舟渡国際法律事務所

任意取調べと出頭要請|逮捕されていない段階でこそ決まること

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任意取調べと出頭要請|逮捕されていない段階でこそ決まること

任意取調べと出頭要請|逮捕されていない段階でこそ決まること

2026/08/18

本記事の要点

  • 逮捕も勾留もされていない被疑者は、出頭を拒むことができ、出頭後も何時でも退去することができます。
  • 在宅のまま捜査が進む事件は結論が出るまで数か月に及ぶことがあり、その間も在留期間は進行します。
  • 出国すれば事件が終わるわけではなく、退去強制や上陸拒否の問題が残ります。
  • 逮捕されていない段階だからこそ、方針を整えたうえで手続に臨むことができます。

警察から電話があり、話を聞きたいので署まで来てほしいと言われた。呼出状が届いた。こうしたご相談は、身柄事件と同じくらい多く寄せられます。逮捕されていないから大丈夫だと考える方もいれば、断れば逮捕されるのではないかと不安になる方もいます。

実際には、この段階の対応が事件全体の方向を決めます。本記事では、任意の取調べにどう向き合うか、在宅事件が在留にどう影響するかを整理します。

出頭要請にどう応じるか

刑事訴訟法198条1項は、捜査のため必要があるときは被疑者の出頭を求めて取り調べることができるとしつつ、但書で、被疑者は逮捕または勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、出頭後も何時でも退去できると定めています。任意の取調べに応じる法的義務はありません。

もっとも、連絡を無視し続けることが最善とは限りません。連絡が取れない状態が続けば、逃亡のおそれがあると評価され、逮捕状の請求につながる場合があるからです。現実的な対応は、弁護人を選任し、弁護人を通じて日程を調整して、出頭の可否や方法を捜査機関と協議することです。弁護人が付いていること自体が、逃亡や罪証隠滅のおそれを弱める事情にもなります。

出頭する場合には事前に方針を固めます。どの範囲で話すのか、黙秘するのか、所持品の任意提出を求められたときにどう応じるのか、署名押印を求められた書面をどう扱うのかを決めておきます。任意の段階で作られた供述調書も、身柄事件のものと同じ重みを持ちます。任意だから軽い、ということはありません。

在宅事件の流れと逮捕の可能性

在宅のまま捜査が進む場合、任意の取調べを経て書類が検察官に送致され、検察官が改めて呼び出したうえで処分を決めます。結論が出るまでに数か月かかることも珍しくありません。この間、動きがないように見えても捜査は進行しています。

また、在宅で始まった事件が途中で身柄事件に変わることもあります。その場合は逮捕後48時間以内に検察官へ送致され、検察官は24時間以内、逮捕時から72時間以内に勾留請求か釈放かを判断します。勾留されれば原則10日、延長でさらに10日、起訴前だけで最長23日に及びます。この72時間の重みは在宅から移行した事件でも変わらず、任意の段階から弁護人を選任しておく意味はここにあります。

外国人事件に特有のリスク

在宅事件であっても在留の時計は止まりません。捜査が続く間に在留期間の満了日が来れば、更新を申請しなければなりません。捜査中であることを理由に更新が当然に認められるわけではなく、入管法21条による不許可の判断もあり得ます。更新がされないまま期間が経過すれば、入管法24条4号ロの不法残留の問題が生じます。この号は刑事処罰の有無を問いません。

刑事処分が出た場合の影響も確認しておく必要があります。24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を挙げますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除外され、一部猶予でも実際に服する部分が1年以下なら除外されます。24条4号チの薬物関係の有罪は、罰金でも執行猶予でも該当し、在留資格の種類を問いません。不法就労助長を定める24条3号の4は行為のみで該当します。22条の4による取消しという経路もあります。当事務所は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して争ってきました。

なお、事件の途中で帰国すれば終わるという理解は誤りです。手続が残ったまま出国すれば、その後の再入国の場面で問題が表面化します。出国の予定がある場合は事前に弁護人へ相談してください。

不起訴処分がなぜ決定的なのか

不起訴処分であれば前科は残らず、24条4号リの前提である拘禁刑に処せられた状態も生じません。執行猶予でも退去強制事由となる類型がある以上、起訴前に結論を取ることが必要です。

在宅事件は、身柄事件に比べて準備の時間を確保できます。被害者のいる事件では早い段階から示談交渉を進め、謝罪と被害弁償を尽くします。事実に争いがある事件では、勤務先や関係者の資料を集めて主張を裏づけます。生活基盤、家族の状況、再発防止のために整えた環境を書面にまとめ、検察官に提出します。時間を使えるという強みを活かせるかが結果を分けます。

初動対応の3つのポイント

第一に、黙秘権の行使です。任意の段階でも黙秘権は保障されています。話す内容と時期は、資料を確認してから決めれば足ります。

第二に、早期の弁護人選任です。出頭要請を受けた時点で相談すれば、日程調整から供述方針まで整えて臨めます。逮捕を待つ必要はありません。

第三に、通訳の質です。任意の取調べでも通訳人が付きますが、捜査機関が指定する通訳人は捜査手続のために置かれ、依頼者のために動く立場ではありません。依頼者のための通訳が付いて初めて、事前の打合せから当日の記録までを一貫して行えます。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、外国人の刑事事件と入管手続を中心に扱っています。特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。早い段階で事実関係を整理できたことが結果に結びついています。

観光目的で来日し日本人女性との間に子を授かったが在留資格を失い、不法滞在で起訴された事案では、婚姻と認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど無い状況下で有利な証拠を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。取り込み詐欺の被害に遭った卸業の依頼者の事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しています。

当事務所では、松村大介弁護士が初動の相談から結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士に代行させません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。提携する行政書士による在留資格サポートにより、刑事手続後の在留資格の維持や更新もワンストップで対応します。

結語

逮捕されていない段階は、失われた時間を取り戻す段階ではなく、まだ何も失っていない段階です。方針を整え、資料を準備し、必要な交渉を先に始められます。呼出しを受けたら、応じるかどうかを一人で決める前に弁護人と話をしてください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

弁護士 松村大介(第一東京弁護士会、登録番号59077、2019年登録)。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。

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