中国語SNSの「荷受け・転送」バイトで逮捕されたら|盗品等関与・犯罪収益の疑いと在留資格
2026/08/22
中国語のSNSで「荷物を受け取って別の住所へ送るだけ。1個あたり1,400円から2,000円」といった募集を見て応募した、という相談が、このところ続いています。報道でも、他人名義のクレジットカード情報で購入された家電・化粧品・音響機器等を受け取り、転売に回していたグループが摘発され、中国籍の方を含む複数名が逮捕された事案が伝えられました。受け取る側は、自分は運んだだけだと考えていることが多いのですが、捜査機関の見立ては、多くの場合それとは異なります。日本に在留しながらこうした募集に応じてしまった方、そのご家族に向けて、法的な位置づけと在留への影響を整理いたします。
本記事の要点
- 荷物を受け取って転送するだけでも、詐欺罪の共犯、盗品等有償譲受け・運搬(刑法256条)、犯罪収益等の収受(組織的犯罪処罰法11条)のいずれかで立件され得ます。
- 争点は「知っていたか」に集約されます。報酬額の不自然さ、身分証の提示要求がないこと、受取名義の使い分け等が、故意の推認材料として用いられます。
- 詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑であり、1年を超える実刑となれば入管法24条4号リの退去強制事由に当たり得ます。
- 転売の出口で古物営業法上の無許可営業(同法3条)が併せて問われることがあります。
- 起訴前の段階で不起訴処分を得ることが、在留資格を守るうえで決定的です。
受け取って送っただけでも罪に問われるのか
結論から申し上げますと、問われます。日本の刑事実務では、荷物の受取・転送役は「詐取品の受領」という犯行の一部を担った者と評価されることが少なくありません。カード情報を悪用して商品を購入する行為は、加盟店に対する欺罔行為として詐欺罪(刑法246条)に当たり、その商品を受け取って指示どおり転送すれば、詐欺の共同正犯又は幇助として構成される余地があります。
仮に詐欺の共犯として構成しきれない場合でも、捜査機関には次の受け皿があります。第一に、盗品等有償譲受け・運搬・保管の罪(刑法256条1項・2項)です。詐欺により領得された財物も「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に含まれます。第二に、組織的犯罪処罰法11条の犯罪収益等収受の罪です。報酬として受け取った金銭が、犯罪収益であると知りながら受領したものと評価される場面です。
さらに、受け取った商品をフリマアプリや買取店で反復継続して換金していた場合には、古物営業法3条の許可なく古物営業を営んだものとして、同法上の罰則が問われることがあります。1件の荷受けが、複数の罪名に枝分かれしていく構造だとお考えください。
争点は「知らなかった」と言えるかどうか
この類型の弁護活動は、ほぼ全てが故意の有無に集約されます。日本の刑法では、確定的な認識がなくとも、「不正な商品かもしれないが、それでも構わない」という未必の故意があれば足りるとされています。捜査機関は、次のような事情を積み上げて未必の故意を推認しようとします。
- 作業内容に比して報酬が高額であること
- 雇用契約書も身分証の提示要求もなく、連絡手段がSNSのみであること
- 受取名義に他人名や架空名を用いるよう指示されていたこと
- グループへの照会に対して指示役が説明を避けていたこと
弁護人としては、この推認の環をひとつずつ検討します。募集画面の文言、指示役とのやり取りの原文、報酬の実際の入金状況、本人の日本語能力と在留状況、同種の正規のアルバイトの相場。これらを具体的な資料として提出し、「本人の認識水準では不正を認識し得なかった」という主張を組み立てます。ここで、通訳を介した供述調書の記載が不正確であれば、防御の土台そのものが崩れます。取調べ段階での通訳の質が結果を左右するという指摘は、この類型でとりわけ切実です。
在留資格への影響
詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑、盗品等有償譲受け罪は10年以下の拘禁刑及び50万円以下の罰金です。組織性が認定されれば求刑は重くなり、実刑判決の可能性が現実味を帯びます。1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合、入管法24条4号リの退去強制事由に該当し得ます。同号は執行猶予が全部付された場合を除外していますので、執行猶予付き判決であれば直ちに同号に該当するわけではありません。もっとも、それで安心できるわけではありません。在留期間の更新は入管法21条3項の裁量判断であり、更新のガイドラインは素行が善良であることを要求します。有罪判決を受けた事実は、更新の場面で正面から評価されます。
なお、令和5年改正入管法により、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた方については、在留特別許可は「在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」がある場合に限られます(入管法50条1項ただし書)。実刑を避けること、そもそも起訴を避けることの重みは、この改正によって一段と増しました。
初動で押さえていただきたいこと
第一に、取調べで安易に「たぶん怪しいとは思っていました」と述べないことです。この一言が未必の故意の認定に直結します。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されない権利を保障しており、刑訴法198条2項により供述を拒むことができます。
第二に、弁護人の選任を急ぐことです。当番弁護士の呼出しは警察官に申し出れば可能ですが、外国人事件では入管手続まで見通した方針が必要であり、私選弁護人の選任をご検討いただく意義があります。
第三に、通訳です。捜査機関が手配する通訳人は必ずしも法律用語の専門家ではなく、方言への対応も一様ではありません。弁護人側で独自に通訳を手配することが、供述の正確性を担保します。
当事務所の対応と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べ対応を徹底し、不当な取調べに対しては都度抗議を行いながら主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます(事例B-2)。荷受け・転送役の事案と防御の構造がよく似ており、故意の推認をどこで断ち切るかが勝負どころでした。
また、卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得しております(事例C-1)。詐欺の資金の流れを追跡した経験は、加害者側の事案において「本人がどの位置にいたか」を的確に主張する力にもなります。
さらに、不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められました(事例D-2)。刑事段階で故意を争うことが、後の入管手続における主張の基礎を成すという考え方は、荷受け役の事案にもそのまま当てはまります。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とワンストップで対応いたします。
おわりに
「送るだけ」と言われて始めた作業が、詐欺・盗品等関与・犯罪収益収受という三本の線で組み立てられていく。この落差こそが、この類型の怖さです。逆に申し上げれば、落差があるということは、本人の認識について語るべきことが必ず残っているということでもあります。ご家族から一報をいただいた段階で、まだ打てる手はございます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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