舟渡国際法律事務所

傷害致死と裁判員裁判|外国人被告人の防御をどう組み立てるか

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傷害致死と裁判員裁判|外国人被告人の防御をどう組み立てるか

傷害致死と裁判員裁判|外国人被告人の防御をどう組み立てるか

2026/08/19

本記事の要点

  • 傷害致死罪(刑法205条)は3年以上の有期拘禁刑です。罰金刑はなく、故意の犯罪行為により人を死亡させた罪として裁判員裁判の対象になります。
  • 争点は、暴行の事実、傷害との因果関係、死亡との因果関係、そして正当防衛や過剰防衛の成否に分かれます。
  • 裁判員裁判では、法律家ではない裁判員に向けて事実を伝えることが求められます。通訳を介した供述の質が、そのまま心証に影響します。
  • 実刑となる可能性が高く、入管法24条4号リが正面から適用されます。但書で除外されるのは刑の全部の執行を猶予された場合に限られます。
  • 実刑を受けた場合、在留特別許可(入管法50条)は加重された要件のもとで判断されます。刑事と入管を一体で設計する必要があります。

けんかの延長で相手を殴ったところ、相手が転倒して頭を打ち、その後亡くなった。殺すつもりなど全くなかった。それでも日本の法制度は、この結果を傷害致死として扱います。ご本人にとっても、ご家族にとっても、事態の重さを理解するまでに時間がかかる類型です。

本稿は、中国本土にいらっしゃるご家族に向けても書いています。日本の裁判員裁判がどのような手続で、何が争われ、弁護人が何をするのかを知っていただくことが、遠くから支える第一歩になります。

傷害致死で争われるもの

刑法205条は、身体を傷害し、よって人を死亡させた者を3年以上の有期拘禁刑に処すると定めます。殺意は要件ではなく、殺意が認められれば殺人罪の領域に移ります。したがって弁護では、まず殺意の不存在を明確にし、そのうえで暴行の態様、傷害の内容、死亡との因果関係を精査します。転倒による頭部外傷の事案では、被害者側の既往症や医療的な経過が因果関係の判断に関わることもあり、証拠の吟味が欠かせません。また、相手方から先に攻撃を受けていた場合には、正当防衛や過剰防衛の成否が中心的な争点になります。

逮捕から勾留決定までの72時間

身柄を拘束されると、48時間以内に検察官へ送致され、その後24時間以内に勾留請求の可否が判断されます。重大事件では勾留と接見禁止がほぼ避けられませんが、この72時間の意味が失われるわけではありません。

むしろ、この段階で作られる供述が公判の土台になります。混乱したまま、あるいは通訳を十分に理解しないまま署名した調書は、裁判員の前で繰り返し取り上げられます。弁護人が逮捕当日に接見し、事実関係を整理し、取調べへの対応方針を決めることが、公判の見通しを左右します。

外国人事件特有のリスク|入管法を号ごとに読む

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とします。但書により除外されるのは、刑の全部の執行を猶予された場合と、一部猶予で実刑部分が1年以下の場合です。傷害致死の法定刑は3年以上の有期拘禁刑ですから、実刑となればこの号に該当します。

また、24条4号の2は一定の重大犯罪を号のなかで列挙しており、危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条・6条1項)や盗難特定金属製物品処分防止法22条の罪も含まれています。号ごとに対象が異なるため、自分の事案がどの号の射程にあるかを正確に把握する必要があります。身柄拘束が長期化すれば在留期限を過ぎ24条4号ロの不法残留に至りますし、薬物事犯の24条4号チは有罪判決さえあれば罰金でも執行猶予でも該当します。なお、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。

不起訴処分と量刑、そして在留特別許可

執行猶予でも退去強制事由に該当する類型が存在する以上、判決さえ軽ければ在留は守られるという理解は成り立ちません。傷害致死のような重大事件では、不起訴処分の獲得は容易ではありませんが、正当防衛が成立する事案や因果関係に重大な疑義がある事案では、起訴前の主張立証に意味があります。弁護人は、検察官との面談、意見書の提出、遺族への謝罪と示談の可否の検討を進めます。

実刑となった場合には、在留特別許可の手続が次の局面になります。入管法50条2項は収容令書により収容された者や監理措置決定を受けた者に申請権を認め、3項は退去強制令書の発付後は申請できないと定め、5項では考慮要素が法定化され、10項では不許可の場合に理由を付した書面が交付されます。ただし50条1項の但書により、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者等は加重された要件のもとで判断されます。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。重大事件では、初期の一言が公判の最後まで影響します。事実関係の記憶が整理される前に説明を重ねることは避けるべきです。

第二に、早期の弁護人選任です。裁判員裁判では公判前整理手続を経て争点と証拠が絞られます。捜査段階での準備が、その後の主張の幅を決めます。

第三に、通訳の質です。裁判員裁判では、被告人質問での受け答えが法律家ではない裁判員に直接伝わります。通訳が硬すぎても、砕けすぎても、人物像の印象は変わってしまいます。捜査機関が指定する通訳人は捜査手続のために置かれた存在であり、依頼者本人のために言葉を尽くす立場ではありません。弁護人が同行させる通訳は依頼者本人のために動きます。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行はいたしません。中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートで、刑事手続後の在留特別許可申請までワンストップでご対応します。

当事務所は、国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績を有しています。中国籍の方の重大事件にも多数対応してきました。裁判員に向けてどのように事実を伝えるかという設計を、通訳の運用まで含めて組み立てます。

また、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者につき、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した事案があります。加えて、冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後入管から在留特別許可が認められています。

結語

取り返しのつかない結果が生じた事案でも、何が起きたのかを正確に明らかにする作業は残ります。それは被告人のためだけでなく、亡くなった方とご遺族に対しても必要な作業です。ご家族が中国本土にいらっしゃる場合でも、ご依頼を受けて弁護人は動き出せます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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