舟渡国際法律事務所

「日本語ができるから通訳は要らない」という誤解|供述調書はどう作られるのか

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「日本語ができるから通訳は要らない」という誤解|供述調書はどう作られるのか

「日本語ができるから通訳は要らない」という誤解|供述調書はどう作られるのか

2026/08/21

日本での生活が長い方、大学を日本語で卒業された方、職場で日常的に日本語を使っておられる方ほど、取調べの場で「通訳は結構です」とお答えになることがあります。ご本人としては、余計な時間をかけたくない、日本語ができないと思われたくない、という自然なお気持ちからです。しかし、この判断が後の公判や入管手続で重い意味を持つことがあります。今回は、供述調書がどのように作られるのかという点から、この誤解を解いてみたいと思います。

本記事の要点

  • 供述調書は、話した言葉をそのまま記録したものではなく、取調官が要約して日本語の文章にまとめたものです。
  • 日常会話の能力と、法律用語の含意を正確に理解する能力は、別のものです。
  • 刑事訴訟法198条には、供述調書の閲読・読み聞かせと、増減変更の申立て、そして署名押印を拒むことができる旨の定めがあります。
  • 捜査機関が手配する通訳人は、依頼者のために動く立場ではありません。弁護人側で通訳を用意する意味はここにあります。
  • 供述の食い違いは、刑事事件だけでなく、その後の在留審査の場面にも影響します。

供述調書は要約された日本語の文章である

取調べでのやり取りは、そのまま逐語で調書になるわけではありません。取調官が聞き取った内容を整理し、日本語の文章として構成します。ここで、微妙な言い回しが落ちます。「知っていたかもしれない」が「知っていた」に、「頼まれて渡した」が「指示されて運んだ」に。日本語で会話ができる方であっても、こうした差を読み取り、その場で修正を求めることは容易ではありません。

とりわけ、故意や認識に関わる表現は、一語の違いが結論を分けます。共謀の認識、営利の目的、廃棄物性の認識、在留カードの確認の程度。いずれも、日常会話の語感で判断できる事柄ではありません。

署名押印を求められたとき

調書が作成されると、内容を読み聞かせられ、あるいは自分で読んだうえで、署名押印を求められます。刑事訴訟法198条は、増減変更の申立てができること、そして署名押印を拒むことができることを定めています。内容に納得できないまま署名する必要はありません。もっとも、その場で冷静に判断するのは難しいものです。だからこそ、事前に弁護人と打合せをしておくこと、そして必要に応じて弁護人側の通訳を介して内容を確認することに意味があります。

在留手続への波及

供述調書は刑事手続の中だけで完結しません。刑事記録は、その後の退去強制手続や在留審査の場面で、事実認定の基礎として参照され得ます。刑事の段階で不正確なまま固まった供述が、入管手続で覆すべき前提として立ちはだかることがあります。外国人事件において、刑事と入管を分けて考えることができないと申し上げているのは、こうした構造があるからです。

初動で押さえたい3つのこと

  • 通訳を付けることは、日本語力を否定することではありません。正確さを担保するための手続上の権利の行使です。
  • 取調べ前に弁護人と接見し、争点になりそうな用語の意味を確認しておいてください。
  • 調書に納得できない部分があれば、その場で申し立ててください。後から「本当は違う」と述べても、その説明の負担は重くなります。

当事務所について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)には、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。捜査機関が指定する通訳人とは異なり、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、接見・打合せ・取調べに向けた準備の全般にわたってご利用いただけます。

松村大介弁護士は、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例(事例A-1)、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案で全件について不起訴処分を得た事例(事例B-2)を担当しております。いずれも、供述の意味を一語ずつ吟味することが結果を左右した類型です。また、裁判員裁判対象事件や世界的に報道された事件への対応経験も有しております(事例E-1)。接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当いたします。

おわりに

日本語が話せることは、この国で生きてこられた証しです。それを疑う必要はありません。ただ、取調べの場で問われているのは会話の力ではなく、記録として残る言葉の正確さです。両者は別のものだと知っておいていただくだけで、守れるものがあります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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電話番号 :050-7587-4639


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