「起訴されただけで前科ではないから在留には影響しない」という誤解|捜査中・公判中の在留期間更新
2026/08/21
刑事事件で起訴されたものの、保釈が認められて日常生活に戻られた方から、「判決はまだ出ていないのだから、在留期間の更新には影響しないはずだ」というお話を伺うことがあります。無罪推定という考え方からすれば、自然な受け止めかもしれません。しかし、在留期間更新の審査は、刑事裁判の結論を待って行われるわけではありません。今回は、この時間差の問題を整理します。
本記事の要点
- 在留期間の更新は、入管法21条3項により、相当の理由があるときに許可されるという構造をとっています。有罪判決の有無だけで決まるものではありません。
- 更新の審査では、在留状況全般が見られます。刑事手続が係属している事実そのものが、審査の考慮要素とされ得ます。
- 在留期限は刑事裁判の進行と無関係に到来します。判決を待っていると、期限を徒過してしまいます。
- 勾留が長引いた場合、入管法22条の4が定める、活動を継続して3か月以上行っていないことによる在留資格取消しの問題が生じ得ます。
- 在宅で公判が続く間も、次の更新に向けた準備を並行して進める必要があります。
刑事の時間と入管の時間は別に流れている
刑事裁判は、争いのある事件であれば1年近く、あるいはそれ以上かかることも珍しくありません。他方、在留期間は1年、3年といった単位で定められており、その満了日は裁判の進行を待ってくれません。判決を待って更新申請をするという選択は、期限を過ぎれば不法残留という別の問題を生むことになります。
更新の申請は期限内に行い、そのうえで、現に係属している刑事事件についてどのように説明するかを検討する。これが実務上の順序です。説明を避けると、かえって在留状況の把握を妨げたと受け取られかねません。
「前科がないから素行は問題ない」といえるか
在留期間更新の審査で見られる素行は、確定した前科の有無に尽きるものではありません。在留資格に応じた活動を継続しているか、届出義務を果たしているか、納税や社会保険の状況はどうか、といった在留状況全般が対象となります。起訴されて公判が続いている状態は、それ自体が有罪を意味するものではありませんが、審査において考慮されないと考えるのは早計です。
他方で、無罪推定の要請は行政手続の場面でも軽んじられてよいものではありません。当事務所は、確定していない刑事責任を前提に不利益を課すことの当否について、責任主義や適正手続の観点から検討を重ねてまいりました。松村大介弁護士は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務に対し、その射程を正面から問う訴訟を提起し、係争してまいりました(事例D-2)。この問題意識は、判決確定前の在留審査という場面にも通じるものです。
実務としての備え
- 在留期限を確認し、期限内に申請できるよう逆算してください。保釈中で移動の制限がある場合は、その点も含めて弁護人に相談してください。
- 就労資格の方は、勤務の継続を可能な限り確保してください。活動の実体が失われると、22条の4の問題が現実化します。
- 刑事の弁護人と、入管手続を担う専門家が別々に動くと、説明の整合が取れなくなります。窓口を一本化することをお勧めいたします。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、刑事手続と入管手続を一体として設計する弁護方針を採っております。冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案では、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められました(事例D-2)。
また、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について、主観的事情を総合的に主張し不起訴処分を獲得した事例もございます(事例B-1)。起訴前の段階で処分を得られれば、その後の在留審査の前提そのものが変わります。だからこそ、当事務所は執行猶予ではなく不起訴処分の獲得を最優先目標に据えております。接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当いたします。
おわりに
裁判の結論が出るまでは何も動かないほうがよい、と考えたくなるお気持ちはよく分かります。しかし在留の手続は、その間も静かに期限を刻んでいます。二つの時間が別々に流れていることを意識するだけで、打つべき手は見えてきます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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