舟渡国際法律事務所

内容の分からない調書に署名してしまったら|刑事訴訟法198条5項の署名押印拒否権と、その後にできること

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内容の分からない調書に署名してしまったら|刑事訴訟法198条5項の署名押印拒否権と、その後にできること

内容の分からない調書に署名してしまったら|刑事訴訟法198条5項の署名押印拒否権と、その後にできること

2026/08/20

接見に伺うと、「よく分からないまま、たくさんの書類に名前を書いた」とおっしゃる方が少なくございません。通訳を介して読み聞かせがあったはずなのに、内容を思い出せない。早く帰りたい一心で、言われるままに署名した。外国籍の方の刑事事件では、これがきわめてよくある出発点です。

本記事は、すでに署名してしまった方と、そのご家族に向けたものです。結論から申し上げますと、署名した調書は強い証拠となりますが、それで全てが決まるわけではございません。同時に、これ以上不利な記録を増やさないための手立ては、今日からでも採ることができます。

本記事の要点

  • 供述調書への署名押印は義務ではなく、拒むことができる(刑事訴訟法198条5項)。
  • 署名押印のある調書は、公判で証拠として用いられやすくなる(刑事訴訟法322条1項等)。
  • 署名してしまった後でも、増補や訂正の申立て、その後の調書での訂正、公判での任意性・信用性の争いという道が残る。
  • 通訳を介した供述では、訳出のずれが調書に固定される危険が構造的に存在する。
  • 外国籍の方の場合、調書の一文が退去強制事由の認定にまで影響することがある。

1 署名は義務ではない

取調べで作成される供述調書は、捜査官が聴き取った内容を文章にまとめたものです。刑事訴訟法198条4項は、作成した調書を本人に読み聞かせ、又は閲覧させて誤りがないかを問い、本人が増減変更の申立てをしたときはこれを調書に記載しなければならないと定めております。そして同条5項は、本人が内容に誤りのないことを申し立てたときに署名押印を求めることができるとしつつ、本人がこれを拒絶した場合はこの限りでない、と規定しております。

つまり、署名押印は義務ではございません。納得できなければ拒めます。日本の刑事手続に不慣れな方ほど、この点をご存じないまま署名されているのが実情です。

2 署名した調書はどれだけ重いのか

率直に申し上げれば、重いものです。署名押印のある供述調書は、公判において証拠として用いられる道が開かれます(刑事訴訟法322条1項等)。特に、自らに不利益な事実を認める内容の調書は、後から「そんなつもりで言ったのではない」と述べても、裁判所に受け入れられるとは限りません。

とりわけ、共謀の有無や、荷物の中身の認識といった主観面に関する記載は、一度調書に残ると、その後の弁解が全て後付けの言い訳と受け取られかねません。ここが、初動の対応が結果を左右すると申し上げる理由です。

3 それでも、署名後にできること

第一に、以後の取調べにおいて、誤っている点を明確に述べ、その内容を調書に記載するよう求めることができます。前の調書と食い違う説明であっても、なぜ前回そのように述べたのか、その理由を併せて記録に残しておくことに意味がございます。

第二に、弁護人を通じて、捜査機関に対し書面で申入れを行うことができます。読み聞かせの状況、通訳の有無と態様、取調べの時間帯や長さといった事情を、記憶の新しいうちに記録化しておくことは、後の公判で任意性や信用性を争う際の基礎となります。

第三に、公判の段階では、調書の任意性や信用性を争うことができます。長時間の取調べ、便宜の約束、通訳の不適切さといった事情が認められれば、調書の証拠としての価値は減殺されます。当事務所には、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠を徹底的に分析し、被告人質問と反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例がございます(事例A-1)。捜査段階の記録が全てを決するわけではないということを、実務の中で確認してまいりました。

4 通訳という、もう一つの落とし穴

外国籍の方の調書は、通訳を経由して作られます。ところが、捜査機関が手配する通訳人は、必ずしも法律用語の専門家とは限りません。中国語の中でも、地域による言い回しの違いが存在いたします。

「知っていたかもしれない」と「知らなかったが、そう言われれば疑うべきだったかもしれない」。この二つは、法的には未必の故意の有無を分ける決定的な違いですが、訳出の過程で同じ日本語に収れんしてしまうことがございます。しかも、調書は日本語で作られ、読み聞かせも通訳を介して行われますから、ご本人がずれに気づく機会は限られております。当事務所が、捜査機関側の通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く専属通訳を用意しているのは、この構造的な危険に対応するためです。

5 外国籍の方にとっての、もう一段の意味

調書の記載は、刑事事件の中だけで完結いたしません。有罪となれば、その内容は在留の判断にも影響いたします。1年を超える拘禁刑の実刑であれば入管法24条4号リ、薬物に関する法令違反での有罪であれば刑の重さを問わず同条4号チが問題となります。さらに、退去強制手続に進んだ場合の在留特別許可の判断(入管法50条5項各号)でも、素行や事案の経緯が考慮されます。

なお、入管実務では、退去強制事由の判断にあたって故意・過失は要件とされないという運用が長く踏襲されてまいりました。当事務所は、この運用に対して責任主義の射程を問う訴訟を提起し、争ってまいりました(事例D-2)。刑事段階で認識の内容を丁寧に記録に残すことは、その後の入管手続における主張の基礎ともなります。

6 当事務所について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、接見・打合せ・取調べへの対応にご利用いただけます。

解決事例として、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得(事例A-1)、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案での全件不起訴処分の獲得(事例B-2)、退去強制事由をめぐる責任主義の射程を争った末に在留特別許可が認められた事案(事例D-2)がございます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士と連携して対応いたします。

結語

署名してしまったことを悔やまれる方に、まず申し上げたいのは、それで終わりではないということです。ただし、時間が経つほど、訂正の説得力は弱まります。何が書かれていたのか分からないという段階であっても、接見を通じて経緯を確認し、記録に残していく作業は、今日から始められます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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