ご家族が逮捕された後、本人の携帯やSNSをどう扱うべきか|善意の行動が罪証隠滅と見られないために
2026/08/22
ご家族が逮捕されたという連絡を受けたとき、多くの方がまず手に取るのが、本人が家に置いていった携帯電話です。誰に連絡すればよいか、勤務先にどう伝えればよいか、預かっているお金はどうすればよいか。調べたいことは山ほどあります。しかし、この場面での操作の仕方によっては、ご本人の身柄拘束が長引き、保釈が認められなくなることがあります。ご家族の善意が、捜査機関の目には別のものに映るからです。この記事は、逮捕直後のご家族に向けて、してはならないことと、してよいことを整理いたします。
本記事の要点
- 本人のSNSや通信アプリの履歴を削除すること、アカウントを消すことは、避けてください。
- 事件の関係者に連絡を取ることも避けてください。口裏合わせと評価されます。
- これらは刑訴法60条1項2号の勾留の理由、及び同法89条4号の保釈却下の理由として、直接に働きます。
- ご家族自身が刑法104条の証拠隠滅罪に問われる場面もあり得ます(配偶者等には同法105条の特則がありますが、常に免れるわけではありません)。
- してよいことは、身元引受書の準備、生活基盤の確保、弁護人への情報提供です。
なぜ「削除」がこれほど重く扱われるのか
日本の刑事手続では、身柄を拘束し続けるかどうかを判断する基準の一つに、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の有無があります(刑訴法60条1項2号)。ここでいう罪証隠滅は、本人が自ら行う場合に限られません。本人の指示による第三者の行為、あるいはご家族が独自に行った行為も、本人と関係者の連絡可能性を示す事情として評価されます。
起訴後の保釈においても、同じ発想が働きます。刑訴法89条4号は、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときを、権利保釈の除外事由としています。逮捕後にご家族が本人のアカウントを整理した、関係者に電話をかけた、という事実が判明すると、この除外事由の認定に直結します。
捜査機関は、押収した端末の通信記録から、逮捕後の通信の有無を確認します。削除したはずのデータも、通信事業者やサーバ側の記録から復元・確認されることがあります。「消したから分からない」という前提は、実務上ほぼ成り立ちません。
ご家族自身が問われる場合
刑法104条は、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅した者を処罰しています。「他人の」とありますので、本人が自分の証拠を隠す行為は同条に当たりません。しかし、ご家族が本人のために証拠を消せば、それは他人の刑事事件の証拠の隠滅です。
もっとも、刑法105条は、犯人の親族がこれらの罪を犯したときは、その刑を免除することができると定めています。「免除することができる」であって「免除しなければならない」ではありませんので、必ず免れるわけではありません。加えて、外国籍のご家族の場合には、たとえ刑が免除されても、捜査対象となった事実そのものが在留の場面で不利に働き得ます。
では、何をしてよいのか
第一に、本人の生活基盤を守ることです。家賃の支払、公共料金、在留カードの有効期限の確認、勤務先への連絡(事件の内容には立ち入らず、欠勤の連絡にとどめる)。これらは、罪証隠滅とは無縁の領域であり、後の量刑や在留審査で「生活の基盤が維持されている」ことを示す資料にもなります。
第二に、身元引受書の準備です。誰が本人を監督するのか、住まいはどこか、就労の予定はどうか。これらを具体的に書面にまとめておくと、勾留に対する準抗告、保釈請求、そして入管手続の各段階で使えます。
第三に、弁護人への情報提供です。本人の携帯を勝手に操作するのではなく、弁護人に預けて、必要な範囲で確認してもらうのが最も安全です。弁護人は、押収の対象になり得る物の扱いを踏まえて判断いたします。
第四に、通訳を介した正確な意思疎通です。ご家族が日本語での説明を十分に理解できないまま行動すると、意図しない結果を招きます。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、ご家族との打合せにも同席いたします。
中国本土のご家族からのご連絡について
中国本土にお住まいのご家族から、微信を通じてご連絡をいただくことがございます。この場合も、本人の関係者に直接連絡を取ることは避けていただき、弁護人を窓口としていただくのが安全です。中国本土から日本への送金には外貨管理の手続を要し、示談金や弁護士費用の準備には日数がかかります。早い段階でご相談いただければ、その段取りも併せてご説明いたします。
当事務所の対応と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。ご家族への状況のご報告も、弁護士本人が行います。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べ対応を徹底し、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます(事例B-2)。複数の事件が並行し、関係者が多数に及ぶ局面では、ご家族の行動一つが身柄の帰趨を左右いたします。
また、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況の下でも、依頼者に有利な証拠を収集し、在留特別許可を獲得した事例がございます(事例D-1)。ご家族にご用意いただいた資料が、決定的な役割を果たすことは少なくありません。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とワンストップで対応いたします。
おわりに
ご家族が突然いなくなった部屋で、残された携帯電話を前にして、何もしないでいることは、おそらく最も難しいことだろうと思います。それでも、何もしないことが最善である場面が、この手続にはございます。代わりに動く者として、弁護人がおります。まずは一度、ご連絡をいただければと存じます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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