脱税で立件された外国人経営者へ|法人税法違反・所得税法違反と経営・管理の在留資格
2026/08/21
在日中国人の方が経営される会社について、国税当局の査察を受け、あるいは告発を経て刑事事件となる事案が報じられています。人件費の水増しや架空外注費の計上といった手口が指摘されることもあります。経営者ご本人が外国籍である場合、この種の事件は「税の問題」にとどまらず、事業と在留資格の双方を同時に失いかねない事態へと発展します。この記事は、査察を受けた段階の方、また告発・逮捕の知らせに直面されたご家族に向けたものです。
本記事の要点
- 法人税法159条1項の逋脱犯は10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科と定められており、決して軽い罪ではありません。
- 実刑で1年を超える拘禁刑となれば、入管法24条4号リの退去強制事由に該当し得ます。執行猶予が全部付された場合は同号から除外されますが、それで安心はできません。
- 経営・管理の在留資格は事業の適正性と継続性を前提とするため、更新(入管法21条3項)の場面で重い意味を持ちます。
- 国税犯則調査は任意調査とは別の手続であり、供述の位置付けが異なります。早い段階での方針決定が要となります。
- 不起訴、あるいは略式による罰金にとどめられるかどうかで、その後の在留の見通しは大きく変わります。
査察から刑事手続へ
税務署の一般調査と異なり、国税局査察部による犯則調査は、裁判所の許可状に基づく臨検・捜索・差押えを伴います。帳簿、パソコン、通帳、携帯電話が押収され、関係者の質問てん末書が作成されます。調査の結果、検察官に告発されると、そこから刑事事件としての捜査が始まります。逮捕を伴わない在宅事件として進むことも少なくありませんが、在宅であっても起訴の可能性がなくなるわけではありません。
争点になりやすいのは、支出の実体があったかどうか、そして経営者がその処理を認識していたかどうかです。会計処理を税理士や経理担当に委ねていた場合、どこまでを本人の認識と評価できるかが問題となります。ここは、まさに故意の有無をめぐる争いです。
在留資格への影響
退去強制事由のうち、この類型で主に問題となるのは入管法24条4号リです。同号は「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を対象とし、刑の全部の執行猶予を言い渡された場合を除外しています。したがって、実刑を避けられるかどうかが決定的な分岐点になります。
もっとも、退去強制を免れたとしても、その先に在留期間更新の審査が控えています。経営・管理の在留資格は、事業の適正な運営を前提としています。刑事処分を受けた事実に加え、法人の存続、納税の是正、事業実態の維持といった要素が総合的に見られることになります。修正申告と本税・加算税の納付を早期に済ませ、その資料を整えておくことは、刑事の情状であると同時に、入管審査に向けた準備でもあります。
不起訴・略式に持ち込むための活動
脱税事件では、逋脱額の規模、手口の計画性、是正の状況が処分を大きく左右します。当事務所では、告発前後の早い段階から、税理士と連携して事実関係を精査し、認識の及ばなかった範囲を切り分け、修正申告と納付の実績を積み上げたうえで、検察官に対し意見書を提出するという流れを重視しています。刑事処分の見通しがそのまま在留の見通しに直結する以上、量刑論と入管論は初めから一体として設計する必要があります。
初動で押さえたい3つのこと
- 質問調査における応答は記録化されます。数字の記憶が不確かなまま断定的に答えることは避け、資料に基づいて回答する姿勢を保つことが大切です。
- 会社の代理人と、経営者個人の弁護人とでは、利益が一致しない場面があります。個人の立場で相談できる弁護人を確保しておくことをお勧めいたします。
- 打合せに際しては、通訳の正確さが不可欠です。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、会計用語を含む込み入った説明にも対応いたします。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、外国人刑事弁護と入管手続に加え、企業をめぐる紛争にも対応してまいりました。虚偽の株主総会決議による代表取締役解任が争われた事件では、決議が不存在であると主張し、東京地裁・東京高裁のいずれにおいても勝訴しております(事例H-1)。また、外資系企業の支配権紛争において依頼者側の勝訴を得た事例もございます(事例H-2)。
被害回復の場面では、卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案において、刑事告訴を端緒に相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得した事例がございます(事例C-1)。会社をめぐる刑事事件は、その背後に取引先や役員間の紛争を抱えていることが少なくありません。当事務所では、刑事・民事・入管を横断して事案の全体像を把握したうえで方針を立てております。
おわりに
税務の争いは数字の争いに見えますが、刑事事件になった瞬間から、争点は「その数字を誰がどう認識していたか」に移ります。そして外国籍の経営者にとっては、その先に在留という、事業と生活の土台そのものが控えています。査察が入った段階で、税務の代理人とは別に、刑事と入管を見通せる弁護人にご相談いただくことをお勧めいたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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