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差入れと宅下げの実務|中国語書籍・現金・衣類はどこまで届けられるか

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差入れと宅下げの実務|中国語書籍・現金・衣類はどこまで届けられるか

差入れと宅下げの実務|中国語書籍・現金・衣類はどこまで届けられるか

2026/08/18

本記事の要点

  • 差入れは留置施設のルールに沿って行う必要があり、品目・数量・形状によって受け付けられないものがある。
  • 宅下げは、本人が施設内で保管している物を外部に渡す手続で、在留カードや旅券の取扱いには特に注意を要する。
  • 中国語の書籍や雑誌も差し入れられるが、施設側の確認に時間がかかることがあり、内容によっては制限を受ける。
  • 現金の差入れには上限や取扱いの決まりがあり、使途も施設内での購入等に限られる。
  • 差入れは物を届けるだけの行為ではなく、本人の生活と精神状態を支え、防御の準備を整えるための活動である。

ご家族が突然身柄を拘束されると、まず思い浮かぶのは「何を届けられるのか」という具体的な問いです。着替えはあるのか、寒くないか、読むものはあるのか、お金は足りているのか。中国本土にいるご家族から、日本にいる親族や知人を通じて何を送ればよいかというご相談をいただくことも少なくありません。

差入れと宅下げは、留置施設ごとに運用の細部が異なります。持参できる時間帯、一度に差し入れられる数量、受付の方法、宅下げに必要な手続。この記事では、中国籍の方の事件で実際に問題になりやすい点を中心に、実務の全体像を整理します。あわせて、物のやり取りが刑事手続や在留手続とどう結びつくのかについても触れます。

想定される刑事手続の流れ

逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するか釈放するかを判断します。この72時間が、身柄の行方を決める最初の分岐点です。この間は警察署の留置施設に置かれることが通常で、一般面会が制限される場合もあります。

勾留が決まると、原則10日、延長でさらに10日の身柄拘束が続きます。生活が長期化するのはこの段階からで、差入れの必要が現実の問題として立ち上がります。接見禁止決定が付されている場合、弁護人以外との面会や書類のやり取りが制限されますが、衣類や現金などの物の差入れは認められることがあります。何が制限され何が制限されないのかは決定の内容によるため、弁護人を通じた確認が欠かせません。起訴されて拘置所へ移された後は、また運用が変わります。

外国人事件特有のリスク

宅下げで特に重要なのが、在留カードと旅券です。これらは在留手続を進めるうえで欠かせない書類であり、押収されているのか、施設で保管されているのか、そもそも本人が所持していたのかによって、その後の動きが変わります。押収されている場合は押収品目録を確認し、還付を求める余地があるかを検討します。

入管法24条の退去強制事由は、号ごとに要件が異なります。4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。一部猶予の場合も実刑部分が1年以下であれば除外されます。これに対して4号チは、薬物関係の罪について有罪判決を受けたことのみで該当し、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも同じです。また、4号ロの不法残留や4号イの資格外活動の専従は刑事処罰を要件とせず、3号の4の不法就労助長も行為のみで該当します。

身柄拘束が続くと、在留期間の満了日が近づいても更新の申請(入管法21条)ができないという事態が生じます。所属先を離れた状態が続けば、在留資格の取消し(入管法22条の4)も問題になります。差入れの場面で、家族が在留カードの記載や有効期間を確認できるようにしておくことは、この意味で実務的な価値があります。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。

不起訴処分の重要性

執行猶予判決でも退去強制につながる類型がある以上、起訴前に不起訴を得ることが決定的です。差入れは、この目標とも無関係ではありません。身柄拘束が長引くほど心身の消耗は進み、取調べで安易な迎合が起きやすくなります。衣類や書籍が届き、家族の存在が感じられることは、方針を維持する力になります。

弁護人の活動としては、検察官との面談を重ねて事案の見方を伝え、被害者がいる事件では謝罪と被害弁償を尽くして示談を目指し、身元引受人や生活基盤に関する資料を整理して意見書として提出します。差入れを担うご家族から得た生活状況の情報は、この意見書の内容を具体化する材料になります。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。面会や差入れの際、事件の内容について本人と話すことは避けてください。一般面会には職員が立ち会い、内容が記録されます。差し入れる手紙も同様です。

第二に、早期の弁護人選任です。差入れの可否、接見禁止決定の範囲、宅下げの手続は、弁護人を通じて確認するのが最も確かです。緊急に必要な物がある場合、弁護人が施設に申し入れることで対応が進むこともあります。

第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査のために置かれており、本人の生活上の要望を外部に伝える役割は担いません。依頼者本人のために動く通訳が接見に同行すれば、必要な物、体調、施設内で困っていることを正確に把握し、ご家族に伝えることができます。中国語の書籍を選ぶ場合も、本人が本当に読みたいものを確認できます。

当事務所のご案内と解決事例

本テーマに関連する取扱い事案をご紹介します。

  • 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。長期の身柄拘束下で方針を維持できたことが結果につながった事案です。
  • 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
  • 裁判員裁判の対象事件や、世界的に報道された重大事件を含む国際刑事事件にも対応してきました。中国籍の方の重大事件についても多数の取扱い実績があります。

当事務所では、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行を行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しています。刑事手続後の在留資格については、提携する行政書士とともにワンストップで対応します。

結語

差入れは、外にいる家族が中にいる本人に対してできる、数少ない直接の行為です。制度上の制約は多く、思うように届かないこともありますが、届いた物と届けようとした事実は、本人にきちんと伝わります。手続の細部は施設により異なりますので、弁護人を通じて確認してください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

舟渡国际法律事务所
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