別件逮捕・再逮捕で身柄が長期化するとき|在留期限との関係をどう見るか
2026/08/18
本記事の要点
- 再逮捕が繰り返されると、身柄拘束は数か月に及ぶことがあり、生活基盤と在留資格の双方が同時に危険にさらされる。
- 同一の事実について逮捕・勾留を繰り返すことは原則として許されず、その限界を争うのが弁護人の役割である。
- 身柄拘束中に在留期間が満了すれば、更新の申請(入管法21条)ができないまま不法残留の状態に陥りうる。
- 不法残留は入管法24条4号ロの退去強制事由であり、刑事処罰の有無を問わずに該当する。
- 再逮捕のたびに処分を確定させていくことが、最終的な在留の可能性を残す道になる。
一つの事件で釈放されると思っていたところ、その日のうちに別の被疑事実で再び逮捕される。これが二度、三度と続くことがあります。特殊詐欺のように被害者が複数存在する類型では、被害者ごとに事件が立てられるため、身柄拘束が長期化しやすい構造があります。ご家族から見れば、いつ終わるのか見通しの立たない期間が続きます。
中国籍の方の場合、この長期化は在留資格に直結します。在留期間には満了日があり、身柄を拘束されている間もそれは進みます。刑事手続と入管手続は連動していないため、刑事事件の決着を待つうちに、在留の側で取り返しのつかない状況が生まれることがあります。本記事では、再逮捕が続く場面での考え方を整理します。
想定される刑事手続の流れ
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、その後24時間以内に勾留請求の可否が判断されます。この72時間が最初の分岐点です。勾留が認められれば原則10日、延長でさらに10日。ここまでで最大およそ23日です。
問題はその先です。勾留の満期に別の被疑事実で再逮捕されると、そこからまた同じサイクルが始まり、身柄拘束は数か月に及びます。もっとも、同一の事実について逮捕と勾留を繰り返すことは原則として許されないと解されており、被疑事実の同一性、捜査の必要性、身柄拘束の相当性は争う余地があります。また、実質的には本命の事件を取り調べる目的で軽微な別の事実により逮捕する運用は、別件逮捕として長く批判されてきました。準抗告や勾留取消請求の検討も含め、一つひとつの身柄拘束に個別に対応する必要があります。
外国人事件特有のリスク
在留期間の満了日が身柄拘束中に到来すると、更新の申請ができないまま期間が経過します。その結果として不法残留の状態になれば、入管法24条4号ロの退去強制事由に該当します。この号は刑事処罰を要件としません。4号イの資格外活動の専従も、3号の4の不法就労助長も同様です。
刑罰を要件とする号との違いを正確に押さえる必要があります。4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれ、一部猶予でも実刑部分が1年以下であれば除外されます。他方、4号チは薬物関係の罪について有罪判決があれば足り、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。再逮捕が続く事案では、複数の被疑事実がそれぞれ別の号に関係することがあり、全体像の把握が欠かせません。
また、身柄拘束が長期化して所属先を離れた状態が続けば、在留資格の取消し(入管法22条の4)も現実の問題になります。就労先を失い住居を維持できなくなれば、その後の在留特別許可の判断に必要な生活の実態も失われます。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。身柄拘束によりやむを得ず生じた状態にも、この論点は関わります。
不起訴処分の重要性
執行猶予判決でも退去強制につながる類型がある以上、起訴前に不起訴を得ることが決定的です。再逮捕が続く事案では、これがいっそう鮮明になります。一件でも起訴されれば公判が始まり、身柄拘束はさらに続きます。逆に、各事件について順次不起訴を積み上げていければ、最終的に身柄が解かれ、在留手続に取り組む余地が生まれます。
そのために行うのは、被疑事実ごとに検察官と面談し、事案の見方と本人の関与の程度を具体的に伝えること、被害者がいる事件では個別に謝罪と被害弁償を尽くして示談を目指すこと、身元引受人と生活基盤に関する資料を意見書として提出することです。あわせて、在留期間の満了日を早期に確認し、入管手続の見通しを立てる必要があります。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権の行使です。再逮捕が続く事案では、前の事件で述べた内容が次の事件の端緒として使われることがあります。全体像を把握しないまま個別の事件に答えていくことの危険は、非常に大きくなります。
第二に、早期の弁護人選任です。最初の逮捕の段階で、今後どのような事実で再逮捕がありうるのかを見通すことが、方針の一貫性を保つ前提です。国選弁護人の場合、事件ごとに担当が変わることがあり、連続性の確保は重要な課題です。
第三に、通訳の質です。数か月に及ぶ身柄拘束の中で、複数の事件について繰り返し取調べを受けます。捜査機関が指定する通訳人は事件ごと、日ごとに交代することがあり、訳語の一貫性は保たれません。依頼者本人のために動く通訳が継続して関わることで、供述の経過を通時的に把握できます。
当事務所のご案内と解決事例
本テーマに近接する取扱い事案をご紹介します。
- 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べ対応と主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。まさに本記事の場面に正面から取り組んだ事案です。
- 観光目的で来日し日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど無い状況下で有利な証拠を積み上げ、1度の申請で在留特別許可を獲得しました。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
当事務所では、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行を行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格については、提携する行政書士とともにワンストップで対応します。
結語
再逮捕が続く事案は長い持久戦です。しかし、漫然と時間が過ぎるのを待つ手続ではありません。一件ごとに争点を立て、一件ごとに処分を取りにいく。同時に、在留期間という別の時計が動いていることを忘れない。この二つを並行して管理できるかが、最終的な結論を分けます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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