舟渡国際法律事務所

「弁護士を付けると否認扱いになって不利になる」という誤解|黙秘権の行使と不起訴・量刑の関係

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「弁護士を付けると否認扱いになって不利になる」という誤解|黙秘権の行使と不起訴・量刑の関係

「弁護士を付けると否認扱いになって不利になる」という誤解|黙秘権の行使と不起訴・量刑の関係

2026/08/22

接見の場で、外国籍の依頼者からしばしば伺うお言葉があります。「弁護士さんを頼むと、争っていると思われて重くなるのではないか」「早く認めた方が早く帰れると聞いた」。同じ趣旨のことを、留置場で同室の方から聞いた、という方もおられます。この誤解は、外国人事件においてとりわけ高い代償を伴います。本記事では、この考えがどこで誤っているのかを、条文と実務に即して整理いたします。

本記事の要点

  • 弁護人の選任と、事実を認めるか争うかは、まったく別の事柄です。認める事件でこそ弁護人の役割は大きくなります。
  • 憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されない権利を保障し、刑訴法198条2項は供述を拒むことができる旨の告知を求めています。
  • 黙秘権を行使したことを理由に刑を重くすることは許されません。
  • 外国人事件では、認めて早く終わらせることが、そのまま退去強制に直結する場面があります。
  • 弁護人の中心的な仕事は、争うことではなく、不起訴処分を得るための働きかけです。

弁護人を選任することと、否認することは別である

まず、この二つを分けてお考えいただく必要があります。弁護人の仕事は、事実を争うことだけではありません。むしろ、事実に争いがない事件においてこそ、弁護人の働きが結果を左右します。被害者との示談交渉、被害弁償と宥恕の書面の取得、身元引受人の確保、再犯防止のための環境調整、検察官に対する意見書の提出。これらはいずれも、事実を認めたうえで行う活動です。

検察官が起訴・不起訴を判断する際には、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況が考慮されます(刑訴法248条)。この「犯罪後の情況」に、示談の成立や被害弁償が含まれます。放っておけば起訴されたであろう事件が、これらの活動によって不起訴に転じる。それが弁護人を選任する実際上の意味です。

黙秘したことで刑が重くなるか

なりません。憲法38条1項は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と定めています。刑訴法198条2項は、取調べに際して、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないとしています。この権利を行使したことを理由に不利益な取扱いをすれば、権利の保障は空文になります。

もっとも、実際の量刑では、反省の態度や被害者への対応が考慮されます。そこで、黙秘と反省が対立するかのように語られることがあります。しかし、この二つは時間軸が違います。捜査の初期に事実関係の全体像が見えない段階で慎重に対応することと、事実関係が固まった後に自らの行為に向き合うこととは、両立します。どの時点で何を語るかを設計するのが、弁護人の仕事です。

外国人事件で「早く認める」ことの代償

ここが本題です。日本人の事件であれば、早期に認めて略式手続で罰金を納め、事件を終わらせることが合理的な選択となる場面があります。しかし外国籍の方の場合、その先に入管手続が控えています。

たとえば薬物事犯です。入管法24条4号チは、薬物関係の法令に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由としており、刑の重さを問いません。罰金でも、執行猶予でも該当し得ます。認めて早く終わらせた結果、在留の基盤そのものを失うことになります。

財産犯であっても、1年を超える拘禁刑の実刑となれば入管法24条4号リの問題が生じます。同号は執行猶予が全部付された場合を除いていますが、退去強制を免れても、在留期間の更新は入管法21条3項の裁量判断であり、更新のガイドラインは素行が善良であることを求めます。有罪判決という事実は、更新のたびに参照されます。

したがって、外国籍の方の刑事事件では、目標は執行猶予ではありません。起訴前の不起訴処分こそが目標です。この設計は、事件の初期に弁護人が入っていなければ立てられません。

通訳を介した「認めます」の危うさ

もう一つ申し上げておきたいことがございます。取調べで「認めます」と述べた内容が、実際にご本人の認識と一致しているとは限らないことです。捜査機関が手配する通訳人は、必ずしも法律用語の専門家ではありません。「知っていた」「気づいていた」「そうかもしれないと思った」。この三つは、法的には未必の故意の有無を分ける決定的な差ですが、通訳の過程で均されてしまうことがあります。

いったん署名した調書を後から争うことは、実務上きわめて困難です。刑訴法198条4項・5項は、調書の内容を読み聞かせ又は閲覧させたうえで誤りがないかを問い、被疑者が署名押印を拒むことができる旨を定めています。この権利があることを知っているかどうかで、事件の帰趨は変わります。

当事務所の対応と解決事例

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。

特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について、指示役からの働きかけの状況や犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます(事例B-1)。認めるか争うかという二分法ではなく、本人がどの位置にいたかを丁寧に示したことが結果につながりました。

また、複数回にわたり再逮捕された受け子事案において、取調べ対応を徹底し、不当な取調べには都度抗議を行いながら、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます(事例B-2)。

さらに、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例がございます(事例A-1)。争うべき事件では、最後まで争います。

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とワンストップで対応いたします。

おわりに

「弁護士を頼むと不利になる」という話が、なぜ留置場の中で語り継がれるのか。おそらくそれは、弁護人の仕事が外から見えにくいからだろうと思います。見えにくい部分にこそ、不起訴と起訴を分ける作業があります。判断を急がれる前に、一度お話をお聞かせいただければ幸いです。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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