特定少年(18歳・19歳)が事件を起こしたとき|原則逆送・実名報道と在留資格
2026/08/18
本記事の要点
- 改正少年法により、18歳と19歳は「特定少年」として、17歳以下とも成人とも異なる扱いを受ける。
- 全件を家庭裁判所に送致する原則は維持されているが、検察官送致(逆送)を原則とすべき事件の範囲が広がっている。
- 起訴された場合、略式手続による場合を除いて、氏名等の報道が禁止されなくなる。報道は在留審査にも就労にも長く影響する。
- 逆送・起訴を経て1年を超える実刑判決を受ければ、入管法24条4号リに該当しうる。ただし但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれる。
- 薬物事犯は別枠で、有罪判決だけで24条4号チに該当し、執行猶予でも罰金でも同じ結論になる。
18歳と19歳という年齢は、日本の法制度の中で特殊な位置にあります。選挙権があり、契約も単独で結べる一方、少年法の適用対象からは外れていません。この中間的な地位が「特定少年」という呼び名で整理されました。中国籍の18歳・19歳の方が事件の当事者となったとき、ご家族が最初に戸惑うのは、成人として扱われるのか少年として扱われるのかという点です。
結論から言えば、両方の性質を併せ持ちます。手続の入口は少年事件ですが、出口が成人と同じになる可能性が、17歳以下より格段に高い。そしてこの「出口」の違いが、在留資格の帰趨をほぼそのまま決めます。本記事では、特定少年の制度を確認したうえで、在留への波及と、いま何を急ぐべきかを説明します。
想定される刑事手続の流れ
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、そこから24時間以内に勾留請求か釈放かが決まります。この72時間で身柄の見通しが定まる点は、年齢を問わず変わりません。勾留が認められれば原則10日、延長でさらに10日です。
捜査が終われば、特定少年の事件も原則としてすべて家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所は観護措置を経て審判を行いますが、特定少年については、原則として検察官に送致すべき事件の範囲が広げられています。逆送された後は、通常の起訴・公判の手続に移り、公開の法廷で審理されます。処分としては、保護処分にとどまる場合と、刑事裁判で刑が言い渡される場合とがあり、この分岐が決定的です。特定少年は、17歳以下に適用される不定期刑の規定の対象から外れており、量刑の考え方も成人に近づきます。
外国人事件特有のリスク
入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とします。但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。一部の執行を猶予された場合も、実刑部分が1年以下であれば除外されます。特定少年が逆送・起訴され、1年を超える実刑を受けたときに、この号が正面から問題になります。
これに対し、4号チは薬物関係の罪について有罪判決を受けたことのみを要件とし、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当します。在留資格の種別も問いません。この号は4号リの柱書から除かれており、別の守備範囲を持っています。さらに、薬物に関する上陸拒否事由には年限の定めがなく、期間の定めのない上陸拒否となります。再び日本に入るには、上陸特別許可という例外的な道を通るほかありません。
特定少年に固有の問題として、実名等の報道が解禁されうる点があります。報道された事実はインターネット上に残り、在留期間の更新(入管法21条)や在留資格の変更の審査、就職活動、そして所属機関との関係に長く影響します。また、学校を離れれば在留資格の取消し(入管法22条の4)の問題が生じます。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、当事務所は責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってきました。
不起訴処分の重要性
逆送されて起訴されるかどうかは、その後の人生の設計図を書き換えます。刑の全部の執行を猶予する判決を得ても、薬物事犯であれば退去強制事由に当たるため、在留の安全は確保されません。だからこそ、起訴という段階に至らせないことに最大の力を注ぐ必要があります。
具体的には、家庭裁判所の段階で保護処分にとどめるべき事情を積み上げること、逆送後は検察官と面談を重ねて起訴猶予を求めること、被害者のいる事件では謝罪と被害弁償を尽くして示談を目指すこと、就労先や学校の受入れ体制・監督体制を書面化して意見書に添えることです。特定少年の場合、成人に近い扱いを受けるからこそ、更生環境の具体性が説得力を左右します。
初動対応の3つのポイント
第一に、黙秘権です。18歳・19歳は、成人と同じ強度の取調べを受けながら、経験の蓄積は乏しい年代です。曖昧な記憶のまま話した内容が、後から動かせない前提になることがあります。
第二に、早期の弁護人選任です。報道の可能性がある事件では、初期段階からの対応が結果を左右します。当事務所は、過去の逮捕報道・前科報道の削除に取り組んだ経験を有しています。
第三に、通訳の質です。捜査機関が指定する通訳人は捜査のために置かれた存在であり、依頼者本人の利益のために動く立場にはありません。弁護人と一体となって本人の言い分を正確に伝える通訳が必要です。特に若年者の場合、本人が言葉にできていない事情を引き出す作業に、通訳の力量が直結します。
当事務所のご案内と解決事例
本テーマに近接する取扱い事案をご紹介します。
- 特殊詐欺の受け子(現金やカードを受け取る役割)として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べ対応と主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。再逮捕が続く局面で処分を積み残さないことが、その後の在留にとって重要な意味を持ちました。
- 過去の逮捕報道・前科報道について、削除に成功した事案があります。検索結果として残り続ける情報が就労や在留手続に及ぼす影響は無視できません。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められています。
当事務所では、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行を行いません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しています。刑事手続後の在留資格については、提携する行政書士とともにワンストップで対応します。
結語
特定少年の制度は、更生の機会を残しながら、責任のとり方を成人に近づけた仕組みです。中国籍の18歳・19歳にとっては、そこに在留資格という第三の軸が加わります。手続の入口が家庭裁判所であることに安心せず、出口がどこに向かうのかを最初から想定して動くことが必要です。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
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