舟渡国際法律事務所

執行猶予中に別の事件を起こしてしまったら|執行猶予の取消しと退去強制事由の再評価

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執行猶予中に別の事件を起こしてしまったら|執行猶予の取消しと退去強制事由の再評価

執行猶予中に別の事件を起こしてしまったら|執行猶予の取消しと退去強制事由の再評価

2026/08/22

ひき逃げで有罪判決を受けて執行猶予中の方が、その猶予期間中に無免許運転で摘発された、という報道がありました。同種のご相談は、外国籍の方からも少なくありません。「前の裁判は執行猶予で終わったのだから、在留資格は無事だった。今回もそう深刻ではないだろう」。そのようにお考えの方に、まず知っていただきたいことがあります。執行猶予中の再犯は、今回の事件だけの問題ではなく、前の判決に遡って効き目を及ぼすということです。

本記事の要点

  • 執行猶予中に拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑に執行猶予が付されないときは、前の執行猶予は必ず取り消されます(刑法26条1号)。
  • 取消しにより、前の判決の刑と今回の刑が併せて執行されるため、実際に服する期間は一気に長くなります。
  • 入管法24条4号リは「1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由としており、執行猶予の全部が付された場合を除いています。取消しにより、この除外が失われます。
  • したがって、執行猶予中の再犯では、今回の事件で執行猶予を得られるかどうかが、在留の帰趨をほぼ決定します。
  • 再度の執行猶予には刑法25条2項の厳格な要件があり、その主張には準備が要ります。

執行猶予の取消しは「前の判決が生き返る」こと

刑法26条1号は、猶予の期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは、執行猶予の言渡しを取り消さなければならないと定めています。「取り消すことができる」ではなく「取り消さなければならない」、すなわち必要的取消しです。裁判所に裁量の余地はありません。

取り消されると、前の判決で言い渡された刑が現実の執行の対象となります。仮に前の判決が1年、今回の判決が10月であれば、合わせて1年10月を服することになります。一つひとつの刑は1年以下であっても、合算された時間は在留の観点から決定的な意味を持ちます。

なお、猶予期間中に犯した罪について猶予期間の経過後に判決が確定した場合など、条文の適用関係が複雑になる場面があります。ご自身の事件がどこに当たるかは、判決書と確定日を確認したうえでの検討を要します。

入管法24条4号リとの関係

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としつつ、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いています。この除外規定こそが、これまで多くの外国籍の方の在留を支えてきました。

執行猶予が取り消されるということは、この除外の前提が崩れるということです。前の判決が1年を超える拘禁刑であった場合、取消しによって、それは現に執行される刑となります。したがって、執行猶予中の再犯事案では、前の判決の刑期を確認することが、弁護方針を立てる最初の作業になります。

加えて申し上げれば、退去強制事由に至らない場合でも、在留期間更新の場面が待っています。更新は入管法21条3項の裁量判断であり、ガイドラインは素行が善良であることを求めます。執行猶予中の再犯という経緯は、この判断において重く受け止められます。

では、今回の事件で何を目指すか

目指すべきは、第一に不起訴処分、第二に罰金による処理、第三に再度の執行猶予です。

罰金刑であれば刑法26条1号の要件を満たさず、前の執行猶予は取り消されません(ただし、道路交通法違反等では罰金でも入管の更新審査に影響が及びます)。無免許運転のように法定刑に罰金が定められている罪では、罰金による処理を目指す実益があります。

再度の執行猶予は、刑法25条2項により、前に拘禁刑に処せられたことがあってもその執行を猶予されている者が、1年以下の拘禁刑を言い渡され、情状に特に酌量すべきものがあるときに限って認められます。「特に酌量すべき」という要件のハードルは高く、抽象的な反省の弁では届きません。就労先の確保、家族による監督体制、再犯防止のための具体的な措置(車両の処分、免許取得の計画、通院や治療)を、資料として提出する必要があります。外国籍の方の場合、これに加えて、日本における生活基盤と家族関係を具体的に示すことが、量刑にも在留にも効いてきます。

初動で押さえていただきたいこと

第一に、前の判決書と確定日をお手元にご用意ください。刑期と猶予期間の残りが分からなければ、方針は立ちません。

第二に、取調べでの説明です。「前も同じことをした」という文脈で語ることは、常習性の認定に直結します。憲法38条1項と刑訴法198条2項に基づき、供述を控える選択肢があることを、まずご認識ください。

第三に、通訳です。前の事件の経緯を説明する場面では、時系列と法律用語が入り組みます。捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く通訳を確保することの意味は、この局面でとりわけ大きくなります。

当事務所の対応と解決事例

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、前科・前歴のある外国籍の依頼者の事案にも数多く取り組んでまいりました。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例がございます(事例A-1)。法定刑の重い類型でも、証拠の構造を丁寧に解きほぐせば結論が変わり得ることを示す事例です。

また、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます(事例B-2)。複数事件が並行する局面での方針の立て方は、執行猶予中の再犯事案とも通じるところがございます。

入管手続の側では、婚姻・認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされた事案において、憲法的観点から当局と交渉して手続を成立させ、過去の許可事例を分析したうえで在留特別許可を獲得した事例がございます(事例D-1)。刑事の結果が厳しい場合であっても、入管手続の側で組み立てるべき主張は残されています。

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とワンストップで対応いたします。

おわりに

執行猶予は、社会の中で立ち直る機会を与える制度です。その期間中の再犯が重く扱われるのは、制度の趣旨からすれば当然のことでしょう。もっとも、重く扱われることと、何も語る余地がないこととは違います。なぜ再びその状況に至ったのか、その説明を組み立てる作業は、まだ残されています。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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