スカウトや客引きに誘われた留学生の方へ|迷惑防止条例違反・職業安定法違反と資格外活動が重なるとき
2026/08/20
2026年8月、繁華街でのスカウト行為に関与したとして逮捕される大学生が増えているとの報道がございました。警察は、報酬の良さに惹かれて安易に手を出さないよう呼びかけているとのことです。この動きは日本人学生に限られたものではなく、留学の在留資格で日本に滞在される方が、生活費を補う手段として声を掛けられる例も少なくございません。
留学生の方がこの種の行為に関わった場合、問題は刑事処分だけにとどまりません。在留資格の前提である活動の内容そのものが問われることになるからです。本記事では、その二重の意味を整理いたします。
本記事の要点
- スカウト行為は、東京都をはじめ各地の迷惑防止条例(東京都の場合は7条)で禁止され、違反には罰則がある。
- 風俗店等への紹介が公衆道徳上有害な業務に就かせる目的と評価されれば、職業安定法63条2号により1年以上10年以下の拘禁刑という重い法定刑が適用されうる。
- 留学の在留資格で報酬を得る活動を行うには資格外活動許可が必要であり、無許可なら入管法73条の資格外活動罪となりうる。
- 資格外活動を専ら行っていると評価されれば、入管法24条4号ハによる退去強制の対象となる。
- 刑事処分が軽くても、在留資格の更新拒否や取消しという形で在留を失う経路が別に存在する。
1 スカウト行為はどの法律で問題になるのか
まず、路上で通行人に声を掛けて風俗店等に紹介する行為は、多くの自治体の迷惑防止条例で禁止されております。東京都の場合、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例7条が、いわゆるスカウト行為を規制しており、違反には罰則が定められております。取締りの現場では、まずこの条例違反として立件されることが一般的です。
もっとも、事案によっては、より重い法律が適用されます。職業安定法63条2号は、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介等を行った者に対し、1年以上10年以下の拘禁刑という重い法定刑を定めております。組織的に、継続的に、報酬を得て紹介を繰り返していた場合には、こちらの構成が検討されることになります。法定刑の下限が1年以上であるという点は、後述する在留への影響を考えるうえで見過ごせない意味を持ちます。
2 留学生に特有の、もう一つの問題
留学の在留資格は、日本の教育機関で教育を受ける活動を行うために与えられるものです(入管法別表第一の四)。報酬を受ける活動を行うには、資格外活動許可を得る必要があり(入管法19条2項)、許可を受けた場合でも、原則として週28時間以内という時間の制限や、風俗営業等に従事してはならないという内容の制限が付されております。
したがって、スカウト行為で報酬を得ていた場合、それ自体が資格外活動にあたる可能性がございます。無許可で報酬を受ける活動を行えば入管法73条の資格外活動罪となり、1年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金が定められております。さらに、資格外活動を専ら行っていると認められる場合には、入管法24条4号ハにより退去強制の対象となります。
3 刑事処分が軽くても在留を失う経路がある
ここが、この類型で最も誤解されやすいところです。条例違反として罰金で終わった、あるいは起訴猶予で済んだという場合でも、在留の問題は独立して残ります。
第一に、在留期間の更新は、法務大臣の裁量的な判断に委ねられており(入管法21条3項)、在留資格の変更・更新のガイドラインでは素行が善良であることが要素として掲げられております。処分が軽くても、風俗関係の摘発歴があることが更新の場面で不利に働く例は現に存在いたします。第二に、学業を続けていない状態が3か月以上続けば、入管法22条の4第1項5号による在留資格の取消しという経路もございます。身柄拘束が長引いて学籍を失った場合、この問題が現実化いたします。
つまり、退去強制事由に該当するかどうかという入口の議論と、在留期間の更新が認められるかという出口の議論は別物であり、どちらか一方の見通しだけで安心することはできません。
4 不起訴処分を目標に据える理由
以上の構造を踏まえますと、この類型でも目標は明確です。起訴されて有罪の記録が残ること自体が、更新の場面で不利益に働きます。ですから、起訴前の段階で、関与の期間、報酬の実態、組織における位置づけ、勧誘の態様といった事情を具体的に示し、不起訴処分を求めることが第一の目標となります。
特に、留学生の方が声を掛けられて短期間だけ関与したという事案では、常習性や組織性の不存在を客観的資料で示すことが有効です。学校側への説明をどの段階で、どのように行うかという判断も、学籍の維持という観点から極めて重要となります。
5 初動で押さえておきたい3つのこと
第一に、供述を拒む権利があること。
憲法38条1項は、自己に不利益な供述を強要されない権利を保障しております。誰にどれだけ紹介したのかという点を、記憶が曖昧なまま数えて答えることは避けるべきです。
第二に、早期に弁護人を選任すること。
在学中の方の場合、身柄拘束の期間が学籍に直結いたします。当番弁護士制度も利用できますが、学校への対応まで含めた活動には私選弁護人の選任が現実的です。
第三に、通訳の質を確かめること。
勧誘の言葉のニュアンスが争点となる類型ですので、訳出の正確性が結論を左右いたします。弁護人の側で通訳を確保する意味は大きいと考えております。
6 当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。
解決事例として、特殊詐欺の出し子行為に関与したとされた20代女性について、指示を受けた経緯や本人の主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得したものがございます(事例B-1)。若い方が組織の末端で使われる構造は、スカウト事案にも共通いたします。入管手続の面では、困難な状況の中で在留特別許可を獲得した事例(事例D-1)や、国際的な通信手段を用いた事案で捜査機関と連携して対応した事例(事例F-1)もございます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士と連携して対応いたします。
結語
短期間のアルバイトのつもりで始めたことが、刑事処分と在留資格の双方を揺るがす事態に発展することがございます。逆に言えば、関与の実態を正確に示すことができれば、結果は変わりえます。声を掛けられた段階、あるいは事情を聴かれた段階で、一度ご相談いただければと存じます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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