貨物や技術の無許可輸出で摘発されたら|外為法違反と就労資格をもつ外国人技術者・貿易担当者の在留
2026/08/22
日本と中国の間で部品や素材、あるいは技術情報をやり取りする仕事に就いておられる方から、「取引先に頼まれて手配しただけなのに、警察から任意で話を聞きたいと言われた」というご相談をいただくことがあります。輸出入をめぐる規制は、関税法だけではありません。安全保障を目的とする外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく規制があり、こちらは経済産業大臣の許可を要する類型を細かく定めています。技術・人文知識・国際業務や経営・管理といった就労資格で在留しておられる方にとって、この分野の立件は在留の基盤を直撃します。
本記事の要点
- 外為法は、貨物の輸出(48条1項)と技術の提供(25条1項)の双方について、経済産業大臣の許可を要求しています。
- 許可を得ずに輸出・提供した場合、外為法69条の6等により重い罰則が定められており、法人にも両罰規定の適用があります。
- 外国人技術者・貿易担当者の場合、「知らなかった」「上司の指示に従っただけ」という弁解が通るかどうかが最大の争点です。
- 1年を超える拘禁刑の実刑となれば入管法24条4号リ、在留資格の基礎となる勤務先を離職すれば入管法22条の4第1項7号の取消し検討という、二方向のリスクが生じます。
- 捜査は長期の任意段階から始まることが多く、任意段階の対応が結論を左右します。
外為法の規制は「モノ」だけではない
外為法の輸出管理には、二つの柱があります。第一が貨物の規制です。同法48条1項は、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められる特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出について、経済産業大臣の許可を要すると定めています。第二が技術の規制です。同法25条1項は、特定の種類の技術を特定の地域において提供することを目的とする取引について、同じく許可を要求しています。
技術の提供には、図面や仕様書のメールでの送信、オンライン会議での説明、来日した技術者への口頭での指導が含まれ得ます。物理的にモノが国境を越えていないから大丈夫、という理解は誤りです。日本国内で外国の方に技術を教示する行為が規制対象となる場面もあり、この点は「みなし輸出」と呼ばれる論点として実務で議論が積み重ねられてきました。
対象となる貨物・技術は、輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表に列記されています。素材、工作機械、測定機器、半導体関連装置、炭素繊維、特定のソフトウェアなど、一見すると民生品にしか見えないものが含まれている点が、この規制の難しさです。
なぜ外国籍の担当者が矢面に立ちやすいのか
この類型では、日本の会社に勤務する外国籍の技術者・貿易担当者が、最初に事情聴取を受けることが少なくありません。海外の取引先とのやり取りを直接担当し、メールや通信アプリの記録が本人名義で残っているためです。会社としての意思決定に関与していなくとも、記録の上では本人が手配の中心に見えてしまいます。
弁護活動の要は、組織における本人の位置づけを正確に描き出すことです。稟議・決裁の記録、該非判定(対象貨物・技術に当たるかどうかの社内判定)を誰が行ったか、輸出管理の社内規程と研修の実施状況、本人がその研修を受けていたか、通訳・翻訳を介して内容を理解し得たか。これらは、故意はもとより、過失の程度を左右する事情です。
ここで、当事務所が刑事事件と入管手続の双方で一貫して重視してきた視点が働きます。すなわち、責任は本人の認識と関与の実質に即して問われるべきであって、記録上の名義や形式的な担当者であることのみをもって帰責してはならない、という視点です。
在留への影響は二方向から生じる
第一の方向は、判決の重さです。外為法違反は法定刑が重く、事案によっては実刑が選択されます。無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合、入管法24条4号リの退去強制事由に該当し得ます。同号は執行猶予が全部付された場合を除いていますので、執行猶予付き判決が直ちに退去強制に結び付くわけではありません。
第二の方向は、勤務先との関係です。技術・人文知識・国際業務や経営・管理といった別表第一の在留資格は、特定の活動を行うことを前提としています。事件を契機に休職・解雇となり、当該活動を継続して3か月以上行っていない状態が生じると、入管法22条の4第1項7号による在留資格の取消しが検討される場面が生じます。正当な理由があれば取消しはされませんが、その「正当な理由」を説明する資料は、こちらから積極的に用意する必要があります。
刑事の見通しがまだ立たない段階から、在留の側も並行して手当てする。この二正面の設計が、外国人事件の弁護の眼目です。
任意段階でしていただきたいこと
外為法違反の捜査は、会社への任意の資料提出要請から始まり、長期間をかけて進むことが多い分野です。逮捕されていないから大丈夫だ、という判断は禁物です。任意段階で提出した資料と述べた説明が、後の立件範囲を事実上決めてしまうことがあります。
会社の顧問弁護士が対応する場合、その弁護士は会社の利益を守る立場にあります。会社の説明と担当者個人の説明が食い違う局面では、個人としての弁護人を別に選任することをご検討ください。日本語での微妙なニュアンスの説明が求められる場面ですので、通訳を介した打合せの質もまた、結論に影響します。
当事務所の対応と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、国際的な要素を含む刑事事件と、企業内の紛争が背景にある事案の双方に取り組んでまいりました。
外資系企業の支配権紛争において依頼者側の勝訴を獲得した事例(事例H-2)、虚偽の株主総会決議による代表取締役解任事件で東京地裁・東京高裁のいずれにおいても勝訴した事例(事例H-1)がございます。会社の意思決定がどのように形成されたかを記録から立証する作業は、外為法違反における該非判定と決裁経路の解明に直結いたします。
また、国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された事件への対応経験を有しており(事例E-1)、捜査が長期に及ぶ事案の見通しの立て方についても、実務的なご説明が可能です。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とワンストップで対応いたします。
おわりに
輸出管理の分野は、条文を読んだだけでは対象範囲が見えてきません。だからこそ、担当者個人が「知らなかった」ことに現実味があります。同時に、その現実味を裁判官と検察官に伝えるには、社内の資料と本人の経歴を丁寧に積み上げる作業が要ります。お一人で説明を続けるより前に、一度ご相談いただければと存じます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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