特定技能の支援機関・受入企業が不法就労助長罪に問われたら|入管法73条の2と退去強制事由24条4号ヌ
2026/08/21
外国人材の受入れが広がるにつれ、雇用する側・支援する側が刑事責任を問われる事案の報道が目立つようになりました。特定技能外国人の登録支援機関の代表者が不法就労助長の疑いで逮捕された、といった報道も伝えられています。ここで見落とされがちなのは、支援機関や受入企業の役員・担当者ご自身が外国籍である場合、その方の在留資格そのものが危うくなるという点です。この記事は、そうした立場で捜査の対象となった方、また突然ご家族が逮捕されたという知らせを受けた方に向けて書いています。
本記事の要点
- 不法就労助長罪(入管法73条の2)の法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科です。
- 同条第2項により、在留カードの確認等を怠っていた場合、「知らなかった」という弁解だけでは処罰を免れられません。ただし過失がなかったときは別です。
- 外国籍の役員・担当者ご本人については、入管法24条4号ヌが退去強制事由を定めており、刑の重さを問わずに該当し得る構造となっています。
- したがって、執行猶予の獲得を目標に据えるのでは足りず、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先とすべき類型です。
- 「過失がなかったとき」の立証は、刑事手続と入管手続の双方を貫く防御線になります。
捜査はどのように進むのか
この類型の捜査は、出入国在留管理局の摘発や、就労している外国人本人の摘発を端緒として始まることが多く、雇用契約書、給与台帳、勤怠記録、面接時のやり取り、社内チャットの履歴といった客観資料が一斉に押収されます。逮捕された場合、48時間以内に検察官へ送致され、勾留が決まればそこから原則10日、延長でさらに10日と身柄拘束が続きます。この勾留決定までの72時間に弁護人が動けるかどうかが、その後の展開を大きく左右します。
捜査機関の関心は、多くの場合「在留カードの偽変造を見抜けたか」ではなく「確認を尽くしたか」に向けられます。採用時の確認手順、在留カード等読取アプリケーションの使用の有無、疑わしい点に気付いた後の対応の記録が、そのまま故意・過失の評価材料になります。
外国籍の経営者・担当者にとっての退去強制リスク
入管法24条4号ヌは、他の外国人が不法就労活動を行うことをあっせん等した者を退去強制事由として掲げています。ここで重要なのは、同じ4号でも号ごとに構造が異なるという点です。4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」という刑の重さを要件としており、執行猶予が全部付された場合には除外されます。これに対し、4号ヌのような類型では、刑の重さを要件としない構造がとられています。「罰金で済んだから在留には響かない」という理解は、この号の構造を踏まえていないことになります。
また、退去強制に至らない場合でも、在留期間更新(入管法21条3項)の審査において素行が問題とされ、経営・管理や技術・人文知識・国際業務といった在留資格の更新が認められないという結末もあり得ます。刑事処分の軽重と在留の帰趨は、必ずしも比例しません。
不起訴処分を最優先目標に据える理由
多くの弁護活動は執行猶予の獲得を目標に組み立てられます。しかし外国人事件では、執行猶予判決を得ても在留を失うという結果が現実に生じます。したがって、当事務所では起訴前の段階から、不起訴処分の獲得を最優先目標として弁護方針を組み立てています。具体的には、採用時の確認記録の収集と整理、実際に確認を担当した従業員からの聴取、業界慣行との対比、被疑者本人の関与の程度を示す資料の提出、検察官との面談による意見書の交付といった活動を、勾留期間中に集中的に行います。
初動で押さえたい3つのこと
- 取調べでは黙秘権があります。記憶が曖昧なまま「確認は甘かったかもしれない」と述べてしまうと、その一言が過失の認定に直結します。
- 当番弁護士の派遣を求めることができます。もっとも、その後の見通しを立てるには、入管法の構造に通じた弁護人を早期に選任することが望ましいところです。
- 通訳の質は結果を左右します。捜査機関が手配する通訳人は、依頼者のために動く立場ではありません。当事務所では、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、接見・打合せ・取調べを見据えた準備に同席いたします。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。当事務所の最大の特徴として、松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。
不法就労助長の類型に関しては、冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案において、「退去強制事由には故意・過失を要しない」とする従来の実務に対し、責任主義の射程を正面から問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められた事例を担当しております(事例D-2)。また、婚姻・認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされた事案において、憲法的観点から当局と交渉し、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況下で在留特別許可を獲得した事例もございます(事例D-1)。
刑事手続の終了後には、提携の行政書士とともに在留資格の更新・変更にもワンストップで対応しております。
おわりに
採用の現場では、書類の形式が整っていれば足りると考えられがちです。しかし、この類型で問われているのは書類の体裁ではなく、確認という行為の中身です。そして、その中身をいちばん正確に語れるのは、実際に現場で対応された方ご自身にほかなりません。記憶が新しいうちに弁護人と事実を整理することが、刑事と入管の双方における最初の一歩となります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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