舟渡国際法律事務所

空港の税関検査で薬物が見つかったら|「中身を知らなかった」という弁解と未必の故意、そして在留資格

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空港の税関検査で薬物が見つかったら|「中身を知らなかった」という弁解と未必の故意、そして在留資格

空港の税関検査で薬物が見つかったら|「中身を知らなかった」という弁解と未必の故意、そして在留資格

2026/08/20

2026年8月、関西国際空港において、手荷物の中から約21キログラムの覚醒剤が発見され、外国籍の男性が逮捕・起訴されたと報じられました。手荷物としての持込み量としては同空港で過去最大とされています。空港での摘発は、中国籍の方を含む多くの外国籍の方に現実に起こりうる事態であり、当事務所にも「頼まれて荷物を運んだだけだ」というご相談が繰り返し寄せられます。

この類型で争点となるのは、ほぼ例外なく、荷物の中身についてご本人がどこまで認識していたかという一点です。今回は、その認識の問題と、有罪となった場合の在留への影響を整理いたします。

本記事の要点

  • 覚醒剤の営利目的輸入は1年以上の有期拘禁刑(覚醒剤取締法41条2項)と極めて重く、罰金の併科もありうる。
  • 関税法上の禁制品輸入罪(関税法109条)も併せて成立しうる。
  • 「中身を知らなかった」という弁解は、未必の故意の有無という形で厳しく検討される。
  • 薬物事犯は、入管法24条4号チにより、刑の軽重や執行猶予の有無を問わず退去強制事由となる。
  • 薬物事犯こそ、執行猶予ではなく不起訴処分・無罪を目標に据える必要がある類型である。

1 この類型の刑事手続と法定刑

覚醒剤を営利の目的で輸入した場合、法定刑は1年以上の有期拘禁刑であり、情状により500万円以下の罰金が併科されます(覚醒剤取締法41条2項)。営利目的が認められない場合でも1年以上10年以下の拘禁刑です(同条1項)。加えて、関税法上、輸入してはならない貨物を輸入した行為として処罰されることもございます(関税法109条)。量が多い事案では裁判員裁判の対象となり、判決までに長い時間を要します。

身柄については、逮捕後48時間以内の送致、24時間以内の勾留請求を経て、最大20日間の勾留がなされるのが通常です。共犯者の存在が疑われる場合には接見禁止が付されることが多く、ご家族との面会が制限されます。この間、弁護人だけがご本人と自由に会える立場となります。

2 「知らなかった」は通用しないのか

結論としては、通用する場面もあれば、通用しない場面もございます。法律上、故意があると言えるためには、荷物の中に違法な薬物が入っているかもしれないと認識し、それでも構わないと考えて運んだこと、すなわち未必の故意で足ります。ここが誤解されやすいところです。

捜査機関は、報酬の不自然な高さ、渡航経路の不合理さ、荷物の受渡しの態様、通信アプリのやり取り、税関検査時の言動といった間接事実を積み上げて、未必の故意を推認しようといたします。冒頭に触れた報道でも、検査時の様子が具体的に描写されておりました。逆に言えば、弁護の側でも、依頼を受けた経緯、報酬の相場感、旅行の目的、荷物を確認できなかった事情といった事実を、客観的資料とともに提示していくことになります。当事務所には、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠を徹底的に分析し、被告人質問と反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例がございます(事例A-1)。故意の推認は、崩せない前提ではございません。

3 薬物事犯に特有の在留リスク

外国籍の方にとって、薬物事犯は他の罪名とは別格の扱いを受けます。入管法24条4号チは、薬物に関する法令に違反して有罪の言渡しを受けた者を退去強制事由として掲げており、ここには刑の重さによる限定も、執行猶予による除外もございません。すなわち、罰金であっても、執行猶予付きの判決であっても、退去強制の対象となりうるということです。

この点は、1年を超える拘禁刑という数量的な要件を定め、かつ全部執行猶予の場合を除外する4号リとは、条文の構造が根本的に異なります。号ごとに構造が違うという事実は、外国籍の方の弁護方針を立てるうえで決定的に重要です。「執行猶予が取れれば日本に残れる」という説明が、薬物事犯において特に危ういのは、このためです。

4 だからこそ不起訴処分・無罪を目標とする

以上を踏まえますと、薬物事犯における外国籍の方の弁護は、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を、起訴された後は無罪の獲得を目標に据えるほかございません。執行猶予を目標に置いた弁護方針は、依頼者の在留という観点からは目標設定そのものが誤っているとさえ言えます。

具体的には、勾留期間中に、依頼の経緯や報酬に関する客観資料を収集し、荷物の外観や重量から中身を認識しえたかという点について合理的な説明を組み立て、検察官に対して意見書の形で提示いたします。押収された通信記録の解析結果を、こちらの目で確認することも欠かせません。

5 初動で押さえておきたい3つのこと

第一に、黙秘権の行使を検討すること。

税関検査の現場や逮捕直後は、動揺の中で不正確な説明をしてしまいがちです。憲法38条1項は供述を拒む権利を保障しております。まずは弁護人と相談したうえで方針を決めるのが安全です。

第二に、直ちに弁護人を選任すること。

接見禁止が付くことの多い類型ですので、ご家族が状況を知る唯一の経路が弁護人となります。当番弁護士制度も利用できますが、継続的な活動には私選弁護人の選任をご検討ください。

第三に、領事への通報を求められること。

逮捕された外国人は、自国の領事機関への通報と領事による接見を求める権利を有します(領事関係に関するウィーン条約36条1項)。告知が遅れる例もございますので、確認が必要です。

6 当事務所について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、接見の初動から公判の結審まで全工程を自ら担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関の指定する通訳とは別に、ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。

薬物事犯については、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者につき無罪判決を獲得した事例(事例A-1)のほか、裁判員裁判対象事件や国際的に報道された重大事件への対応実績がございます(事例E-1)。万一、退去強制手続に進んだ場合にも、退去強制事由の判断における故意・過失の要否という論点を正面から争った経験を踏まえて対応いたします(事例D-2)。刑事手続終了後の在留資格の手続については、提携する行政書士と連携して一つの窓口で対応いたします。

結語

薬物事犯は、外国籍の方にとって、刑罰の重さと在留の喪失が同時に襲いかかる類型です。だからこそ、荷物の中身をどこまで知っていたのかという一点について、事実に即した説明を、最初の段階から正確に積み上げる必要がございます。ご家族が空港での逮捕の知らせを受けられた場合には、できる限り早く弁護人による接見を手配されることをお勧めいたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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