日本で家族が逮捕されたのに連絡が来ない|領事通報の仕組みと、中国にいるご家族が最初にすべきこと
2026/08/20
「日本にいる息子と3日前から連絡が取れない」「友人から逮捕されたらしいと聞いたが、警察からは何の連絡もない」。中国本土にお住まいのご家族から、当事務所にこうしたお問い合わせをいただくことがございます。
最初に申し上げておきたいのは、日本の警察が、逮捕した外国人のご家族に対して直接連絡を入れる法的な義務を負っているわけではない、ということです。連絡が来ないことは、必ずしも事態が深刻であることを意味しません。ただ、待っているだけでは情報は届きません。本記事では、その仕組みと、ご家族が今日できることを整理いたします。
本記事の要点
- 日本の警察に、逮捕した外国人のご家族へ直接連絡する法的義務はない。
- 逮捕された外国人は、自国の領事機関への通報と領事による接見を求める権利を有する(領事関係に関するウィーン条約36条1項)。
- 共犯者がいる事案では接見禁止が付され、ご家族の面会が制限されることがあるが、弁護人はその場合も接見できる。
- 逮捕から起訴・不起訴が決まるまでは、最長で23日間である。
- ご家族が日本にいなくても、弁護人を選任することは可能である(刑事訴訟法30条2項)。
1 なぜ連絡が来ないのか
日本の刑事手続では、逮捕された方の家族への通知について、法律上の明確な義務規定は置かれておりません。勾留された場合には、裁判所から指定された方に通知がなされる運用がございますが、その宛先は本人が申し出た国内の連絡先とされるのが通常です。ご家族が国外にお住まいであれば、実際上、通知は届きません。
また、ご本人が「家族に知られたくない」と述べている場合、捜査機関がその意向に反して連絡することはございません。ですから、連絡がないこと自体から、事件の重さを推し量ることはできないのです。
2 領事通報という仕組み
他方、外国人が逮捕された場合には、領事関係に関するウィーン条約36条1項に基づき、本人が要請すれば、その国の領事機関に対して身柄拘束の事実が通報され、領事が本人と面会し、通信を行うことができます。日本の捜査機関は、この権利を遅滞なく本人に告げる義務を負っております。
もっとも、実務上、告知が遅れる例や、本人が制度の意味を理解しないまま要請しない例もございます。弁護人としては、接見の際にまず告知の有無を確認し、必要であれば領事機関への通報を求めるという対応をいたします。領事館を通じてご家族に事実が伝わる経路が開けるという意味で、この確認には実際的な価値がございます。
3 接見禁止が付いている場合
共犯者がいる事案や、否認している事案では、裁判官が接見等禁止の決定をすることがございます(刑事訴訟法81条)。この決定が付されると、ご家族であっても面会や手紙のやり取りができなくなります。来日して警察署の窓口に行かれても、面会は認められません。
ただし、弁護人はこの制限を受けません(刑事訴訟法39条1項)。したがって、接見禁止が付されている事案では、弁護人がご本人とご家族をつなぐ唯一の経路となります。実際、当事務所でも、接見の内容を中国のご家族へ随時ご報告するという形で対応することが多くございます。なお、接見禁止の一部解除を求める申立てを行い、認められる場合もございます。
4 手続の時間の見通しを持つ
日本では、逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、そこから24時間以内に勾留請求がなされます。裁判官が勾留を認めれば10日間、延長により合計20日間まで身柄拘束が続き、この期間の満了時までに起訴するかどうかが判断されます。合計すると、逮捕から起訴・不起訴の判断まで最長で23日間です。
この23日間が、その後を決めます。とりわけ外国籍の方の場合、起訴されて有罪判決を受けるかどうかが在留資格の帰趨に直結いたしますので、この期間内に不起訴処分を目指す活動ができるかどうかが決定的です。ご家族が状況を把握するまでに1週間、弁護人を探すのにさらに数日を要すれば、使える時間は半分になってしまいます。
5 中国にいるご家族が今日できること
第一に、弁護人の選任はご家族からでも可能です。
刑事訴訟法30条2項は、被疑者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹が独立して弁護人を選任できる旨を定めております。ご本人が日本におらず、ご家族が中国にいらっしゃる場合でも、委任の手続を進めることは可能です。
第二に、分かっている情報を整理しておいてください。
氏名と生年月日、在留資格の種類、日本の住所、勤務先や学校、最後に連絡が取れた日時、伝え聞いた警察署の名称。これらが揃えば、身柄の所在を確認できる可能性が高まります。
第三に、ご本人に伝えたいことがあれば、弁護人に託してください。
接見禁止が付されていても、弁護人を通じてお気持ちを伝えることはできます。取調べに対する姿勢について、日本の制度では供述を拒む権利が保障されていること(憲法38条1項)も、早い段階でご本人に伝わることに意味がございます。
6 当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しておりますので、中国本土のご家族とのご連絡、接見への同行、打合せのいずれにも対応が可能です。
解決事例として、特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べ対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得したものがございます(事例B-2)。また、裁判員裁判対象事件や国際的に報道された重大事件への対応経験も重ねてまいりました(事例E-1)。刑事手続の終了後に在留資格の更新・変更が必要となる場合には、提携する行政書士と連携して対応いたします。
結語
連絡が取れない時間ほど不安なものはございません。けれども、日本の刑事手続には決まった時間の流れがあり、その中でできることも定まっております。まずは身柄の所在を確認し、接見を通じて事実を把握するところから始まります。遠く離れていても、手を打つことはできます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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