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器物損壊で立件されたとき|原状回復と示談、そして在留への影響

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器物損壊で立件されたとき|原状回復と示談、そして在留への影響

器物損壊で立件されたとき|原状回復と示談、そして在留への影響

2026/08/19

本記事の要点

  • 器物損壊罪(刑法261条)は3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料であり、親告罪です。告訴が取り下げられれば起訴はできません。
  • 示談による解決が処分に直結する数少ない犯罪のひとつであり、示談の設計がそのまま結論になります。
  • 示談の中身は金額だけではありません。原状回復の方法、修理費の算定根拠、宥恕文言、告訴取消しの意思表示までを書面で整える必要があります。
  • 入管法24条4号リには但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は退去強制事由から除外されます。器物損壊で1年を超える実刑となる事案は限られます。
  • 被害者の連絡先は弁護人にしか開示されないのが通例で、ご本人やご家族が直接交渉することはできません。

駐車場で他人の車のミラーを折ってしまった。口論のはずみで店舗の看板を倒した。器物損壊は人の身体に向けられた行為ではないため、ご本人としては軽く受け止めがちです。しかし日本では現に逮捕・勾留の対象になり、被害額が小さくても捜査は行われます。

外国人の方の場合、この事件が在留の話に直結します。在留期間の更新は自動的に認められるものではなく、素行が審査されるためです。本稿は、従業員が身柄拘束された受入れ企業のご担当者にも読んでいただくことを想定しています。

器物損壊が親告罪であることの実務的な意味

刑法261条は、他人の物を損壊し又は傷害した者を処罰します。そして刑法264条により、器物損壊は告訴がなければ公訴を提起できません。被害者が告訴を取り消せば検察官は起訴できませんから、示談が成立し告訴取消しの書面が提出されれば、不起訴という結論はほぼ論理的に導かれます。逆にいえば、示談ができるかどうかが処分を決めます。

逮捕から勾留決定までの72時間

身柄を拘束されると、48時間以内に検察官へ送致され、その後24時間以内に勾留請求の可否が判断されます。この72時間で勾留が決まれば、原則10日、延長で最大20日の身柄拘束になります。器物損壊は法定刑がそれほど重くない一方、被害者との接触のおそれを理由に勾留されることが少なくありません。

弁護人が動く価値は二つあります。ひとつは勾留を避けるための意見書です。定まった住居、安定した就労、身元を引き受ける方の存在を示し、罪証隠滅と逃亡のおそれを個別に否定します。もうひとつは示談交渉の入口を早く開くことです。被害者の連絡先は、捜査機関が被害者の同意を得たうえで弁護人にのみ伝えるのが通例で、ご本人やご家族が直接連絡を取ろうとすると、かえって罪証隠滅のおそれを疑われます。

示談の中身をどう組み立てるか

器物損壊の示談で整えるべき要素は、少なくとも次のとおりです。第一に、損害額の算定根拠として修理見積書や再調達価格の資料を確認し、過大でも過小でもない金額を提示すること。第二に、原状回復の方法で、金銭賠償のほか修理の手配そのものを引き受ける方法もあること。第三に、被害者が処罰を求めない意思を明示する宥恕の文言。第四に、告訴取消しの意思表示であり、すでに告訴がなされていれば示談書とは別に告訴取消書を作成し提出します。第五に、清算条項と接触禁止の取決めです。

外国人事件特有のリスク|入管法上の位置づけ

入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外されます。器物損壊の法定刑は3年以下ですから、この号だけを見れば直ちに退去強制になるわけではありません。しかし入管法21条の在留期間更新は、素行、活動の実態、生活状況を総合して判断されます。罰金前科がつけば、更新申請の際にその事実の説明を求められます。在留資格の取消し(同22条の4)は、活動の不実施や申請時の虚偽が絡んだときに問題となります。

また、身柄拘束が長引いて在留期限を徒過すれば24条4号ロの不法残留に至り、資格外活動が発覚すれば同4号イや4号ヘの領域に入ります。薬物が絡む場合の24条4号チは、罰金でも執行猶予でも該当するという点で他の号と構造が異なります。なお実務は長らく、退去強制事由の該当性判断に故意や過失を要しないという立場を前提としてきました。当事務所は、この前提に対して責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。

不起訴処分の重要性

薬物事犯のように、執行猶予でも罰金でも退去強制事由に該当してしまう類型が存在する以上、判決で猶予を得れば在留は安全だという理解は成り立ちません。前科そのものを作らないこと、すなわち起訴前の不起訴処分が最も安定した出口です。そのために行うのは、被害者との示談交渉、原状回復の実行、検察官との面談、意見書の提出です。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。器物損壊では、わざと壊したのか偶然当たったのかという故意の有無が決定的な争点になります。この点で不用意な説明をすると、後から訂正することは極めて困難です。

第二に、早期の弁護人選任です。連絡先の開示を受け、意向を確認し、金額を詰め、書面を作り、告訴取消しまで進める。これを勾留期間内に終えるには、逮捕直後から動き始める必要があります。

第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査手続を進めるために置かれた存在であり、依頼者本人のために意を尽くす立場ではありません。弁護人が同行させる通訳は依頼者本人のために動きます。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、弁護士 松村大介が初動接見から公判結審まで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行はいたしません。中国語専属通訳が常駐し、提携行政書士による在留資格サポートにより、刑事手続後の在留期間更新や在留特別許可申請までワンストップでご対応できます。

示談交渉に関連する実績として、盗撮被害者の代理人として交渉にあたり、示談金300万円で解決に至った事案があります。また、特殊詐欺の出し子に関与したとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。

さらに、冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。

結語

器物損壊は、被害者との合意が処分をそのまま左右する、珍しい構造の犯罪です。だからこそ、誰がいつ動くかで結論が変わります。ご本人が直接連絡を取ることはできませんから、弁護人を立てることが出発点になります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

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