同胞コミュニティ内の貸付が犯罪になるとき|貸金業法違反・出資法違反と在留への影響
2026/08/21
在日中国人のコミュニティでは、銀行融資を受けにくい方に対し、知人が手元の資金を融通するという場面が珍しくありません。しかし、それが反復継続して行われ、しかも高い利息を伴う場合、無登録営業として貸金業法違反に問われ、利率次第では出資法違反も成立し得ます。「困っている人を助けただけ」というご説明を伺うこともありますが、法の評価は行為の外形と反復性に着目します。この記事は、そうした貸付をめぐって警察から連絡を受けた方、また事情を聴かれたご家族に向けたものです。
本記事の要点
- 登録を受けずに貸金業を営んだ場合、貸金業法により10年以下の拘禁刑若しくは3000万円以下の罰金、又はその併科という重い法定刑が定められています。
- 出資法5条は超高金利での貸付を処罰しており、著しく高い利率の場合はさらに重い類型が設けられています。
- 「業として」に当たるかは、反復継続の意思をもって行われたかで判断され、相手方の人数や期間、広告の有無などが考慮されます。
- 1年を超える実刑となれば入管法24条4号リの退去強制事由に触れ得るほか、在留期間更新の審査でも重く見られます。
- 回収の場面で強い言動があった場合、恐喝や脅迫として別途立件されることがあります。
どのような場合に立件されるのか
端緒は、借主側からの相談や被害申告、あるいは資金の流れをたどる捜査であることが多いところです。微信でのやり取り、送金記録、借用書、利息の計算メモといった資料が押収され、貸付の件数と期間、実際の利率が明らかにされます。争点は、まず「業として」の要件です。一人の知人に一度だけ貸したのであれば通常は問題になりませんが、複数の相手に繰り返し貸し付け、利息を得ていた場合には、営業性が認められやすくなります。次に、利息の計算です。天引きや手数料の名目で実質的な利率が上がっている場合、当事者の認識と法的な評価がずれることがあります。
在留資格への影響
この類型で最も注意すべきは、刑の重さと在留の帰趨が単純に比例しないという点です。1年を超える実刑となれば入管法24条4号リの問題が生じますが、罰金や執行猶予にとどまった場合であっても、在留期間更新の審査では素行が問われます。特に経営・管理や技術・人文知識・国際業務といった就労資格の場合、本業とは別に金銭の貸付を反復していた事実そのものが、在留資格に応じた活動といえるのかという疑問を招きかねません。資格外活動(入管法24条4号ハ)の観点からも検討が必要です。
不起訴を目指すために
弁護活動では、貸付の実態を正確に切り分けることが出発点となります。純粋な個人的貸借であった部分と、営業性が疑われる部分を区別し、利息の受領の有無と金額を裏付ける資料を整理します。借主との間で清算が可能であれば、過払い分の返還を含む清算を行い、その事実を疎明します。そのうえで、行為の期間、規模、動機、生活状況を踏まえた意見書を検察官に提出し、起訴猶予を求めていきます。外国人事件では、執行猶予付き判決を得ても在留を失う場合があるため、起訴前の段階での解決に全力を注ぐ必要があります。
初動で押さえたい3つのこと
- 取調べには黙秘権があります。曖昧な記憶のまま貸付の件数や利率を答えることは、後の事実認定に影響します。
- 微信の履歴や送金記録は、不利にも有利にも働く証拠です。自ら消去せず、弁護人と保全の方法を相談してください。
- 利息や手数料をめぐる説明は、通訳の正確さに左右されます。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、金銭の授受をめぐる刑事事件に数多く対応してまいりました。特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性について、指示役からの働きかけや犯意の不存在を含む主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます(事例B-1)。
また、卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得しております(事例C-1)。金銭をめぐる紛争は、加害と被害の位置が入れ替わることも珍しくありません。当事務所では、当事者の立場を固定せず、事案の全体像から方針を組み立てます。入管手続の場面では、困難とされた在留特別許可を獲得した実績もございます(事例D-1)。
おわりに
助け合いのつもりで始まった資金の融通が、いつの間にか法の線を越えていた。この類型では、そうした経緯を丁寧にたどることが、そのまま防御となります。記録が散逸する前に、弁護人と事実関係を整理されることをお勧めいたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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