身体拘束や解雇により在留資格に対応する活動を3か月以上行わなくなれば、在留資格の取消し(入管法22条の4)も問題となります。
もうひとつ、外国籍の方に固有の場面があります。自転車の違反を端緒とする職務質問では、身分確認として在留カードの提示を求められます。中長期在留者には在留カードの携帯義務があり、提示を拒めば罰則の対象です。防犯登録の名義が本人と異なる自転車を使用していると、占有離脱物横領や窃盗の嫌疑をかけられることもあります。資格外活動許可の範囲を超えて配達業務に従事していた場合には、入管法24条4号イ(資格外活動の専従)や、資格外活動の罪により拘禁刑に処せられた場合の同号ヘが問題となりえます。なお実務は長く、退去強制事由の該当性に故意・過失を要しないという前提をとってきました。当事務所はこれに対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
青切符の範囲を超えた事案では、不起訴処分を得られるかどうかが決定的です。不起訴であれば前科は残らず、更新審査で説明すべき事情も生じません。他方で、薬物事犯のように有罪判決そのものが退去強制事由となる類型(入管法24条4号チ)もあり、罰金や執行猶予でも該当します。
自転車事故で不起訴を目指すには、被害者との示談交渉、治療費と休業損害の確定、謝罪文の作成と翻訳、再発防止策の提示、検察官への意見書提出という一連の作業が必要です。起訴前の期間にどこまで積み上げられるかが結論を分けます。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。事故直後の混乱の中で、事実関係を確認しないまま「自分が悪かった」と述べてしまう例が多くあります。
第二に、早期の弁護人選任です。青切符が交付された場面でも、その違反の存否に争いがあるなら納付前に相談する価値があります。納付は違反を前提とした処理だからです。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査を進めるために置かれており、依頼者本人のために動く通訳とは立場が異なります。当事務所には中国語専属通訳が常駐しています。
当事務所のご案内と解決事例
- 特殊詐欺の出し子(現金自動預払機から金銭を引き出す役割を指す用語)に関わったとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。
- ストーカー規制法4条1項の文書警告をめぐる控訴事件(令和6年6月26日大阪高裁判決)を担当し、警告の処分性という論点は、その後、学術誌で多数言及・検討されています。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められています。
ご依頼をお受けした事件は、舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)の弁護士松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は、提携行政書士と連携してワンストップで対応します。
おわりに
在留資格を持つ方にとっては、小さな違反の積み重ねが、数年後の更新や永住申請の場面で説明を求められる材料になります。ご自身の日常の走り方を一度確認してみてください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------