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永住者でも在留資格を失うのか|入管法22条の4の構造と、2026年8月に公表された取消しガイドライン案

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永住者でも在留資格を失うのか|入管法22条の4の構造と、2026年8月に公表された取消しガイドライン案

永住者でも在留資格を失うのか|入管法22条の4の構造と、2026年8月に公表された取消しガイドライン案

2026/08/20

2026年8月4日、出入国在留管理庁は、永住許可に関するガイドラインの改定案とともに、永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案を公表し、意見公募の手続を開始したと報じられております。これに対し、同月7日には、永住許可の厳格化に反対する立場からの緊急集会が開かれたとも伝えられております。

永住者は、在留期間の定めがなく、活動の制限もない、最も安定した地位です。それだけに、「永住を取れば、もう心配はいらない」と理解されている方が少なくございません。本記事では、その理解がどこまで正しく、どこから修正を要するのかを、条文に即して整理いたします。なお、ガイドライン案は意見公募の段階にあり、最終的な内容は確定しておりません。改正法の施行日も政令に委ねられており、この点は現時点で未確認です。

本記事の要点

  • 永住者であっても、退去強制事由(入管法24条)に該当すれば退去強制の対象となる。
  • 在留資格の取消しは、入管法22条の4に定められた事由に限られる。
  • 令和6年の法改正により、永住者に関する取消事由が追加されたと報じられており、公租公課の不払いや一定の法令違反が対象とされている。
  • 取消しの手続には意見の聴取が定められており(入管法22条の4第4項)、手続的な防御の機会が保障されている。
  • 取消しがされる場合でも、直ちに退去を求められるとは限らず、他の在留資格への変更の余地が問題となる。

1 永住者と退去強制事由の関係

まず確認しておきたいのは、永住者であることは、退去強制事由の適用を免れる理由にはならないという点です。入管法24条各号は、在留資格の種類によって適用を区別しておりません。

したがって、永住者の方であっても、薬物に関する法令違反で有罪の言渡しを受ければ同条4号チに、1年を超える拘禁刑の実刑を受ければ同条4号リに該当いたします。もっとも、永住者は日本での生活の基盤が厚いことが通常ですので、退去強制手続に進んだ場合、在留特別許可の判断において在留の期間、家族関係、生活の実態といった事情が重く考慮されることになります(入管法50条5項各号)。

2 在留資格の取消しという別の制度

退去強制とは別に、入管法22条の4は在留資格の取消しを定めております。これは、在留資格を得た経緯や、その後の活動状況に問題がある場合に、在留資格そのものを取り消す制度です。同条1項各号には、偽りその他不正の手段により上陸許可等を受けた場合、虚偽の申請により在留資格の変更等を受けた場合、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合、届出をせずに住居地を変更した場合などが定められております。

永住者は活動に制限のない在留資格ですので、従来、活動を行っていないことを理由とする取消しは、その性質上問題となりにくいものでした。ここに変化をもたらすのが、令和6年の法改正です。

3 令和6年改正と、公表されたガイドライン案

報道及び出入国在留管理庁の公表資料によれば、令和6年に成立した改正により、永住者について、故意に公租公課の支払をしない場合や、一定の法令違反により処罰された場合を取消事由とする規定が加えられたとされております。今回公表されたガイドライン案は、その運用の基準を示すものと位置づけられております。

この改正については、すでに日本で生活の基盤を築いた方の法的地位を不安定にするものであるとして、支援団体等から強い懸念が示されております。永住者は、日本社会に定着し、家族を持ち、住宅を取得している方が多く、その地位を事後的に覆すことの重みは、他の在留資格とは質的に異なります。

当事務所は、退去強制や在留資格の取消しといった重大な不利益処分について、客観的な事実の存在のみで一律に判断してよいのかという問題意識を持ち続けてまいりました。退去強制事由の判断において故意・過失は要件とされないとする従来の入管実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して争ってきたのも、この問題意識に基づくものです(事例D-2)。公租公課の不払いを理由とする取消しについても、「故意に」という要件が実際にどのように認定されるのか、収入の減少や病気といった事情がどこまで考慮されるのかが、今後の実務における最大の争点になるものと考えております。

4 手続的な防御の機会

在留資格の取消しは、行政による重大な不利益処分です。入管法22条の4第4項は、取消しをしようとする場合に、あらかじめ当該外国人に対して意見の聴取を行わなければならない旨を定めております。意見の聴取の期日には、資料を提出し、意見を述べることができます。

この機会をどう使うかが、結論を左右いたします。通知を受け取ってから期日までの期間は限られておりますので、その間に事実関係を整理し、資料を揃え、必要であれば代理人を立てる判断を速やかに行う必要がございます。何もしないまま期日を迎えることは、避けるべきです。

5 刑事事件との接続

永住者の方が刑事事件の当事者となった場合、影響は二方向に及びます。一つは、有罪判決の内容による退去強制事由の該当性。もう一つは、法令違反を理由とする在留資格取消しの可能性です。いずれについても、起訴前の段階で不起訴処分を得ることが、最も確実な防御となります。

「永住者だから、多少のことでは動かない」という前提は、法改正を経た現在、見直しを要します。逆に言えば、永住者としての長い在留の実績、納税の状況、家族の状況といった事情は、適切な形で示せば強い防御材料となります。それを示す場面と方法を誤らないことが重要です。

6 当事務所について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。

入管手続の面では、退去強制事由の判断における故意・過失の要否を正面から争い、その後に在留特別許可が認められた事例(事例D-2)のほか、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況の中で有利な証拠を収集し、過去の許可事例を分析することで在留特別許可を獲得した事例(事例D-1)がございます。在留資格の更新・変更については、提携する行政書士と連携して対応いたします。

結語

永住者という地位は、長い年月をかけて築かれるものです。その地位に関する制度が動こうとしている以上、条文と運用の基準を正確に把握しておくことには、実際的な意味がございます。ご自身やご家族に関わる可能性があるとお感じになった場合には、早めに事実関係を整理しておかれることをお勧めいたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。なお、本記事で触れたガイドライン案は意見公募の段階にあり、最終的な内容および施行の時期は確定しておりません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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