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恐喝と債権回収の境界|同郷者間の貸金トラブルが刑事事件になるとき

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恐喝と債権回収の境界|同郷者間の貸金トラブルが刑事事件になるとき

恐喝と債権回収の境界|同郷者間の貸金トラブルが刑事事件になるとき

2026/08/19

本記事の要点

  • 恐喝罪(刑法249条)は10年以下の拘禁刑です。罰金刑がなく、この類型のなかでは格段に重い罪です。
  • 貸したお金を返せと迫る行為であっても、態様が社会通念上相当な範囲を超えれば恐喝が成立しうるとされています。債権があることは免罪符になりません。
  • 法定刑が10年以下であるため、1年を超える実刑となる可能性が現実にあり、入管法24条4号リが正面から問題になります。
  • 24条4号リには但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。したがって実刑を回避できるかどうかが在留を分けます。
  • 実刑となった場合、在留特別許可(入管法50条)の判断は加重要件のもとで行われます。早い段階から入管を見据えた設計が必要です。

同郷の知人に貸した金が返ってこない。何度連絡しても無視される。相手の勤務先に押しかけ、家族の名前を出し、返済の期限を切って迫った。日本に暮らす中国籍の方の間で起きる貸金トラブルが、ある日突然、恐喝事件として立件される。これは決して珍しい話ではありません。

ご本人の意識としては正当な権利の行使であっても、日本の刑事実務は、権利の存否と回収の手段とを分けて評価します。本稿は、貸した側が被疑者になってしまった場面を中心に整理します。

権利行使と恐喝はどこで分かれるのか

刑法249条は、人を恐喝して財物を交付させた者を処罰します。判例の考え方によれば、正当な債権を有していても、その回収のために用いた手段が社会通念上相当な範囲を逸脱していれば、恐喝罪が成立しうるとされています。手段の相当性を左右するのは、告げた内容、人数、時間帯と場所、勤務先や家族への言及、反復の有無、そして請求額と債権額の差です。とりわけ、勤務先に押しかける、在留資格の話を持ち出す、家族に知らせると告げるといった行為は、害悪の告知と評価されやすくなります。

逮捕から勾留決定までの72時間

身柄を拘束されると、48時間以内に検察官へ送致され、その後24時間以内に勾留請求の可否が判断されます。この72時間で勾留が決まれば、原則10日、延長で最大20日の拘束になります。

恐喝は複数人が関与することが多く、共犯者との口裏合わせを疑われて接見禁止が付くことも珍しくありません。弁護人は、貸金の実在を示す資料、借用書、送金記録、やり取りの履歴を早期に確保し、事実関係を固めます。同時に、生活基盤を示す資料を勾留請求前に検察官へ、勾留質問前に裁判官へ届けます。

外国人事件特有のリスク|入管法を号ごとに読む

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とします。但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外され、一部猶予でも実刑部分が1年以下なら除外です。恐喝罪の法定刑は10年以下ですから、この号は現実的な問題として立ち上がります。実刑を避けられるかどうかが、そのまま在留の可否につながる構造です。

あわせて、身柄拘束が長引き在留期限を過ぎれば24条4号ロの不法残留、留学の資格で就労に専従していれば24条4号イ、資格外活動の罪により拘禁刑に処せられれば同4号ヘが問題になります。薬物事犯の24条4号チは、有罪判決さえあれば罰金でも執行猶予でも該当します。有罪判決に至れば、在留期間更新(入管法21条)や在留資格の取消し(同22条の4)も避けて通れません。なお、退去強制事由の該当性判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。

在留特別許可を見据えた設計

退去強制事由に該当した場合でも、在留特別許可の道が残ります。入管法50条2項は収容令書により収容された者や監理措置決定を受けた者に申請権を認め、3項は退去強制令書の発付後は申請できないと定めます。5項では考慮要素が法定化され、10項では不許可の場合に理由を付した書面が交付されます。もっとも50条1項の但書により、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者等については加重された要件のもとで判断されます。だからこそ、刑事段階で実刑を回避することが入管手続の前提を左右します。

不起訴処分の重要性

執行猶予でも退去強制事由に該当する類型が現に存在する以上、判決の段階での見通しだけに頼ることはできません。起訴前に不起訴処分を得ることが最も安定した出口です。弁護人が行うのは、貸金の実在と金額の裏づけ、相手方との示談交渉、返済に関する民事上の合意の同時解決、そして検察官との面談です。意見書では、債権の存在、請求に至る経緯、手段の逸脱の程度、被害の回復、在留への影響を具体的に述べます。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。恐喝では、どのような言葉で何を求めたかという細部が構成要件に直結します。記憶が曖昧なまま話すことは避けるべきです。

第二に、早期の弁護人選任です。共犯者がいる事案では、誰が先に何を話したかで立場が大きく変わります。逮捕直後の接見が防御の起点になります。

第三に、通訳の質です。貸金のやり取りは中国語で行われていることがほとんどで、返済を求める表現の強度は文脈で大きく変わります。捜査機関が指定する通訳人は捜査手続のために置かれた存在であり、依頼者本人のために言葉を尽くす立場ではありません。弁護人が同行させる通訳は依頼者本人のために動きます。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行はいたしません。中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートで、刑事手続後の在留期間更新や在留特別許可申請までワンストップでご対応します。

債権回収の局面では、取り込み詐欺の被害に遭った卸業の依頼者につき、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得した事案があります。

また、特殊詐欺の受け子で複数回再逮捕された事案では、取調べ対応と主張立証により全件不起訴処分を獲得しました。さらに、在留資格を失い不法滞在で起訴された方の事案では、婚姻と子の認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど存在しない状況下で有利な証拠を積み上げ、1回の申請で在留特別許可を獲得しています。

結語

お金を返してほしいという当たり前の願いが、伝え方ひとつで10年以下の拘禁刑を定める罪に触れてしまう。この落差が、貸金トラブルの最も危険なところです。相手に連絡を取る前に、回収の方法を法的に設計してください。すでに事件になってしまった場合も、動く順序を誤らなければ道は残ります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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