暴力行為等処罰法で立件されたとき|数人共同の暴行・脅迫と共謀の認定
2026/08/19
本記事の要点
- 暴力行為等処罰に関する法律1条は、団体や多衆の威力を示し、又は凶器を示し、若しくは数人共同して暴行・脅迫・器物損壊の罪を犯した場合を、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金で処罰します。
- 単独であれば暴行罪や脅迫罪にとどまる行為が、数人共同という要素によって重く扱われます。
- その場にいただけだという説明が通るかどうかは、共謀の認定にかかっています。ここが弁護の主戦場です。
- 入管法24条4号リには但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は退去強制事由から除外されます。
- 共犯事件は身柄拘束が長期化しやすく、在留期限の徒過という別のリスクを生みます。
知人に呼ばれてついていった先で口論が起き、気づけば数人が相手を取り囲んでいた。自分は殴っていないし、止めようとしていた。それでも全員がまとめて逮捕され、同じ罪名で取調べを受ける。共犯事件では、こうした事態が現実に起こります。
日本で働く外国人の方が、同僚や同郷の知人との付き合いのなかで巻き込まれるケースが目立ちます。本稿は、ご本人だけでなく、従業員が共犯事件で身柄拘束された受入れ企業のご担当者にも読んでいただくことを想定しています。
数人共同という要件と共謀の認定
暴力行為等処罰に関する法律1条は、団体若しくは多衆の威力を示し、団体若しくは多衆を仮装して威力を示し、又は凶器を示し、若しくは数人共同して、刑法の暴行、脅迫、器物損壊の罪を犯した者を処罰します。数人共同とは、単に人数がいたという事実ではなく、共同して実行するという意思の連絡があったことを要すると理解されています。したがって弁護の焦点は、現場にいた事実と、共謀があったという評価とを切り離せるかどうかにあります。到着の経緯、事前の連絡内容、現場での言動、制止の有無、退去の時期。これらを具体的に主張立証していく作業が必要です。
逮捕から勾留決定までの72時間
身柄を拘束されると、48時間以内に検察官へ送致され、その後24時間以内に勾留請求の可否が判断されます。共犯事件では、罪証隠滅のおそれが強く主張され、勾留に加えて接見禁止決定が付くことが多くあります。
この72時間の意味は、共犯事件では一段と重くなります。他の関与者が先に供述を始めれば、その内容が事実の枠組みとして固まっていくためです。ご本人が自分の行動を正確に説明できる状態を作ることが急務であり、そのためには弁護人と通訳が早期に接見する必要があります。接見禁止が付いた場合でも、弁護人との接見は制限されません。
外国人事件特有のリスク|入管法を号ごとに読む
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とします。但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外され、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除外です。暴力行為等処罰法1条の法定刑は3年以下ですから、この号に直接該当する事案は多くありません。ただし、他の罪と併合されて量刑が重くなる事案では話が変わります。
むしろ現実的なのは、身柄拘束の長期化に伴う問題です。共犯事件では勾留が繰り返され、起訴後も身柄が続きます。その間に在留期間が満了すれば、24条4号ロの不法残留に至ります。就労資格の方は、勤務先を離れざるをえず、在留期間更新(入管法21条)で活動の実態が問われ、在留資格の取消し(同22条の4)も視野に入ります。留学の資格で学業を離れて就労に専従していれば24条4号イ、資格外活動の罪により拘禁刑に処せられれば同4号ヘです。薬物事犯の24条4号チは、有罪判決さえあれば罰金でも執行猶予でも該当します。なお、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
執行猶予でも退去強制事由に該当する類型がある以上、判決で猶予を得れば在留は安全だという理解は成り立ちません。共犯事件では、関与の程度に差があるのが通常であり、その差を処分に反映させることが弁護の要点になります。弁護人は、被害者との示談交渉に加え、防犯カメラ映像や通信履歴といった客観証拠から関与の実態を切り分け、検察官との面談で説明します。意見書には、共謀の不存在または限定的な関与、被害の回復、生活基盤、在留への影響を記載します。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。共犯事件では、自分を守るつもりの説明が他の関与者との整合を欠き、かえって信用性を失うことがあります。方針を決めるまで話さない選択に合理性があります。
第二に、早期の弁護人選任です。国選弁護人が付くのは勾留決定の後であり、共犯者の供述が固まる時間帯と重なります。ご家族からのご依頼で私選弁護人が動けば、逮捕当日から接見できます。
第三に、通訳の質です。現場でのやり取りが中国語で行われていた場合、誰が何を言ったかの訳が共謀の認定に直結します。捜査機関が指定する通訳人は捜査手続を進めるために置かれた存在であり、依頼者本人のために言葉を尽くす立場ではありません。弁護人が同行させる通訳は依頼者本人のために動きます。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行はいたしません。中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートで、刑事手続後の在留期間更新や在留特別許可申請までワンストップでご対応します。
共犯事件の実績として、特殊詐欺の受け子で複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べ対応と主張立証により全件不起訴処分を獲得した例があります。組織的な事件で関与の程度を切り分ける作業は、集団による暴行・脅迫の事案と共通します。
また、当事務所は国際刑事事件や裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績を有し、中国籍の方の重大事件にも多数対応してきました。加えて、在留資格を失い不法滞在で起訴された方の事案では、婚姻と子の認知を成立させ、有利な証拠を積み上げて1回の申請で在留特別許可を獲得しています。
結語
共犯事件では、時間の経過とともに事実の枠組みが固まっていきます。その枠に自分の名前が組み込まれてしまう前に、正確な説明ができる体制を整えることが重要です。逮捕の連絡を受けたら、その日のうちにご相談ください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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